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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
徒花に実はならぬ

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歩む者こそ(1)

 ガンゴスリ、マロ・バロッタ連合艦隊は、大陸間を結ぶ大海洋こそ攻撃を受けやすい環境であるがゆえに一息に飛び越えた。しかし、再び上陸後はプラントの並ぶ地域で集落の住民と交流を深めつつ進撃する。


「姫様、遊ぼう」

「ねえ、姫様のお国はどんなとこ? お話聞かせて」


 部下は「閣下」と呼んでくれるのだが、先々でルオーたちライジングサンメンバーは「ミアンドラ様」と呼んでしまうので、それが噂として伝わってしまう。結果として、彼女が取引交渉のために道行くと子どもたちが「姫様」と呼び掛けるようになってしまった。


「あとでお話しましょう。まずは大人の方たちに滞在のお許しをいただいてからね」

「いいって言うから大丈夫だよ」

「お父さん、うちにも寄ってくれるかなって言ってたもん」


 管理者たち大人は余剰在庫を体よく購入してくれる連合艦隊を都合よく思っていることだろう。それを子どもの前で発言してしまうのにはミアンドラも苦笑いで応じるしかない。


「大っきい姫様は遊んでくれるよね?」

「いや、私もミアの警護についてきているだけで暇ではないが」

「えー、お話聞かせてよ」


 警護役は威圧感がないよう基本的にエスメリアが担当しているのだが、彼女もライジングサンに「エスメリア様」と呼ばれてしまうので「大きい姫様」扱いだった。子どもたちはルオーやパトリックといった有名人の行動言動に影響を受けやすい。


「リーダーの方とお話している間は降りてくるから遊んでもらってね」

 警護についてきている上空のクアン・ザとベルトルデを指差す。

「ほんと? 遊んでくれる?」

「ええ、いつもそうしてるから」

「やったー! アームドスキン、見せてくれるかな?」


 ルオーが子ども好きで面倒見がいいのをミアンドラはこの作戦で知った。なので、軍の警護機と併せて彼らも同行させている。交渉の間、集まってくる子どもの相手をしてくれるのでちょうどいい。パトリックも嫌々ながら付き合っていた。


「ありがとう、ゼフィも」

「どういたしまして。これも契約内だから気に掛けなくてもよくってよ」


 ゼフィーリアはエスメリアと並んで生身の警護に付いてもらっている。彼女がいると交渉相手の男性はすべからく鼻の下が伸びるので助かる。ついでにクーファもついてきて空気を和ませてくれた。


「じゃあ、よろしく」

「はい、ごゆっくり」

「わあ、ルオー選手だ! ねーねー、このアームドスキン、エシュメールのときと違うけどなんでー?」


 子どものパレードはルオーに押し付けて取引交渉に入る。とはいえ、これまでの買い取りで提示金額も噂で流れてしまってるので受け入れるか否かと訊くだけだ。今のところ吹っ掛けてくる相手はいない。評判が先行しているので話が早い。


「ここは酪農プラントもあるのですね。天然牛乳は贅沢です。でも、長持ちはしないし嵩張るのでこちらにいる間の分だけ買い取らせてください。加工品の余剰があるのだったら喜んで引き受けます」

「あるある。頼むわ」


 各地で色々と作っているので仕入れも多彩になる。お陰で最近は兵の肌艶が良くなってきた。へレニアなどは緩んでしまってないかと冗談まじりに言っている。


「なあ、姫様。このまま首都圏まで行ったら戦争になるのかい?」

「そればかりはどうにも。わたしとしましては、同盟を離脱して講話に応じてくださるなら攻撃するつもりはございませんが」

「私たちにはどうにもならないけど、できれば戦ってほしくないのよ。あなたたちが別にウェンディロフを攻撃したがってるんじゃないってわかったんだもの」

 同席した女性も説得してくる。

「皆様のお口添えがあれば政府も翻意してくださるかもしれません。この国は自由で民主的な国家ですもの」

「だよな。しっかし、偉いさんはなかなか俺たちの声を聞いてくれないからな」

「こういうときくらい、勇気出して政府にメッセージ送ってくれてもいいじゃない」

「だなぁ。やってみるか」


 こんな話も道行きで聞かれる。政治に興味を示さない国民も多いが、やはり心の奥では戦争を嫌う意見が大半だ。いくら現代戦闘で民間に被害が出ることは稀でも漠然とした不安はあるのだろう。


(きっとルオーは軍閥の家に生まれたわたしに一般的な現実を見せようとしてるのね。普通の生活を送っている人の感性に触れる機会はどうしても少ないもの)

 知識としてしか触れてこなかった。


 戦争の向こうにある現実。それを知ってこその戦い方もあるだろうし、治世もあるのだろうと思う。彼女に広い視野を持ってもらいたいと思っている様子。


(知識として吸収する。でも、今は司令官として立ち振る舞うのが正しいはず)

 それを忘れてはならない。


 そして、司令官として最も姿勢を問われる機会がやってくる。その飛翔艇(ライトフライヤー)は連合艦隊目指して近隣都市から飛んできた。


「報道のライトフライヤーだそうです。司令に面会と取材を申し込んできています。どうなさいますか?」

「会います。着艦誘導をして差しあげて」


 ミアンドラはなにを語るべきか頭の中を整理した。

次回『歩む者こそ(2)』 (眼中にないときたか。その嘗めた態度を後悔させてやる)

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― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 生き物はさすがに艦では厳しいですからね。 (小規模農場(プランター)なら多少は⋯⋯)
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