出会っては(3)
マロ・バロッタがアームドスキンを引き渡されている頃、ルオーたちライジングサンメンバーはミアンドラ艦隊司令、へレニア艦隊副司令、そしてマロ・バロッタ艦隊ラウネスト・ラウダ司令とオンライン会談を繋げ、モンテゾルネのデヴォー・ナチカ司令からの相談を受けることにする。
「よくない話か? 言われても、取って返すのはちっとばかり難しいんだが」
ラウネストが苦い表情になる。
「いいえ、急ぎではないわ。不測の事態ってほどじゃなく懸念事項」
「それで?」
「ウェンディロフが立て直しに戻ってる間にアデ・トブラが陥落してしまったでしょう?」
落とした当人が半分以上いる状態で説明するまでもない。
ウェンディロフ同盟艦隊はホーコラ会戦のダメージが大きく、一度本国に戻っていたのは確認されている。以後、再出撃すると思われていたが、同盟艦隊として合流する前にアデ・トブラが離脱してしまった形になった。現在は具体的な同盟艦隊を形成していない。
「どう動くかと思って監視はさせていたんだけど」
デヴォーにとって情報は最重要である。
「ダ・トリファーに向けて移動している気配があるわ」
「ダ・トリファー?」
「以前から同盟加入に働き掛けしていたのは掴んでる。そこへ、片翼のアデ・トブラを失ったものだから、ダ・トリファーへの働き掛けが強まる。もしかしたら、かなり強硬手段に訴える可能性が出てきたの」
ダ・トリファーはオイナッセン宙区でも経済規模が大きめの惑星国家である。これまでゼオルダイゼ同盟のような安全保障上の繋がりを持つ国はなかったはずだった。
「依頼で何度か立ち寄ったことありますけど、あそこは安定していて拡大傾向なんて全くなさそうでしたよ?」
程よく飽和した状態だったとルオーは記憶している。
「政情も問題ありませんし、世論に偏りもない感じでした」
「ええ、何事もなければ歯牙にも掛けないと思ってたわ。でも、ここに来てゼオルダイゼは盛んにプロパガンダ広報も始めてるのよ」
「なるほど、座視はできないと」
対立構造に、ガンゴスリに続いてマロ・バロッタまで参戦してきた。ゼオルダイゼ同盟サイドはパルミット宙区からの侵略を受けているという論調のマスメディア戦略を仕掛けてきている。
事実でないのは、星間管理局が挙動を見せないことが証明している。もし、侵略行為が本当ならば星間平和維持軍が阻止に動いているだろう。同盟にとってお題目にすぎない。
「なにもなければダ・トリファーは参戦してこない。パルミット宙区の干渉からの独立性を訴える世論形成がなされても、戦争に巻き込まれるのには反対する反戦世論も形成されるわ」
様々な意見が出てきて当然である。
「そのままなら反戦世論に配慮して政府も腰が重くなるところ。政治決定には長期の議論が不可欠になるから。日和見する論調もあるでしょうし」
「もし、反戦世論がなければという話ですか」
「そう。ウェンディロフが反戦派を封殺する工作を仕掛けていく感触があるのよ。参戦派に助勢をして、最悪武器供与までしかねない動きが見られるわ」
技術的には一歩遅れているダ・トリファー。ただし、兵力は国力に合わせた十分なものがある。そこに同盟の先端技術を与えれば十分に戦力になる計算だ。参戦世論を勝利に導けば同盟の戦力強化が見込まれる。
「わたしたちはなにをすれば?」
「参戦派と反戦派の衝突に備えて、超光速航法一回で駆けつけられる宙域に待機していてほしいわね」
「もし、衝突が起こって、そこにウェンディロフ艦隊が介入するようであれば阻止すればいいのですね」
勝利後に、反戦派のバックにパルミット宙区の思惑があったとするマスメディア工作をするのは難しくない。となると、ダ・トリファーは一気に同盟加入からの参戦になってしまう可能性もある。それは避けたいというデヴォーの意図だ。
「でも、ウェンディロフの阻止にガンゴスリ艦隊が動けば、逆にパルミット宙区の陰謀と勘繰られるかもしれないんじゃないです?」
ルオーは懸念する。
「まあ、ZACOFが阻止行動をしてもガンゴスリの意を受けてと思われる可能性は否めませんが」
「ええ、だからいっそのことガンゴスリが出ていって、勝利後に綺麗さっぱりダ・トリファーへの干渉を断てば、むしろそっちのほうが信用を得られるはずなのよ。パルミットに侵略意図なんて微塵もないってね」
「確かに。同盟のウェンディロフだけを狙うのならば」
かなり強硬手段ではあるが有効に思える。
「一時は騒然としても、沈静化したときにはなんだったって話になりそうですね。逆にウェンディロフの向こうにゼオルダイゼの思惑が透けて見えてしまう」
「そう思わせたいの。ZACOFがガンゴスリやマロ・バロッタのパルミット勢力と手を組んだのは、単に敵の敵は味方という考えからとわかってもらわないと」
「理屈をシンプルにしたほうが世論に浸透しやすいですもんね」
事態が派手であるほど沈静化後は冷静になるもの。そのときに理解を得やすい理屈を用意しておけば、自然にそこに流れていくものだ。
「ただし、ウェンディロフは本格的に刺激することになるから、マロ・バロッタ艦隊も随伴してもらえるかしら? ゼオルダイゼに対する陽動はわたくしたちと傭兵艦隊で受け持ちます」
「叩けるなら叩けという意味ですね。僕の仕事は潜入確認ですか」
「ご明答。入国が一番簡単なの、あなたでしょう?」
「酷使されるのわかってたからZACOFとは関わらないよう進められればと画策してたのに」
「あきらめなさい」
デヴォーに関わった時点で終わりだったとルオーは肩を落とした。
次回『出会っては(4)』 「いい名前ですね、『アベニール』」




