恩讐の道(3)
パトリックのベルトルデとゼフィーリアのヘヴィーファングはライジングサンからの出撃後、迎撃に転じている。ロウザンガラクのベクトル制御システムにアタックを掛けるクアン・ザを防衛せねばならない。
(例のムザ隊の残党の女は絶対に追ってくるだろうしな)
言われるまでもなく理解している。
彼らがいくら三機だとして侮られようとも、イルメアだけは見逃してくれないという見解で一致した。リフレクタカラマイダの一隊を率いているらしい彼女を近づけないようにするのが任務である。
「っても、こうも露骨かよ」
重たい機体で懸命に追ってくる。
「あいつがモテてるの初めて見た気がするぜ」
「とんだストーカーかしら」
「温かく見守ってやりたい気もするが、生憎やんなきゃなんないことあるんでね」
ライジングサンが中継子機代わりをしているのでかなり広範囲がカバーできている。加えて、クーファがディープリンク中継しているお陰か、σ・ルーンからの流入情報が多い。少々重たくあっても、視界以上の情報が把握できるのは動きやすかった。
「この距離でこの精度の援護が来てるんじゃ抜かせるわけにいかないじゃん」
「手抜きって誹りを受けてよ?」
かつんと軽い衝撃波がベルトルデを叩く。それほどわずかな距離をかすめてスナイピングビームが通り抜けて敵機に直撃していた。さすがにリフレクタを叩くのみだが、守りを固めさせて動きを鈍らせるに十分な牽制である。
「さらに、こいつまであるとなればさ」
腰裏からスティック武器を抜く。滑らかに伸長すると、両端の発生器からブレードより大振りな力場刃が発生した。扱いは格段に難しくなるが、パワーとストロークを兼ね備えた武装が『ツイングレイブ』である。
「やって見せなきゃ男が廃るんじゃね?」
狙撃に怯んだ敵機に叩きつける。ビームでは揺るがないパワーのあるカラマイダでも、ツイングレイブの斬撃ともなると姿勢を崩す。力場同士の干渉で流れた機体の脇に入り込み、ベルトルデをスピンさせながら振り抜いた。腹部で上下に分断された敵機は溢れたプラズマ炎に飲まれて爆散する。
「君だけの専売特許じゃなくてよ?」
同じくツイングレイブを装備しているヘヴィーファング。ゼフィーリアの愛機はベルトルデさえもパワーで上まわる。そんなアームドスキンが振り下ろすツイングレイブは軽く敵を弾き飛ばした。その隙をルオーが逃さずスナイピングビームで貫いている。
「一機に手間かけるのはイケてないわ。スマートにできなくて?」
「手厳しいね、ゼフィちゃんは」
彼女は器用に全パワーを斬撃に乗せる。だからこそ、パワータイプにありがちなゴリ押し攻撃にならない。挙動のあとの隙が小さい。機体特性に似合わない効率を叩き出す。
「でも、個人技となると君のほうが上。あれは任せるわね」
「押し付けるのかい?」
「女性の扱いはお上手でしょ?」
一機だけ、リフレクタで守りを固めたまま撃ってくるカラマイダがいる。長砲身の筒先を力場の膜を通して突き出し迫ってきていた。件の彼女であろう。
(ルオーの言ったとおりか)
他のリフレクタタイプはそんな真似をしない。いくら物体は素通しさせてしまう力場盾だとて影響しなくなるわけではない。砲身が孕む収束磁場を減衰させるのだそうだ。
元より収束磁場の強いスナイパーランチャーならば突き出しても発射まで可能だが、通常のビームランチャーではできないという。スナイパーランチャーでさえ収束度は格段に落ちるのだそうだ。
(それで失敗してるだけ信憑性があるってもんだ)
前回の戦闘でルオーはイルメアと刺し違える気などなかったらしい。ところが、彼女はリフレクタの外まで筒先を出して撃つという暴挙に出た。
それが逆に効果を示し、収束度の落ちたビームがクアン・ザのショルダーユニットに直撃して内部拡散、基部まで破壊する。あの距離、本来の収束度であれば貫通して大きなダメージたり得ないと計算しての突撃だった。
(偶然の産物だとしてもな、ルオーに土をつけるだけの運と実力の持ち主だと思わないとオレがやられる)
油断はない。
「邪魔! どけ!」
「そんな邪険にするなよ。オレはあんたにダンスを申し込んでるんだぜ?」
「貴様なんぞと遊んでいる暇はない。雑魚と遊んでな」
「そんな余裕があって?」
ヘヴィーファングとクアン・ザの連携が凄まじい。一機ずつ丁寧に崩され、ゼフィの餌食となっている。ベルトルデに関わっている暇はない。
「ちっ、うざったい連中。仕方ないから相手してあげる」
「んじゃ、付き合ってくれるかい?」
彼がツイングレイブでリフレクタを削りはじめると筒先を引っ込めた。さすがにメインウエポンを失うのは避けたいらしい。
(となると、楽になるんだよ。結局、そいつは白兵戦をするには重すぎる)
連撃の反動で弾き、その隙に背後へとまわる。そこにはがら空きの背中。無造作に振ったツイングレイブを振り抜く。
「げ!」
ところが、グレイブの刃は機体に達する前に食い止められていた。リフレクタのスイングアームの一本が背中側に旋回し、そこに力場を形成して受け止めている。
「マジかよ!」
「迂闊なんだよ。誰が四本でしか使えないって言ったね」
パトリックは至近距離でスナイパーランチャーを突き付けられていた。
次回『恩讐の道(4)』 「オレってば、全ての女性を敬うのがポリシーでさ」




