ep1 異世界で目を覚ましたのに、なんだこれ?
夏希は目を開けた。
周りは見知らぬ風景。柔らかな草原と、遠くに山々が広がっている。確かに異世界に来たようだ。
「うわっ、異世界……?」
手を伸ばして身体を確認すると、特に変わった様子はない。目をこすり、鏡のようなものがないか探してみるけれど、当然そんなものはない。
顔や姿が変わった気配もない。年齢も変わっていないし、特に美少女にもなっていない。
「え、なんで?」
せっかく異世界に来たのに!!
確か神様から「選べる能力」やら「魔法の世界」などと言われたけど、美少女にはなっていないし!!
若返ってないし!!
30歳の私のままだ。
「せっかく転生できたのに、美少女になれないとか…なんだこれ?」
自分の姿にがっかりしながらも、思い出した。
「そうだ、能力ももらったんだった…」
寒がりな自分のために、「温める能力」だったか。
物を温められるらしいし、悪くはない。まぁ、役に立ちそうだ。
「でも、なんで美少女にならないんだろう?せめてちょっとは見た目よくなったりしないの?」
ふと、思い出したことがある。
「そういえば、あの神、適当だったな。『そんなノリで』とか言ってたし。」
「でも、せっかく転生したんだし、なんとかなるでしょ。」
少し気を取り直して周りを見渡すと、遠くに街らしきものが見える。その方向に向かうことに決めた。