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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
分別過ぎれば愚に返る

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出会っては(5)

(切り口を変えよう)

 ルオーは思考の方向性を異にする。

(戦争が長引くとなにが起こる? アームドスキンを始めとした技術の発展が加速する)


 推進安定性だけでなくエネルギー効率も上がる重力波(グラビティ)フィンが民間船舶に普及すれば惑星外活動が活発化する。イオン駆動機一つ取っても、駆動部分を持つ機器の軽量化、省スペース化に貢献する。

 軍需産業の活況が経済を潤す以上に、今後の産業の活性も見込める。ただし、そういった産業分野が国家を動かすほどの怪しげな資金の動きをしていないのは彼が以前に調べている。


(貿易関連にも悪くない影響があるだろうけど)


 戦闘による渡航の自粛は限定的だ。安定した先端技術は人も物も動かすはず。しかし、オイナッセン宙区に偏った現象ではなく、どこでも起こっていると思う。相対的な損得も限定的になってしまうだろう。


(戦争はともかく大規模な消費活動だねぇ。経済への効果以上に国力を落とす。こっちのほうが有力かなぁ?)


 同盟、連合ともに現在は国庫から資金を吐き出している状態だ。どうあれ、間違いのない事実。では、両者が消耗することで、それ以外の国が力を付けるか? それもまた違う話になる。


(オイナッセン全体が落ちると思っていい。気持ち悪いくらい誰も得をしないね)


 どちらが勝っても守られるのはその後の国益だけ。経済が巡るようになっても、落ちた国力が回復するには時間が掛かろう。

 宙区外からならば場合によって利益も出る。マロ・バロッタがいい例だ。ビスト翁は以後の勢力図を鑑みて派兵した。決して善意のみではない。関わり方が変わることで得をする計算が成り立つ。


(外側から見ると得をしやすい。勢力拡大は抑制されるし、経済的な関与もしやすくなるねぇ。観点としてはこっちか)


 しかし、いくらビスト・ゼーガンが知見に優れていようと戦争の起因にまではならないはず。そこまでするようであれば、ルオーは撃たねばならない。それが相方の親族であろうと。


(別口、それも国家レベルでなく、もっと大きな意思が働いてるみたいだ。宙区規模の)

 謀略としては、こちらのほうが考えやすい。

(戦争が激化したほうが得をする。……それだけじゃないな。激化する方向に誘導されているのは同盟だけじゃない。連合もだ。彼はそういう動きをしてる)


 戦闘が富に激化したのは傭兵(ソルジャーズ)部隊が加わってからのほうが著しい。命知らずの戦法を用いるのもある。同盟の数に対して、抵抗を継続できていたのは傭兵(ソルジャーズ)の資する部分は大きい。


(同根の可能性も否めないか。だとすると、彼は今後どう動く?)

 不安はいや増す。


「ティムニ、バロム・ラクファカルの出自に関して調べられるだけ調べてもらえません?」

『あいあーい、あれ(・・)が誰にとっての「時代の子」なのか、あたしも気になるところなのー』

「ですよね」


(それ次第で対応を考えないといけないなぁ。ああ、面倒くさい)

 戦争というものは、とかく人を苦しめる。


 ルオーは、試すような視線を向けてくるピンク髪のアバターの額を指で突くジェスチャーをした。


   ◇      ◇      ◇


「僕は建前どおり星間管理局ビルに顔を出してきます。みんなは自由にしていいですよ」

 ダ・トリファーの管理局宙港にライジングサンが到着後にルオーは伝える。

「クゥは街に美味しいもの探しに行ってみるぅ」

「じゃ、わたしも一緒に行くわ。護衛代わりってとこ」

「んじゃ、オレちゃんもそっち」


 三人はグループ行動してくれるらしい。そのほうが彼としても安心だ。


「用事が済んだら僕も合流しますね。連絡します」

 クーファの耳を指で揉むとくすぐったそうにはするが嫌がらない。

「美味しいもの、見つけておいてください」

「重大任務を任されたのぉ」

「だったら頑張らないといけないかしら」

 ゼフィーリアが猫耳娘の手を取って歩き出す。


 ルオーは三人を見送ってから管理局ビルに徒歩で向かった。エントランスを行き交う人はまばらで、利用者もいわゆる宇宙屋が多そうだ。彼も目立たないですむ。


「こんにちは」

「星間管理局にようこそ。今日はどういったご用向きでしょうか?」

 アテンダントが丁寧に対応してくれる。

「すこし込み入った話を伺ってもいいです?」

「承りました。担当の者が来ますので少々お待ちいただけますでしょうか?」

「お手数ですがお願いします」


 おそらくビル内に入ったところから彼は顔認識でチェックされていると思っていい。やってくるという担当者はアテンダントではなく、駐在の情報部エージェントなのは想像に難くない。


「お待たせいたしました。わたくし、カリミナが承ります」

 丁寧なお辞儀をもらい、個別対応ブースへと導かれる。

「どうぞお申し付けください」

「では、巷で噂されるゼオルダイゼ紛争絡みの情報を。それと、現在、ウェンディロフ国籍の人がどれくらいの人数入国しているか伺ってもいいです?」

「個人情報にまつわる部分がございますので全てというわけにもまいりませんが」

 額面どおりの回答ともいえる。

「そうですね。だったら、僕の持ってる連合関連の情報と交換で如何です?」

「非常に興味深いお申し出です。わたくしに提供できるものでしたらお応えしたいと思います」

「お互い様ということで」


 美女の妖艶な笑顔に多少は気後れも感じながらルオーは手札を切っていった。

次回『出会っては(6)』 「浮気な男の約束手形なんて当てになって?」

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― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 まぁ、大きな視点からすれば、 一つの星系(宙域)なんて小さいのかな?
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