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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
捨てる神あれば拾う神あり

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深く潜るは(2)

 旗艦ゲムデクス以下ガンゴスリ及びマロ・バロッタ遠征艦隊が時空間復帰(タッチダウン)すると、残るゼオルダイゼ同盟対抗機関連合軍『ZACOF(ゼイコフ)』の艦隊がランデブーポイントにいた。見た目、大きなダメージはないように思える。


「おかえりなさい、ルオー」

 超光速(フレニオン)通信はまだ安定していないので個別のレーザー通信である。

「お待たせしました」

「随分と綺麗に収めてきてくれたみたいね。ご苦労さま」

「邪道も邪道の作戦じゃないです?」

 デヴォー・ナチカのような軍人はまず採用すまい。

「そうね。でも、圧倒的に事後処理が楽で安定する手法よ。だって、ウェンディロフ暫定政府の首席が正式にモンテゾルネ本国やメーザードまで謝罪を申し入れてきたくらいだもの。心を入れ替えたみたい」

「ミアンドラ様に特に負担が大きかったのが難点ですけど」

「そんなこと言って、彼女に勉強させる気満々だったくせに」


 さすがにオイナッセン宙区一の名将の目は誤魔化せない。少女に世間というものを学ぶ機会を与える手段だったのは否定しない。


「そんなにあの子を軍人にしたくないわけ?」

 鋭いだけの流し目で射抜かれる。

「もったいないですから」

「買ってるのね」

「それもありますが、今後ガンゴスリがパルミット宙区の中心をキープするのは間違いないと見込んでいるからです。安定した、清廉潔白な国であってほしいと願ってます。マロ・バロッタには家族が住んでるんです」

 故国のことはあまり信用していない。

「力を付けても野望を抱かない人に育てる?」

「育てるなどと、おこがましい。ただ、庶民の気持ちがわかる人になっていただきたいだけです」

「君を師と仰いでいるうちは大丈夫そうだわ」


 デヴォーは政治家ではないが、戦争がしたい軍人でもない。隣区が政情的に安定しているのは歓迎だろう。


「こちらの問題児は大人しくしてくれてました?」

 離れていた間の具体的な状況までは聞いてない。

「君がいなかったのは気分的に相当楽だったみたいよ。思う存分暴れてたもの」

「放っといたんです?」

「そういうものと思って采配することにしたわ。疲れるから」


 以前はZACOF(ゼイコフ)の結束を鑑みて全体の制御が利く状態を願っていたという。しかし、その考えは放棄したらしい。


「あくまで主力はガンゴスリ艦隊」

 聞こえるでもないのに声をひそめている。

「うちやメーザード、マロ・バロッタも脇を固めるくらいでちょうどいいわ」

「デヴォーさんにラウ教官が両脇ですか。ミアンドラ様もとんでもない立場に祭り上げられてしまったものです」

「戦力的にも戦術的にも、君がきっちり支えている以上はプレッシャーなんてないはずだわ」


 見てきたように言う。たしかに最近は彼が離れないかぎり、非常に安定した様子なのは否めない。依存とも違う。少女自身も今は学びのときと心掛けてくれているからだろう。


「そろそろ時空界面も落ち着いてくる頃合いね。二人にも挨拶しておくわ」

「ライジングサンもゲムデクスにパスウェイを繋げます」

「じゃあ、あとで」


 ルオーは目礼を送って通信を終えた。


   ◇      ◇      ◇


 デヴォー司令からウェンディロフ戦勝を労われたミアンドラ・ロワウスはミッションブリーフィングの時間を打ち合わせて一息つく。


(目まぐるしい。当初の重責の覚悟なんて可愛いものだったかも)

 考えることが多すぎる。


 ウェンディロフの事態が収束したあとも、暫定統治をする星間管理局の担当官、残留国軍の指揮官、市民代表を謳う首都の知事などからの挨拶を受けねばならなかった。さらには本国への講和協議団の派遣要請やホーコラへの機材調達も調整が必要。主に食料を始めとした補給物資に困らなかったのが救いか。


(戦闘指揮より、遠征艦隊のマネージメントのほうに時間が割かれるなんて)


 それでも、へレニア副司令やソギド艦長が確認作業を担ってくれて素案は作成してくれるので、どうにかまわせている感触である。経験値の不足で時間の使い方が下手なのだろうと思う。


「お疲れじゃないです? 一服しません?」

「お菓子も持ってきたぁ」

 司令官室をライジングサンの一同が見舞ってくれる。

「ありがと、クゥ。頭が糖分を欲してるみたい」

「効果てきめんだよぉ」

「ちょうだい」


 クーファの頭で揺れている緑色のウサ耳を見ているだけで心が落ち着く。つい目を奪われてしまった。


「今日はリラクゼーショングリーンウサ耳で正解みたいです」

 ルオーが口元を押さえている。

「でしょぉ? 思ったのぉ」

「妙なもの、出してる?」

「かもぉ」

 頭を向けてゆらゆらさせるので指で突付いておく。

「数値的にも確認しておきませんとな」

「サロムだぁ」

「お邪魔いたしますぞ」


 入室してきたのは艦医のサロム・テンクルである。クーファの親世代である彼は信頼に値する人物。


「少々オーバーワーク気味ですからな」

 診察機器を向けられる。

「お疲れでいらっしゃる。今夜はベッドの安眠機構を作動させてもよろしいですかな?」

「お願いします」

「食事も少し調整させていただくので全部摂ってくださるとありがたい」

 気遣いに「そうします」と答えた。

「甘いものもよろしいでしょう」

「でも、あまり食べすぎるのは」

「結構ですよ。閣下の年頃は気になさらないほうがいい」


 皆に甘やかされている気分になるミアンドラであった。

次回『深く潜るは(3)』 「不用意?」

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― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 上は算盤を弾くのが仕事ですからね。
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