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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
捨てる神あれば拾う神あり

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深く潜るは(3)

 コンディションチェックを終えたミアンドラはルオーたちライジングサンメンバーと膝を詰める。今後の方針を明確化しておかなければ、なんのために無理をして頭の中の整理をしていたのかわからない。


「ゼオルダイゼ遠征艦隊の動向は?」

 最重要な情報を青年に確認する。

「デヴォーさんが把握しているでしょうが、こちらでも一応確認しました。時空間復帰(タッチダウン)ポイントに迷彩は掛けていますけど本国に帰還した模様です」

「それだけの損害あり? それとも、命令で?」

「両方みたいですよ、ゼフィさん。増援含めた二十隻のうち、三隻に外観上の損傷が見られます。モンテゾルネがそんな不用意なことをするとは思えません。傭兵(ソルジャーズ)でしょうね」

 妙な発言に目をしばたく。

「不用意?」

「戦闘艦に手を出すと面倒なことになります」

「母艦にダメージがあると有利になるんじゃない? アームドスキンパイロットは不安になって戦闘に集中できなくなるから。ルオーも時々使っていた作戦だと思ったけど」


 クアン・ザにはスクイーズブレイザーという対戦闘艦の切り札ともいえる武器がある。軍人とはいえ確実に多数の戦死者を出す武器でも、ルオーは活用を躊躇わなかったと記憶しているが。


「状況次第です」

 戦闘艦を傷付けられれば有利になるとは限らないようだ。

「今回の場合、こちらのZACOF(ゼイコフ)艦隊の第一義はゼオルダイゼ艦隊を引き付けておくのが目的だったでしょう? もちろん、撃破できれば最高の結果ですが物量的に現実的じゃない」

「ええ、ZACOF(ゼイコフ)が総数二十二隻。ゼオルダイゼが二十。この規模で相手を全滅させるほど勝つのはちょっと無理がある話」

「だから、引き付けるだけでよかったのさ。要は、オレちゃんたちがウェンディロフを攻略中に増援を向けられなきゃいい」

 パトリックも説明に加わる。

「でも、もし大破艦が出て戦闘継続が困難になったらどうすると思う?」

「アームドスキンと違って戦闘艦は終結後にも応急処置くらいしかできない。ほとんど同数で対峙していたなら撤退を考えるかも」

「追撃予防にある程度の艦数はまとめておくにしても、半分くらいは別行動させられるじゃん? そいつをガンゴスリ連合艦隊へと振り向けられたら?」


 敵に大規模増援があった場合、作戦は失敗に終わっただろう。プロパガンダはウェンディロフだけに通用するのであって、ゼオルダイゼにはまったく効果がない。


「負けてた」

 間違いない結果である。

「だから、この場合、戦闘艦は傷付けずアームドスキンを削っていくのが正解なんです。デヴォーさんクラスなら、そんなことわからないはずがない。なのに、損傷艦が出ているということは傭兵(ソルジャーズ)の指示無視の結果だという結論に至ります」

「そうだったのね。ルオーは相手に撤退してほしいときに限定してスクイーズブレイザーを使っていたと」

「ええ、そういうことです」

 理解度の高い生徒に接するように頷いてくれる。

「じゃあ、タイミング的に危うかった?」

「いえ、ウェンディロフ陥落の報告があっての撤退判断だったと思います」

「その三隻が撃沈までしてなくても、目も当てられないような状態だったらヤバかったかもね。そのあたりは麗しのデヴォー閣下が押し引きしてたんじゃね?」


 傭兵(ソルジャーズ)のコントロールに苦心していたデヴォーだが、そこはそれ、オイナッセン宙区一の用兵家と呼び声高い彼女のこと。様々な戦術を駆使してソルジャーズ部隊がやりすぎないよう加減していたのではないかという話だ。


「もっとも、バロムたちはそれを狙っていたのかもしれませんけど」

 ルオーは考え込むふうだ。

「とんでもなく合わないもんな。お前がここまで調子を合わせられない相手なんて、オレが知ってるかぎり初めてな気がするぜ」

「そこまで恨まれてる?」

「勘弁してほしいものです」

 ゼフィーリアに指摘されて青年は顔をしかめている。

「仮にゼオルダイゼ艦隊が早期に撤収を決断した場合。そして、半数がウェンディロフへの増援として送られていた場合。この仮定が成立したらデヴォーさんはどう行動すると思います?」

「わたしたちが大ダメージを受けるようなことになると困るから追跡する?」

「いいえ、彼女ならゼオルダイゼ本国を狙うフリをしたでしょう」


 増援を阻止するのは行動を察知してからでは難しい。そのうえ、作戦途中にZACOF(ゼイコフ)の残留艦隊まで飛来するようであればウェンディロフ国民のミアンドラに対する信用は一気に失墜していただろう。やはり、侵略に来たのだと思われる。


「阻止するより、無理してでも引き寄せるほうが早い」

 ルオーの考察は深い。

「その無理が本当になったとき、こちらの連合艦隊は非常に危険な状態になっていたかもしれません」

「ゼオルダイゼの圧倒的な戦力の的に?」

「際どいじゃん。でも、そんくらいしないとオレちゃんたちが窮地に陥る可能性高いしさ」

 パトリックも珍しく深刻な顔つきだ。

「それが一番怖いんです。もし、傭兵(ソルジャーズ)部隊が無謀な試みをしようとしていたなら……。もし、それが目的……」

「ルオー?」

「ああ、すみません。憶測が過ぎましたね、ゼフィさん」


(え、なに? 変な雰囲気。ゼフィさんってルオーになんか思うところある?)


 その奇妙な空気にミアンドラは身体が固まった。

次回『深く潜るは(4)』 「できないなら黙っていてくださらない?」

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