665.次のお茶会も盛り上がりそう
串の先を不思議そうに見ていたら、リリーが耳打ちした。事情を知っているみたい。串に料理を刺した後、尖った部分の処理をしたのね。ラルフを筆頭に幼子ばかりの我が家の事情から、口に刺さったら大変だと気を利かせてくれた。
料理を突き刺した際に通過させて、先端を切り落とす。それから容器の中に並べ直したんですって。驚いて感心する。料理長に後でお礼を言わなくてはいけないわ。
似た疑問を口にするベッティーナ夫人に説明し、なるほどと頷き合う。導入する際の参考になるわ。
食べ終えた串を丁寧に並べるのはルイーゼ様だった。一本ずつ横に置いて満足そう。それを見てレオンが真似し、ローズも丁寧に並べ始めた。斜めになって唇を尖らせるけれど、ヘンリック様の手伝いを断って並べ終わる。
「ろじぃ、じょうずだね」
レオンが褒めたことで、ローズは満面の笑みではにかんだ。それを見てルイーゼ様が「あたしも!」と訴える。以前はローズのように「あたち」だったのに、言葉が綺麗になったわ。発音の練習をなさったのかしら? そう伝えて褒めると、ルイーゼ様は首を竦めて擽ったそうな顔をした。
「ケンプフェルト公爵夫人は、その……子供への接し方が丁寧ですのね」
フィーネ様が積極的に会話に参加する。緊張が見えるのは、私の肩書きのせいでしょう。筆頭公爵家の女主人、と表現したら偉そうにみえるもの。
「そうですね、可愛い子供達は私の天使ですの。呼び方はアマーリアで構いませんわ。フィーネ様とお呼びしますわね」
微笑んで距離感を伝える。マルレーネ様が「アマーリア夫人」と呼んで親しくする仲なら、義娘のフィーネ様も同様よ。フィーネ様の表情がふわりと明るくなった。ユーリア様やパウリーネ様とも親しくなれたら気が楽だと思うの。
ああ、ちょうどいいわ。我が家で行うお茶会に、フィーネ様もご招待しましょう。ぽんと手を叩いて提案した。
「ああ、それはいい。アマーリアが紹介するのが一番だ」
「あら。私達も招待してほしいわ」
ヘンリック様の同意が取れたところへ、マルレーネ様が口を挟む。今の流れでは、ベッティーナ夫人のことでしょうね。もちろん、お呼びする方のリストに入っています。
大人が次の予定で盛り上がる中、子供達は串の本数を競っていた。
「あたちの!」
「あたしのが多いわ」
ローズとルイーゼ様が串を見せ合っている。その隣でレオンが自分の串を指を使って数えた。ラルフに「いつつ?」と尋ね「六本です」と訂正される。もう一度数え直して、レオンが笑った。ちなみに、ローズは四本、ルイーゼ様も四本なの。
「一番多いのは、ラルフね。体が大きいからたくさん食べられるのよ」
そう伝えたら、ローズが「じゅるい!」と声を上げた。その発言がおかしかったのか、カールハインツ様が笑い出した。ローレンツ様がこっそり自分の串を数えて「八本」と嬉しそうに頬を緩めていたのが、微笑ましい。
「さあ、串はこの中に入れて頂戴」
お願いして、子供達に串を回収してもらった。




