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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
縁なき衆生は度し難し

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白む空見て(5)

 増軍したらしい傭兵(ソルジャーズ)の艦隊は距離が詰まると同時にアームドスキンを放出してくる。かなり性急な進め方だとムザは感じた。


「変化する気配はない。位置このままでダミープレートを設置する」

「わかった」

 イルメアのテンションは急低下している。


 後続の十隻以上(カテゴリⅣ)の艦隊は連合軍のものだと判明した。モンテゾルネとメーザードの他にマロ・バロッタの国章が確認されたのが意外である。


「受信来ました、ムザ」

 ナッシュ・テグメランタが報告してくれる。

「マロ・バロッタが公式にZACOF(ゼイコフ)への加入を宣言したそうです。オイナッセン宙区の動乱を良しとせず、秩序の回復のために尽力する、だそうです」

「建前だ。同じパルミット宙区のガンゴスリが参戦したから、自国が宙区内とオイナッセンへの発言力が下がるのを良しとしなった、の間違いでしかない」

「そう意訳できますね。でも、気持ち程度の数だとしても厄介です。案外強かな国ですよ」

 知識を披露する。

「そうか?」

「立ち回りが非常に上手で、パルミットでも経済力と政治力をもって厳然と存在感を発揮してきたんです」

「なるほど。機を見るに敏なわけだな」


 ゼオルダイゼの拡大を思わしくないと感じていたのは本当かもしれない。ただし、注視していただけで、ガンゴスリが戦端を開かねば動かなかったと思われる。


「打算が働いてくれる方がありがたい。負けが続けばすぐに手を引く」

 モンテゾルネやメーザードとは事情が異なる。

「ガンゴスリもそうあってほしかったんですけど、ゼオルダイゼが完全に怒らせてしまいましたからね」

「体面もある。あそこは引かんな」

「そうなのどうでもいい。こいつら叩けば、ガンゴスリが出てくるんでしょ? あの憎ったらしい女と絶対に許せないライジングサンのスナイパーが」

 吐き捨てるようにイルメアが言う。

「来るぞ。だから確実に行け」

「やってやる。これだけの数のダミープレートがあるんだ。どこにあたしたちがひそんでるかわかるはずない」

傭兵(ソルジャーズ)を崩しておけば、連合部隊は混戦に巻き込まれるしかできなくなりますからね」


 ダミープレートはなにせ嵩張る。遠征では使いにくいギミックである。戦闘艦の搭載能力を圧迫するわけにいかず、使うとなれば補給用の輸送艦を動員するしかない。機動的な展開を必要としない大規模会戦でなければ荷物になってしまう。


「五百のダミープレート。うちのスナイパー部隊があたしたち合わせて約百。さあ、どこから撃ってくるかわかる?」

「それでいい」


 敵を幻惑する戦術である。ダミープレートが設置された付近を通過するときは速度(あし)が落ちるし戦型も崩れる。そこに本隊が襲い掛かればまともに戦闘になど入れない。


「敵部隊確認。傭兵(ソルジャーズ)だから機種はごちゃまぜです。そのまま来ますよ」

 有視界内に入ってきた。

「撃ってくる。が、引き付けろ。どうせ当たらん」

「ターナ(ミスト)、戦闘濃度を軽く超えてます。射撃レーダーは完全に死んでますよ」

「距離があれば自動回避もする。どれが本命か判断できずに進入してくるしかない」


 一時スピードを緩めた傭兵(ソルジャーズ)のアームドスキン部隊はダミープレートに対して砲撃を加えてくる。しかし、遠距離の光学ロックオンでは精度が著しく低い。そのうえ、自動回避まで加味すれば損害は微々たるもの。


「いいわ。そのままいらっしゃい」


 部隊の斉射によるビームの光は一見苛烈に思えるが、分散配置されたダミープレートに命中するものは少ない。そのくらい間を空けて配置してある。


「いいか? ロックオンしても一度に三射まで。狙点を見極められる。すぐに航跡を見せないよう移動だ」

「了解です」


 彼らスナイパーはダミープレートの裏側で加速、次のプレートの裏側に到着したら減速噴射して停止をくり返す。プラズマブラストの光を最低限しか漏らさず、相手に察知されないようにするのが基本戦術となる。


「訓練どおりできればかなりのダメージを与えられるはず」

「そうだ。忘れるな」


 ムザ隊のメンバーなら簡単なこと。しかし、アデ・トブラが編成している特有のスナイパー部隊の全員が慣れているわけではない。多少の損失は免れ得ないが、全体とすればナッシュが言ったようなダメージを計算できる。


「よく狙え……、撃て!」

 ムザの号令で狙撃が開始された。


 傭兵(ソルジャーズ)の砲撃はなかなか的を捉えない。だが、彼らは十分に引き付けたうえに、ダミープレートに設けられた射撃口からの攻撃である。不意を突かれた敵アームドスキンが何機も直撃を受けて爆散した。


(いいぞ。いける)

 注文どおりの展開である。


 ところが、突出したアームドスキンが狙撃を躱しつつ接近してきた。傭兵(ソルジャーズ)でも散々暴れてくれている青い要注意機体である。しかも、事もあろうにスナイパーがひそんでいるダミープレートばかりを狙い撃ちにしてくる。


(なんだと?)


 ダミープレート自体は物理障壁でしかなく、ビームの直射を受ければ貫通する。裏側にいるアームドスキンは直撃ほどではないにせよダメージを受ける。


「やはり、奴も危険か」

「やられてます。本隊も突入してくる模様です。プレート下げますよ」

「致し方あるまい」


 予定よりも早いが、第二段階に入る判断をくださねばならないムザであった。

次回『白む空見て(6)』 「愚かですよね」

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― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 教科書通り(?)ではなく裏をかかないと? (⋯⋯まぁドレが基本戦術か分かりませんがw)
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