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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
徒花に実はならぬ

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朝日を浴びる(7)

 アームドスキンを発進させた連合の艦隊は緩やかに減速して戦闘宙域との距離を同期させる。大統領以下の政権幹部を乗せた政府専用航宙船は護衛部隊を残したまま飛び去ろうとしている。動かないラウネストを副官は怪訝に見ていた。


「拿捕なさらないんですか? ろくな直掩も付いてないので、二隻も向かわせればすぐだと思いますが」

 副官は疑問を口にする。

「いらん。逃げるっつーんなら逃がしとけ。あれほど扱いの面倒な捕虜はないぞ」

「ですが、降伏を認めさせるには必要でしょう?」

「そんなもん、暫定統治をする星間管理局が正当選挙をして、新たに発足した政府と講和すりゃいい」

 実際に占領して統治する気などガンゴスリにもマロ・バロッタにもない。

「しかし、戦争の目的があやふやになってしまいます」

「いいか、ここで重要なのは敵の戦力を削ることだ。わかるか?」

「もしかして、残った護衛艦隊を行かせないために?」

 副官が気づいたとおりである。


 ウェンディロフとの戦争の最終目標が降伏もしくは講和だったのは間違いない。それは、ゼオルダイゼ同盟の戦力を減少させるためであって侵略ではないのだ。政府の船を追ってみせたのは方便で、目の前の敵を降伏させるのが重要なのである。


「ゼオルダイゼに合流させなければ構わないと?」

 実を取るとそうだ。

「あの船の中身なんぞ戦力の一つにもならん。ゼオルダイゼにとっても厄介者でしかないだろうぜ。厄介なもんは押し付けるにかぎる」

「役に立つとしても、せいぜいが国土奪還の建前くらいにしかなりませんね」

「ゼオルダイゼはそれさえ必要としてない。ありゃ、もう退くに退けないだけだ」

 とうに形振り構わなくなっている。

「そうですね。いや、こう言ってはなんですが、ルオー・ニックルのやり方は閣下と同じです。方法はともかく、得られる結果が大事だと考えているところとか」

「うーん、やつにそんなのまで教えた記憶がないんだけどな。まあ、苦労人だから生存戦略くらいに考えてるんだろ」

「よく似てらっしゃいますよ」


 悪い気はしない。生徒は今ではZACOF(ゼイコフ)連合艦隊の要ともいえる存在になっている。


「さあ、こいつを平らげるぞ」

「承知いたしました」


 ラウネストは戦況パネルに向き直る。


   ◇      ◇      ◇


 エスメリアは指揮下の二つの編隊が敵部隊の壁に攻撃を仕掛けるのを後ろから注視する。彼女の役目は、その八機が作戦行動に齟齬なく動くよう指揮するのと、戦闘中に視野が狭くなりがちな点をフォローすることだ。


(当たり前にできていなければならなかった。それなのに、編隊リーダーが家名を慮って、指揮をさせたうえに心配もさせるという負担を強いていた。私が戦果を欲して不甲斐ない有り様を見せていたからだ)


 あまりの負担に第三戦隊は十分に機能していなかったと思っている。まずはそれを改め、エスメリアが心配なく指揮できるのだと見せなくてはならない。


「側面、まわりこもうとしている。左に当たれ」

「了解」


 彼女含むガンゴスリ戦闘部隊は敵軍を真正面から攻めている。マロ・バロッタ部隊は右翼から強く押し出て、横合いから叩こうとしていた。あわよくば、艦隊とのルートを潰して敵を浮足立たせようとする意図が見える。


(上手いな)

 ラウネスト司令の用兵だろう。


 へレニア副司令と連動して役割分担をしている。お世辞にも連携が整っていない二つの軍を有機的に作用させるには上が繋がって立ちまわるのが手っ取り早い。


「右、マロ・バロッタにまわりこまれた敵が左から裏を取ろうとしている。我らがすべきは、ここで持ち堪えて見せることだ。踏ん張れ」

「明確な指示で助かります」


 二人の編隊リーダーは彼女の変化を感じ取ってくれている。いつもより円滑に動けている気がした。


「痺れを切らす気配がある。しかし、我慢すれば敵のほうが先に崩壊する。少々重たいが頑張りどころだ」

「まだ、いけますとも」


 敵もガンゴスリ部隊を先に抜かなければジリ貧だと覚ったようだ。見るからに攻勢が強まっている。ビーム回避間隔も無視して厚めに押し寄せてきた。


「エスメリア様!」

「いい、抜かせろ」


 厚みに堪えきれず二つの編隊を割ってくる敵機がいる。その様子も彼女の位置からは丸見えだった。


(大丈夫だ。見えている。これならば)

 対処する心持ちが作れていた。


 彼女のルイーゾンを指揮官機と見破って積極的に狙ってくる。しかし、大胆であるがゆえに動きが雑だった。


(少し違うか。こいつはパトリックほど強くはないということ)


 左手の力場刃(ブレード)の突きを、機体を傾げて芯を外す。完全に外れきっていないので敵機は押し込んできた。

 上半身を揺らしながら、右のビームランチャーのグリップエンドで手首を叩く。右腕で絡め取りながら引き込み膝を入れる。衝撃で仰け反った相手を左手のブレードでサクッと薙いだ。


(もう一つ!)


 ブラインドに入っているつもりの敵だろうが見えている。パトリックとルオーほどの連携ではない。

 上下二つになった敵機の上半身側を殴って逸らすとビームランチャーを向ける。砲口の真ん前に飛び出して慌てているがあとの祭りである。


「お見事です、エスメリア様」

「まだまだいる。命大事に稼げよ」


 トリガーを押し込んで撃破した二機の爆炎からリフレクタで身を守ったエスメリアは陽気に檄を飛ばした。

次回エピソード最終回『朝日を浴びる(8)』 「幾らでも来るがいい!」

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更新有り難うございます。 ⋯⋯[ババ抜き]やったか⋯⋯。(まぁ、必要ないもんな)
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