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【書籍重版】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
第五章

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643.線引きが一番難しいわ

 ヘンリック様はまだ口を付けていないレーズンパンを割り、ランドルフに差し出す。小声でお礼を言った彼は一口食べ、口元が綻んだ。これはチーズやナッツより気に入ったのかも。


 レオンがナッツ、ランドルフはレーズン、ローズは何かしら? ヘンリック様もレオンやランドルフに分けてもらい、味を試していた。私はチーズが好きなの。ベーコンが入っていてもいいわね。


「あたちも!」


 手を伸ばしたローズに、レオンがナッツのパンを与える。小さな口に入るよう、千切る気遣いが素晴らしいわ。一口で頬張り、もぐもぐとローズの口が動いた。続いて、身を乗り出したランドルフからチーズのパン。これまた小さいので、一口で食べる。


 三種類のパンは好評で、しばらく朝食にも出すことに決まった。たくさん焼いても、単独で美味しく食べられるから問題ないわ。使用人達にも遠慮しないよう伝えておきましょう。


 レーズンは高価な品だけれど、チーズやナッツは簡単に手に入る。真似して実家で焼いてもいいと思うわ。そんな話をしたら、ベルントに止められた。主家で身に付けた所作や作法は持ち帰れるが、物やアイディアはダメなんですって。


 主人が私物を与える際は、盗まれたものではないと証明するカードを一緒に渡す。それほど徹底された。カードは名刺くらいの大きさらしい。きちんと線引きしないと、持ち出し自由になってしまいますと言われて納得した。


 アイディアに関しても、主家で商売にする可能性がある。勝手に持ち出せば罰せられる。あれに似ているわね。仕事先での情報はネットにアップしない、という決まり事。ふと思い出して置き換え、自分の中で理解した。曖昧な理解だとまたやらかすわ。


「助かるわ、ベルント」


 執事は家令と違い屋敷を離れることもあるため、ヘンリック様の秘書に近い立ち位置だった。そのため、こういった休憩時も控えていることが多いの。


 シュミット伯爵家に女主人である母がいなくて、貴族夫人としての振る舞いや作法を教わっていない。お父様が知っているわけもなく、私も何となくで動いてしまう。こうして教えてもらえて助かるわ。素直にお礼を伝え、食べ終えた子供達を見回した。


「アナは? 食べた?」


 レオンが首を傾げるから、頷いて付け加える。


「ええ、お部屋で食べるそうよ。オイゲンが来るの」


「おい、げん!」


 レオンがきらきらと目を輝かせるのを見て、失敗したわと苦笑いが浮かんだ。恋人達の逢瀬を邪魔することになりそう。何か他のことに気を逸らして、帰りにばったり……が理想ね。考える私はすぐにヘンリック様に助けを求めた。


「あなた、何をしたらいいと思います?」


「湖へ散歩はどうかな? ……リア」


 真っ赤になった顔で、頑張って呼んでくれた夫に満面の笑みで応えた。

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― 新着の感想 ―
ベルントのお好みはレーズンパン? 昼間のあるじ夫妻の様子を思い出し「あま~い」と言ったとか、言わなかったとか(笑)
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