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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
縁なき衆生は度し難し

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白む空見て(4)

 連合艦隊が時空間復帰(タッチダウン)したのはすぐにアデ・トブラ本星の知るところになる。この規模の同期復帰反応は軍事行動以外ではまず見られないからだ。


「システム、傭兵(ソルジャーズ)は見える?」

『おそらく、この位置にいるものと思われます』

 デヴォーが尋ねると回答がある。


 タッチダウンすればすぐに隠密行動に移行する。防御フィールドを張って内部にターナ(ミスト)を充填するのだ。それで電波レーダーには映らなくなる。

 ただし、艦隊規模となると、その向こうまで不自然に見えなくなるので位置の推定はできる。まばらに映る他の民間船がある一点から一直線に消えていれば、その起点に艦隊がいると艦載システムでも判断できる。


「リンクデータは合ってるみたいね。まだ気遣いくらいはする気あるのかしら」

「彼らだけでアデ・トブラ本星を攻めるほど豪胆ではないでしょう」

 副官も同意する。


 待つつもりもなさそうだ。そのまま一直線に本星の衛星軌道まで向かっている巡航速度である。


「やっこさん、一気に仕掛ける気か?」

 回線を繋げたマロ・バロッタ艦隊のラウネスト司令が訊いてくる。

「止められたくないんでしょ。一気に戦闘に持ち込む作戦ね。わたくしたちを巻き込むのに」

「迷惑千万な決断力だな。こんなのに付き合ってんのか?」

「あんなのでも連合艦隊の切り込み隊長なのよ」

 敵をよく崩してくれたのは認める。

「暴走隊長の間違いじゃね?」

「言い得て妙なのも本当」

「はぁ、部下まで付き合わせたくないねえ」


 ラウネストは指揮官ブースのアームレストに肘を突き、だらしなく上半身を預けながら言う。自称サボり癖のある指揮官だが、それは部下に無理をさせない裏返しなのだと思った。


「やんのかい?」

 判断を問ってくる。

「数的にはできなくもないところ。思わぬ敗退をした、攻め時なのかといえば確かにそう。でも、あまりに刹那的なのよね。連携が十分とは言いがたい」

「なるほど。んじゃ、こっちでフォローしてやるしかなさそうだ」

「お願いできる?」


 感触がいい。彼女の言わんところをすぐさま汲んでくれた。ルオーたちが推してくれたのも間違いではないらしい。攻略可能な気がしてきた。


「うちの部隊を前面に、メーザードを後詰にいくわ。機動展開をお任せしてもよろしい?」

 要するに自由にやってくれていいと告げる。

「いいのか? じゃあ、やらせてもらおう。リンク切らないでくれ」

「もちろん。お手並み拝見」

「期待に添えればいいけどよ」


 デヴォーはシステムにそのまま巡航速度での接近を指示した。


   ◇      ◇      ◇


「来るか」


 ムザは電波レーダーによる予想位置と、重力場レーダーの探知位置がほぼ合致しているのを確認した。シートを格納してアームドスキン『ゾフリータ』を起動させる。


「どこ? ガンゴスリの追い打ち? それだったら嬉しいけど」

 イルメアの声には喜色が混じる。

「どうでしょう? あいつの攻め口からして、こんなに雑に入ってくるとは思えないんですけど」

「所詮は雇われじゃない。あっちの司令官が行くって決めたらついてくるしかないでしょ?」

「いや、軍事コンサルだって広報されていたぞ。ナッシュの言うのも納得できる」


 カテゴリⅢの時空間復帰(タッチダウン)反応のあとにカテゴリⅣのタッチダウンがあった。前者が連合艦隊であれば、後者がガンゴスリ艦隊かとも考えられる。未だ判明はしていない。


(なんにせよ、ガンゴスリ艦隊がホーコラ星系を離れたのも確か。どこに向かったかはまだわからん)

 タイミングで航跡を追われるので直接タッチダウンしてくることはまずない。

(まだ再編成が整わないところを狙ったつもりだろうが地の利はこちらにある。簡単ではないぞ)


 アデ・トブラ本星の近傍である。彼らムザ隊の戦術に合わせたギミックも用意できる宙域なのだ。俄然有利なのは言うまでもない。


「偵察部隊の連中、なにのろのろしてんの。早く調べてきなさいよ」

 イルメアは情緒不安定になっている。

「落ち着け。誰が来ようがここで我らは負けはしない。本国の支援が充実しているのだからな」

「そうですよ。普通の会戦にしかなり得ません。以前のモンテゾルネの電撃戦みたいな失態は許しませんから」

「そうよね。向こうだってこんなに足が遅い」


 モンテゾルネ紛争時は小規模艦隊が急速接近して軌道艦隊を突破してしまった。それにはライジングサンも一役買っている。彼らの危険性を十分に認識した今なら同じ轍は踏まない。


「ダミープレートを大量に迎撃位置まで持って行かせる。敵はどれに我らがひそんでいるのか察知する術がない。前衛抜きでいくらでも狙えるぞ。我らが本領だ」


 特別編成された彼らスナイパー隊が直掩を受けずに攻撃できる態勢が整えられる。狙撃の槍衾の前に、崩れずに本隊までたどり着ける敵はいない。くぐり抜けてきても、組織的な攻撃ができない状態であれば本隊の餌食でしかない。


「早く早く」


 中継子機(リレーユニット)経由の命令信号で、自前で移動する無人のダミープレートにスナイパーランチャーを携えたスナイパー部隊が追随する。迎撃位置が決まったら設置する寸法だ。


「偵察部隊よりのレーザー受信。接近中の艦隊は傭兵(ソルジャーズ)のものです」

 リンクで伝えられる。

「連合ではないのか?」

「はい、ロゴが確認されました。増軍した模様とのこと」

「なんなのよ。つまんない」

「そう言うな。破れば出てくるしかなくなる」


 ムザは焦るイルメアを宥めた。

次回『白む空見て(5)』 「打算が働いてくれる方がありがたい」

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更新有り難うございます。 さて、思惑通りいきますかね?
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