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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
二度あることは三度ある
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見つめる先は(4)

 ルイン・ザのビームはチーム『ゼクセローネ』のアームドスキンの力場盾(リフレクタ)に真正面から衝撃して表面で弾ける。プラトーは足場を固めて構えていたので反動も逃がしていた。


「皮切りの狙撃はプラトーに耐えられてしまう! 止まっていた時間が動きはじめるのでしょうかー!」

 リングアナは衝突を煽る。


 思ったほど能動的ではないが、エシュメールの他のアームドスキンも行動を開始。リフレクタをずらして射線を開き、200mほど離れた相手にビームを撃ち込んだ。


「これに対し、ゼクセローネも応じます」

「読み合いの当てが外れてセオリーどおりの戦況になってしまいそうですな。ここからどう動くのか」

 解説者のロバートも明言を避ける。


 プラトーの足が動き正面の一機ずつ、シュナイクとペルセ・トネー、カシナトルドへとそれぞれ砲撃をする。残り二機がスナイパーに仕事させまいと放火を集中させる気配を見せる。


「じわりじわりと盤面が動きはじめます。果たして誰が描く盤面なのか」

「後の先ということでしょうかな。ゼクセローネが主導権を奪ったようにも見えます」


 明確な変化が見られたのはそのときだった。正確には変化の予兆だったかもしれない。ビームランチャーの筒先を突き出そうと動かしたリフレクタの端をビームがかすめて紫電を散らす。そのプラトーは動き出しを狙われたと覚って再び守りを固めた。


「出足をくじく一撃。正確さはさすがスナイパーというべきか?」

 なんの気なしにそう実況した。


 ところが、のちにそれが全てだったと知ることとなる。一機に集中しているかと考えたか、もう一機のプラトーが動かしかけたリフレクタの端もかすめていく。やはり動けない。


「見事な牽制となっております」

「当面は均衡を保ち、前衛の突破に賭けるのでしょうか? エシュメールにしては順当な選択をしましたな」


 マッチアップする三機は互いに近づき白兵戦に突入しそうだ。すでに力場刃(ブレード)を生み出し、斬り掛からんばかりの雰囲気である。


「緊張感に包まれていたアリーナも動きはじめた試合に興奮の度合いを上げていきます」

「…………」

 ロバートは目を細めて見入っている。


 アリーナの観客の声に応えるようにビームが走りブレードが打ち合わされる。状況は単純明快で、当初の不安が嘘のように実況しやすい戦局であった。


「ゼクセローネ優勢でしょうか、ロバートさん? シュナイクとペルセ・トネーはプラトーの素早い動きに翻弄されているかと思えますが」

「そうですな。しかし、地味だ」

「はい?」


 リングアナは解説者がなにを指してそう言い出したか理解していない。観客にもわかるよう説明を求める。


「どこに注目なされてるのですか?」

「ルイン・ザのビームの行き先を見てみてください。ほら、応射をしようとしたところに一撃し、今度は足を払いに行っているでしょう?」

「確かに。リフレクタを動かさざるを得ませんね」


 一機がリフレクタの端を叩かれて守りに入ると、もう一機の足元へビームが向かう。瞬時に、ほぼ反射神経だけでリフレクタをずらし防いだ。押されて体勢をわずかに崩す。それで前には出られないでいた。


「釘付けにしていますか。完璧な牽制砲撃に二機が捕まっている格好ですね」

「それだけなら連携で打ち崩す手段もなくはないのでしょうが」


 ルイン・ザはリフレクタを構えていないのだ。両手のビームランチャーを使って連射によるオーバーヒートを避けているだけで守りは皆無である。


「例のカウンターショットを見せるのでしょうか?」

「もう少し見ていてください」

 ビームの衝突によるプラズマボールを見た記憶はない。


 プラトーの一機の攻撃の気配にルイン・ザはビームで応じ抑え込もうとしている。すると連動したもう一機が射線を開いて一射を投じる。一遍に動かれると片方が抜ける。モスグリーンのアームドスキンは上半身を揺すってビームを紙一重で躱した。


「やはり、丸見えの状態で二機を完璧に抑えるのは無理ですか。もしかして両手を使わせてヒートゲージを消耗させようとしているのかもしれませんね?」

「それはルオー選手もわかっているのでしょうな。さっきからカウンターショットは用いず、機体を揺らせて回避しているのです。それなのに狙撃は正確無比。これが地味ですが非常に難しい」

 ようやく先の説明に答えがある。


 機体を動かせば自動的に射線もずれる。ルオー選手はそれを補正しつつ正確な狙撃をしているのだという。言われれば納得するが、教えられないとわからない。確かに地味な攻防だろう。


「そのうえで僚機の援護もしている。これはずいぶんと負荷の高い作戦を選んだものですな」

「エシュメールの前衛がトリプルエースチームの選手を向こうに崩れないのはそれが功を奏しているのですね」


 時折り援護砲撃も混じえている。主にシュナイクとペルセ・トネーの相手に向かうもので、それで均衡が保たれているのであった。


「しかし、この弾数ではいずれ崩れるときが来る。それはルオー選手が最も理解しているはずなのですがね」

「そうですね。ビームランチャーである以上、オーバーヒートには気が使えても消耗するのはそれだけではありません」


 弾液(リキッド)である。尽きればビームは放たれない。換装タイミングが必ずやってくるのだ。それが均衡の崩れる瞬間だと解説者は言っている。


 リングアナもそろそろではないかと感じていた。

次回『見つめる先は(5)』 「万事休すかぁー、ルオー選手!」

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