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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
徒花に実はならぬ

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歩む者こそ(2)

 インタビュアーのその男は息巻いていた。


(なにが「姫様」だ。ただのお飾りの司令官だろう? どうせミアンドラ・ロワウスとかいう少女の後ろには老獪な指揮官か参謀がひそんでいるはずだ)

 目星をつけている。

(すぐに化けの皮を剥がしてやる。一人でインタビューを受けろって言えば音を上げるさ。拒んで、同席した人物が黒幕ってわけだ。そいつから本音を引き出してやる)


 そう考えて、意気揚々とガンゴスリの旗艦ゲムデクスに乗り込んだものの、一対一のインタビューはあっさりと許可された。ただし、入室前に厳密なボディチェックと使用機器チェックは受けさせられたが。


(なんだ、この対応。まるでこっちが暗殺者みたいじゃないか)

 実際に連合軍側はそれを疑っている様子。


「快諾くださりありがとうございます、ミアンドラ・ロワウス司令官。私はカルピンネットニュースのロズマン・プリメーラと申します」

 にこやかに挨拶する。

「ミアンドラ・ロワウスです。大変失礼とは存じますが、カルピンというのは北西にある都市のことで間違いないでしょうか?」

「ええ、そこのネットニュース運営社でリポーターをやっております」

「失礼しました。国軍基地がある衛星都市は事前にチェックしているのですが、それ以外はなかなか」


(眼中にないときたか。その嘗めた態度を後悔させてやる)

 ロズマンは内心で毒づく。


「常々、我が国の市民との交流を望まれているとお聞きしましたがカルピン市民はその中に入っていないとおっしゃるのですね?」

 質問にも少し悪意がまじる。

「人口の多い都市はできるだけ避けるようコース策定をしております。万が一にもウェンディロフ国軍の急襲を受けた場合、市民の皆様を確実にお守りすることができません。なので、都市は都市と認識しているだけなのです。気に障ったのでしたら申し訳なく思います」

「では、各地のプラントを経由していらっしゃるのは、そこでなら問題ないとお考えだからですか?」

「はい、滞在中は最大限の対空警戒監視を命じてあります。最低でも人的被害は絶対に出ることのない体制を敷いていることを現地の皆様にはお約束しておりますので」


 都市に近づかないのは近郊で戦闘になることを怖れているからだという。確かにそんな事態になればパニックが起こって収拾は困難だろう。


「なるほど。わかりやすい回答をありがとうございます」

 初手は外したようだ。

「では、別の質問です。各地で食料などの調達を行われているのは、物資的に困窮なさっているからですか? でしたら、なぜそんな無理な戦争に踏み切られたのでしょう?」

「いえ、食料含め各物資は戦闘継続可能な量を予め確保しております。ただ、当地で生産に従事されている方々があまりに素晴らしい産物を作っていらっしゃるものですから、我が軍兵士にもお分けいただけないかと考えたからに他なりません」

「それだけですか?」

 少女はにっこりと頷く。

「ええ、生産者の方々にはわたくし含め、兵士からも感謝を送っておりますが、お聞きになられていませんか?」

「いえ、まあ、そんな情報が寄せられたので私が出向いてきた次第ではあります」

「取引をお喜びいただけているのでしたら幸いです」


 実のところ、カルピンへの入荷量が落ちている。これまでは品質的に跳ねられる分を考慮して契約分に上乗せされた入荷量があって、それにより住民は安価で入手できていた。

 ところが最近、各プラントからの入荷が契約分ちょうどの量しか満たしておらず、若干の値上がり傾向を示していた。理由を質してみれば、連合艦隊に卸す産物を優先したがゆえの出荷量だという。


「プラント管理者は喜んでいる模様ですね。高価買取をされているようですので」

 皮肉を込める。

「遠征中の兵士にとって、新鮮な食材というのはそれほどに貴重なものなのです。彼らの満足な顔を見られるのでしたら、少々戦費が嵩むくらいは上層部も容認してくれます。モチベーションに多大な影響がございますので」

「お陰でカルピンでは物価上昇が認められているのですか」

「それは申し訳なく思います。ですが、わたくしといたしましては、産品の品質に見合う対価を提示しているつもりです。生産者の方々は日々努力してより良い産品を生み出そうとなさっています。カルピンの住民の方にも正当に評価されることを願います」


 暗に買い叩いているのではないかと言われる。確かにこれまでは契約量上乗せ分を当然のように要求してきた。つまりは勉強しろと言ってきたのである。それを指摘されると反論しにくい。


「そういったお考えの下、プラント生産地を巡っていらっしゃったのですね。私はもしや、生産者からの徴収をしてるのではないかと心配していたのです」

 そう質問するとミアンドラはころころと笑う。

「あり得ないお話です。我が艦隊後方上空をご覧になられました? ぴったりGPF部隊が追跡してきておりますよ。もし、民間への無法を働こうものなら即座に摘発を受けてしまいます。遠慮したいものですね」

「そうでしたか。気づきませんでした」

「要請がなければ、改めて星間管理局からの広報などないものです。こちらから要請するなど品のない行為はわたくしもいたしたくありません」


 苦笑いするミアンドラをロズマンは強敵だとみなした。

次回『歩む者こそ(3)』 「私は妙に思うんですよ」

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― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 さて、この記者さんがどう転ぶのか⋯⋯。
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