683.朝の寝室へ子供の突撃!
ヘンリック様と話しながら、抱き合って眠った。互いを守るように背へ腕を回して、温かくてとても幸せな気持ちになる。引きの甘かったカーテンの隙間から朝日が差し込んで、ちらちらと視界の端で踊った。そろそろ起きる時間ね。
「お母様!」
「レオン、ダメだよ。ノックしないと」
「にぃ、あたちも」
侍女より先に飛び込んだ三人……と言っても一人は止めようとしていたけれど。私とヘンリック様は、すごい勢いで離れた。突き飛ばすみたいになって申し訳ないわ。枕の脇に畳んだショールを羽織り、ひとまず身を起こす。整えていない髪を手で押さえる。
「失礼いたします。申し訳ございません、お止めするのが間に合いませんでした」
リリーが眉尻を下げて、失敗したと顔に表す。レオンはとてとて走って、ベッドに飛びつく。そのままよじ登ってきた。後ろのラルフが「もう!」と言いながら靴を脱がせる。何かしら、この既視感。ああ、うちのエルヴィンや双子のやり取りに似ているんだわ。
「……っ、おはよう」
困惑した様子のヘンリック様は、まず挨拶からスタート。育ちの良さが滲んでいるわ。これが実家のシュミット伯爵家だったら、私の「こらっ!」が炸裂したと思う。お上品な公爵夫人モード発動で、ぐっと呑み込んだ。
「いいのよ。着替えの支度をお願い」
身支度のためのタオルが運ばれた。いつもはお湯の入った洗面ボウルだけれど、子供達がいるから時間短縮ね。廊下でタオルを絞ってもらい、それで顔などを拭う。それぞれの私室へ向かうので分かれると、子供達が困惑した顔で左右をきょろきょろと見た。
ローズはヘンリック様についていこうとして、レオンは私に……でもラルフは困って立ち止まる。まだ六歳なのに紳士的なのね。扉の手前で屈み、レオンにお願いした。
「ラルフと一緒にこのお部屋で待っていて。小さな騎士様は淑女の着替えを待てるかしら?」
「ぼく、できる!」
はいっと手を挙げて同意するレオンの黒髪を撫でて、ラルフと一緒に残した。リリーの手を借りて着替え、戻った部屋では……ローズが大泣きしている。
「どうしたの?」
「あんね、ろじぃ……お父様のとこで、ころんだの」
レオンの必死の説明によれば、部屋で転んだ……? それがなぜ夫婦の寝室で大泣きする事態なのかしらね。首を傾げた私に、ラルフが説明を足してくれた。
「ローズ嬢がご当主様の部屋から出てきたところで、手をつかずに転びました。痛かったようで泣いてしまい、レオンが慰めていたのですが」
ラルフったら、そんな他人行儀な呼び方をしているの? 今度、呼び方を変えてあげましょうね。
「あら。ヘンリック様はどちらに?」
慰める人が足りないわ。こてりと首を傾げたところに、寝ぼけた医者を引っ張るヘンリック様が戻ってきた。なるほど、お医者様を連れに行ったのね? 屋敷の敷地内で暮らす専属医師はご老人なのに、無理をさせてはダメよ。




