過去の影(6)
(タイムリミットはなし。当然かなぁ)
ルオーもじっくりと観察する余裕を取り戻していた。
(運用性質上、途中で落ちるようじゃ使いものにならないし。欠点はそれだけでもないんじゃなぁ)
スナイパー側に立てば攻めづらいのも事実。スクイーズブレイザーの防御手段として有効なのも本当。だからといって無敵でもなんでもない。
(白兵戦に弱い。取り回しに苦労する。攻撃時にはカットするしかない。指折り数えてもこれだけ挙がる。このアタッチメントは大軍で用いることを想定して開発されたっぽいねぇ)
欠点を補う要素抜きでは語れない。無搭載カラマイダに混ぜて運用するから通用する。役割分担あっての特化型アームドスキンに仕上げられている。
(看破されてないうちは混戦中でも前に出せるけど、分析されたらとても出せるもんじゃない。接近された時点でリフレクタ機構を使わない戦闘に切り替えるしかないなぁ)
それは普通のアタッカータイプのパイロットが使う場合の話。イルメアのような元来スナイパータイプが乗っていると様相を異にする。
(アタッチメント?)
なにかが記憶を刺激する。
「形無しだね。このカラマイダはスナイパーには最適のアームドスキンなのさ。そんな火力全振りのギミック機体とは違うんだから」
閃きを掻き消すように迫ってくる。
「使い方次第では強い機体ですね。特にスナイパー対スナイパーとなれば苦戦は必至かもしれません」
「今さら後悔したって許しはしないよ」
「後悔なんてしません。かの人を撃墜したことも、これからあなたを墜とすのも」
「言ってんじゃない!」
しっかりと狙って、一瞬力場盾を外して撃ってくる。実に単純な戦法だが、これが対策に困る。射線が見えていて狙いを付けられているとわかっても、どのタイミングでトリガーを落としてくるか定かでないからである。
「攻撃テンポを変えるのも常套手段ですし」
「読めないだろう?」
スナイピングを行ううえでも一定リズムでトリガーを刻むことはしない。相手に読まれるからである。回避のしやすい狙撃など素人仕事だ。
「さっさと墜ちな。ついでにZACOFごと食ってやるさ。多少は恩を返しておかないといけないだろうし」
「そんな簡単にはやらせませんよ。あなただって攻めあぐねてるんでしょう?」
ルオーがいくらリフレクタをスナイピングビームで叩こうがカラマイダのパワーで揺るぎもしない。他方、イルメアの狙撃も回避できるし、カウンターショットも使えている。一定距離を挟んで決め手に欠いた撃ち合いをしている状況だ。
「我慢比べだってなんだっていいよ。あたしはあんたを討てるならって、今まで散々我慢してきたんだからね」
「それが一番厄介なんですよ。周りが押されてるからって困るタイプじゃない」
「周り? 関係ないね。味方とも思ってない」
事実、パトリックのベルトルデとゼフィーリアのヘヴィーファングが突き崩しに入ってからは、カラマイダの盾は機能が落ちてきていた。白兵戦で不利という欠点は如何ともしがたい。二人ならそれくらいアドバイスするまでもなく攻略してみせる。
「あなたにそれを与えた人に義理立てするまでもないって考えが僕にはあり得ないんですよね」
零細企業家に不義理は禁物である。
「ただし、その人もあなたが僕をどうにかしてくれるんなら他になにも求めない。それくらいにしか考えてないでしょうから」
「よくわかってるじゃないか」
「恨まれたもんですね。ルビアーノ大統領でしょう?」
「御名答!」
ほとんど感覚的にトリガーを押す。弾足の速いスナイピングビームだとて、リフレクタ開放を目で見てから撃っても隙間には挟めない。指が反応してくれるまでの時間、ビームが彼我を繋ぐまでの距離、それらが限界を示す。
ゆえに、相手の狙撃リズムを勘頼りに読んで挟み込もうとするが、なかなか上手くいかない。今も寸前でリフレクタが閉じて表面を叩くだけに終わった。
「無駄さ。偶然に頼ってリフレクタの内側に撃ち込んでくるか、カウンターを外して一発喰らうか、どっちが早いと思うね?」
「そうです? 僕はカウンターを外しませんよ?」
「調子こいてな」
「それに、何度でも言います。僕はスナイパーに近いだけのアタックシューターなんです」
旋回をやめて転進する。イルメアのカラマイダに向かって突進を仕掛けた。牽制がてらスナイプフランカーを放つがそれが本命ではない。
リニアドラムをシャッターで閉じると同時に両手のガングリップを引き抜いてチャージガンに変えた。リフレクタに衝突せんばかりの速度で迫る。
「これで決まりです」
「それを待っていたんだよぉー!」
チャージガンをリフレクタの裏まで突っ込もうとする。物理防御の効かないところまで。それと同時にイルメアもスナイパーランチャーを突き出してきた。リフレクタの外側まで。リフレクタを開放しないで撃つつもりなのだ。
「絶対に仕掛けてくるって思ってた! 終わるのはあんたさ!」
「ここで退けばの話です!」
怯んで止まれば攻撃できないままの状態。しかし、彼はまったく怯まずそのまま突入する。彼我の距離はもうゼロである。
ルオーとイルメアはほぼ同時にトリガーを押した。
次回『きざはし踏むは(1)』 「自信満々の君が珍しいこと」




