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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
分別過ぎれば愚に返る

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邂逅し(1)

 ダーバン・ガスケートは任務に動員されている。彼のいる公園で、同盟への加入と参戦を主張しているダ・トリファーのフランセスカ議員が政治集会をする予定だ。

 対する反戦派の市民団体もデモを予定しているし、連合側の工作員が議員にテロを企てる情報もある。適うならば阻止し、安全に集会が終わるよう働き掛けねばならない。


(まさか、連合の工作員がクーファさんと関係しているとも思えない。彼女はそんな汚いこと許せないだろうし)

 利用されることはあっても、直接は関与しないと信じている。

(来ているんだろうか。それなら、会って説得したいけどいるかどうかもわからない。彼女から連絡してきてくれれば位置探知を掛けることもできるけどそう上手くはいかないな、きっと)


 偶然に頼るしかないと思っている。もし、運命が彼女を救えとダーバンに言っているのだとすれば会える希望くらいは持っていいはずだ。


(待てよ。確か、ルオー・ニックルはスナイパーだったな。もしや、直接狙ってくる?)

 嫌な考えが頭をよぎる。

(なくもないな。連合の工作員というのがあいつだから事前に入り込んでいるとか。クーファさんはそれを知らされてないのか)


 ならば、悪事に手を染める前にクーファを救い出したいダーバンだった。


   ◇      ◇      ◇


 フランセスカ議員が政治集会を行う公園周辺は警備が厳重になっていた。その中を狙撃銃にするハイパワーガンをケースに入れて通り抜けるとなると注意が必要だ。


「ちょうどいいですね。クゥが買ってくれたバンダナでσ(シグマ)・ルーンを目立たなくできます。ありがとうございました」

「えへぇ」


 見るからにパイロット用σ・ルーンを装着して携行ケースを背負っていれば職務質問を受けやすくはなろう。それを軽減できている気がする。


「それに悪くないわ。金髪に緑のバンダナとか自然な感じで」

 ゼフィーリアも褒めてくれる。

「よかったぁ。緑がいいような気がしてぇ」

「ファッションには程遠いルオーにしてはメガヒットじゃない」

「誰が程遠いですか。自覚ありますけど」

 二人をくすくす笑わせる。


 今日は三人連れで動いている。パトリックもついてくると散々ゴネたが、誰かがライジングサンでバックアップ待機しなくてはならない。アームドスキン戦闘になるほどの非常時になった場合、退路を確保してもらわねばいけない。


「大人しくしてます?」

 非常に不機嫌だった相方。

「させるから。ちゃんと自分の役割こなせないなら一週間口聞かないって言ったもの」

「せめてご褒美くらい用意してあげられないものです? 図に乗らない程度の」

「パットの場合、加減が難しいのよ。なにを言っても良いように解釈してしまうんだもの」

 頬をつねるのさえご褒美だと言うらしい。

「芯が通ってますね」

「すっごくオスなのぉ」

「ライジングサンでは彼が一番人間らしいのかもね」


 ひどい言われようだ。とはいえ、ゼフィーリアはそのうちきちんとご褒美をあげるだろうと思う。メンバーそれぞれに合わせた距離感を保つのは非常に上手な彼女ならば。


「あれね」

 目的のビルに近づく。

「あそこなら公園周辺のどのビルの屋上も狙えるはずです。同盟の工作員もさすがにプロフェッショナルでネットに痕跡を残してません」

「ティムニでも無理でぇ」

「直接僕が狙うしかない以上、お二人にバックアップを頼むしかありませんでした」

 クーファまで動員したのはその所為だ。

「ゼフィさんは主に僕の見落としを。クゥは誰か来ないか見張りをお願いしますね」

「足音ならお任せなのぉ」

「君が見落とすとは思えないかしら」


 チームで対応するのが確実だ。要人とはいえ、非戦闘員を目標にした策略など許せるものではない。戦争は兵士同士でするものだ。


「一応レーザーガンを持たせましたけど、余程のことがないと撃っちゃ駄目ですからね、クゥ?」

 万が一でしかない。

「狙っても当たらなくてぇ」

「そうそう、単なる護身用です」

「わたしはハイパワーガンでルオーのサブをやるから警戒よろしく」


 ビルの屋上に向かうエレベータの内部で最終確認をする。以前はルオーひとりでやっていた任務も仲間の増えた今では全部を賄わないですむから楽だ。


「ただのヒットマンなら単独でしょうが軍の工作ですからね。確実を期して、おそらく二班から三班はいると思います」

 向こうにもバックアップがいる。

「すべて沈黙させます」

「探知は任せる」

「はい、共有します」


 屋上に着いてセッティングに入る。耳のいいクーファにエレベータハウス側を警戒してもらい、ルオーとゼフィーリアはケースからハイパワーガンを取り出す。


「ティムニ、進行はどうです?」

 集会のほうの状況を訊く。

『到着したー。準備すんだら演説開始みたいー』

「だったら、もう待機してますね。始めます」


 演壇を確認する。そちらに向かう射線を読むべく集中した。やはり、三ヶ所から射撃線が伸びている。位置をマークしてゼフィーリアに共有した。


「簡単に見つけてくれるのね」

「これくらい他になにもなければ。演説開始までは周囲警戒もしてます。始まる直前に撃ちますので」

「了解」

 ゼフィーリアもσ・ルーンの望遠スクリーンを注視している。


 ルオーはハイパワーガンを屋上の縁にかけて安定させた。

次回『邂逅し(2)』 (彼女のほうが一枚上手だったか)

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― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 さて、どうなりますかね? (と言うか、本来なら狙撃が可能なポイントを割り出して  そこも押さえておくべきでは⋯⋯)
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