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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
捨てる神あれば拾う神あり

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過去の影(5)

「お前が行かなきゃならんほどか?」

 パトリックがルオーに疑問を投げ掛けてくる。

「この局面です。断念して退けばなんの意味も見出だせないまま終わり。次へのモチベーションは保てません。心のどこかでやっぱり厳しいかと思ってしまいます」

「無理してでも、あの硬い壁を打ち崩せると見せたなら次があると思わせられるってか?」

「君がモチベーション維持まで考えないと駄目かしら? 指揮官でもないのに」

 ゼフィーリアも疑問を抱いている。

「ミアンドラ様の肩にはまだ重いでしょう。材料くらい提供しなくては」

「律儀だこと」

「ま、こういうやつだもんな、昔から」


 自ら提案した作戦を中止の判断をしたのはルオー自身だ。悪影響を残してはならない。そのためには、目的ほどではないがなんらかの成果、戦ううえでの希望を植え付けておくしかない。


「あの、カスタム? パワーアップ? したカラマイダを叩いてみせます」

 手段は単純だ。

「まあ、敵のくり出してきた新兵器をものともしないと思わせたら気持ちは作れるかしらね」

「なので、接近戦に持ち込みます」

「確かにあれは狙撃に対しては硬そうだ。白兵戦で墜としに行くしかないか」


 戦列の作る弾幕の圧に押されて前に出てこられない状態が見て取れる。ただし、それでダメージを与えられているわけでもない。逆に、敵陣の盾として機能している。


「ミアンドラ様なら慎重を期して強硬策は控えるでしょう。僕が脅威と断じたのもありますし」

 不用意には突っ込ませないはずである。

「突破口を空けて乱戦に。あのリフレクタの穴は明白です」

「おう、硬いのは正面だけじゃん」

「敵が一方向から来ているときは有効でも、どこから来るかわからなければ重いだけっぽい感じ?」


 前衛の背中をかすめるように正面に出る。カウンターショットを決めて注意を引き、自分たちが援護に来たことを知らしめようとした。ところが、それを喜んだのは友軍だけではなかったのである。


「来た来た来たぁー! あたしはあんたに恋い焦がれてたんだよー、ルオー・ニックルぅー!」

 いきなり名指しされる。

「この声は?」

「忘れたなんて釣れないこと言わせないね。あの人の無念を晴らさせてもらう!」

「ムザ隊の……」


 討ちもらした記憶はある。しかし、アデ・トブラを降伏に追い込んだ以上、再び敵として現れることはないと思いこんでしまっていた。代償として、強烈な悪意が吹き付けてくる。


(嫌な感覚の元、彼女だったのか)

 恨みの念に身体が反応していたのだと理解する。


 そんなオカルトが跋扈するような場所ではないと思っている。しかし、どう足掻こうとも感じるものは感じるのだ。宇宙を肌で感じられてしまうアームドスキンとσ(シグマ)・ルーンシステムの影響なのかもしれない。


「待って待って、我慢して我慢して、やっとこのときが来たんだよ。早くあたしに討ち取られな」

「く……」


 人の憎悪という感情は馬鹿にできない。正対すると相手を萎縮させるほどの強い情動である。一般人なら、殺人禁忌という殻を簡単に破らせるほどのパワーを持っている。正面から受け止めるのを躊躇わせるほどの。


「飲まれるな、ルオー」

「ですが……、あれは引き寄せられてきた過去の影です。僕にしか付きまとわないでしょう。すみませんが、他を崩してもらえます?」

「お前は……」


 パトリックは背負い過ぎだと言いたいのだろう。それでも、アームドスキン乗りである以上、自分のやったことから目を逸らして生きていくつもりはない。向き合えなければ精神に変調を来してしまう。


「行くな」

「僕は大丈夫ですよ」


 危険な匂いをまといつかせたカラマイダが敵の戦列から飛び出してくる。リフレクタをカットして瞬時に狙撃。即座に再展開して守りを固めている。

 その狙撃も精度は極めて高い。当然だ。彼女もムザ隊の一員としてスナイパーに徹してきたパイロット。それなのに、恨みの一念で彼の前に来ようとしている。狙撃に距離も遮蔽物も必要としないアームドスキンで。


(まるで、あつらえたような機体を渡すとは。ゼオルダイゼは僕をターゲットにした対策をしてきたみたいだ)


 そこまで驕る気はない。単なる偶然であろう。それでも、余計なことを考えてしまう。やはり、自分は飲まれてしまっているのかとルオーは思った。


「ほらほらほらほらぁ!」

「厄介な」


 リフレクタの消失展開速度が怖ろしく早い。その隙間に確実に狙撃を挟んでくる。彼もカウンターショットで対抗しているが、一対一で穴を見出だせるものではない。


(かなり完成度の高い機構に見える。なのに、今まで試作品を実戦に使ってきた記憶もない)

 新技術というのはそんなに簡単に出てくるものではない。

(だとすれば、どこか別のところで開発されたものだと思うべき。それが、この事態の裏側に繋がっているとしか思えない)


「イルメア・ホーシーの名を頭に刻んで逝きなぁー!」

「遠慮申し上げますよ!」


(相当パワー食いのはずなのに展開システムが落ちる気配もないね。変な期待は抱かないほうが良さそう)


 ルオーは狙撃をスナイプフランカーで潰して新型カラマイダの特質を見極めようとしていた。

次回『過去の影(6)』 「それが一番厄介なんですよ」

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― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 あぁ⋯⋯某ガ〇ダムのカ〇ジナ氏を彷彿とさせますね。
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