プロローグ
わたしの名前は夏希 30歳。
夏に生まれたから、夏希。だけど、寒がりで冷え性。名前負けしてるなって、昔からよく思ってた。
大学生のころまでは、普通の学生生活を送っていた。アルバイトもしていたけれど、特別な目標もなく、流されるままに過ごしていた。
でも、次第に欲が出てきた。もっとお金が欲しい、もっと自由が欲しい。
そんな思いから、ラウンジでアルバイトを始めた。そこからキャバクラへ。
お酒を飲んで、笑って、人の話を聞いて、お金をもらう。最初は楽しかった。でも、どんどんエスカレートしていった。
キャバクラのあと、メンズエステにも手を出し、今では立派に箱ヘルで働くようになった。
借金をして顔も少しいじったし、全身脱毛もした。
気づけば、名前も姿も変わっていた。
ラウンジでは「ひな」、キャバクラでは「れいか」、メンズエステでは「まゆ」。
箱ヘルでは「春香」。
誰が本当の自分なのかわからなくなっていた。
「こんな人生やだな…」
布団にくるまりながら、ぼそっと呟く。
その声が、部屋の中に虚しく消えていく。
今の自分がきらいだった。こんな世界では生きられない。
何もかも嫌になっていた。
「お願い、どこか違う世界に…」
ぽつりとそう願った瞬間、意識が遠くなり、深い眠りに落ちていった。
「呼んだか~?」
ふわっとした声が響いた。
目を開けると、目の前には胡散臭い男。
いや、人じゃない。なにこれ、神様…?
「えっ、なにこれ?」
「おっ、起きちゃったか。お疲れさん、いい寝顔してたよ~。」
「だ、誰?」
「誰って、まぁ、簡単に言うと神様だよ。君、やり直したいって思ってるんだろ?」
「神様…?」
「うん、そんな感じ!君、今、どうにも人生に絶望しちゃってるみたいだからさ、異世界に転生させてあげようと思ってさ。」
「異世界…?」
「そう、異世界。君の人生、このままで終わらせていいのか〜い?」
「…うーん、確かに、今の生活、無理だな…。」
「じゃ、行くか。異世界。」
「でも、怖いよ?そんな世界で何をしたらいいの?」
「まぁ、異世界ったって普通だよ〜基本的に平和だし。魔法があって、モンスターがいて、冒険者が活躍してる感じ?。ちょっとした争いもあるけど、基本的には平和な世界だね。」
「え、異世界ってそんな感じなの?」
「うん、君の行く世界はそんな感じ。まぁ、選択肢もあるけど、なにか希望はあるのか〜い?」
「選択肢?」
「そう!魔法が主体の世界、冒険者がモンスターを倒して回る世界とかね、君の好きなものを選んでいいよ。」
「うーん、なんだかよくわからないけど…」
「もう少し具体的に言うと、魔法の世界とか、殺伐とした世界とか、平和世界とか、ちょっとは選べるんだ。」
「じゃあ…魔法の世界かな。」
「おっけー!じゃあ、決まり!」
「それだけ?」
「うん、そんなもんだよ~。じゃ、最後にひとつだけ。何か欲しい能力とかある?」
「能力…?」
「うんうん。転生ボーナスってやつ。火を出せるとか、剣の才能があるとか、まぁそんな感じ。」
「え、急に言われても…うーん……寒いの苦手だから、温める能力とか?」
「おぉ、いいね~。寒いのダメなんだ。じゃ、それで!」
「え、そんなノリで決まるの?」
「そんなノリだよ~。じゃ、頑張ってこいよ!」
「え!ちょっ、、待って、、、、!」
その瞬間、夏希の目の前がぐにゃりと歪んだ。
意識がスーッと遠のいていく。
こうして、わたしは異世界へと飛ばされた。
本名・夏希 30歳。
源氏名・春香。
急に神?に異世界へ飛ばされてしまったわたしは、異世界で、何者かになれるのだろうか。
異世界ものも一回くらい書いてみたい。