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【書籍重版】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
第五章

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636.その手をどこで拭くつもり?

 夜になってもユリアーナの熱は下がらず、夕食は侍女に任せた。私が顔を見せたら、あの子は遠慮したのよ。レオンやローズがいるから、一緒にご飯を食べてあげて。その一言に成長を感じると同時に、寂しい思いをさせることへの悔しさが生まれる。


 この体がたくさんあったら、ユリアーナの看病をして、ヘンリック様と話し合いも出来て、子供達と向き合える。もちろん無理なのよ。だから優先順位を付けて対応するんだもの。わかっていても、感情は別だった。


 家族での食事を優先したのは、眠る前にユリアーナの看病をするつもりだから。医者は明日もう一度診察してくれるよう手配をした。


「あにゃ……痛い?」


 夕食の途中で、レオンがぽつりと零した。その不安そうな声に、明るい声で答える。


「風邪を引いて、お熱があるのよ」


 なんでもないわ、すぐに治る。そう聞こえるように振る舞った。実際、風邪なのだから嘘ではないの。ただ明日治るかは不明なだけ。熱に心当たりがある顔で眉尻を下げたのは、ランドルフだった。レオンは発熱したことがあっても、年齢的に覚えていないでしょうね。


 ローズはヘンリック様のお膝で、ぷいっと横を向いている。何か嫌いな物でも出されたのかしらね。


「早く熱がさがるといいな」


 ランドルフの言葉はお見舞いの意味ね。伝えておくと話したら、なぜか照れて赤くなった。恥ずかしいのかも。


「いやっ!」


 大きなローズの声に、場の雰囲気が変わる。注目されるローズは、手に掴んだ肉を口に放り込んだ。困り顔のヘンリック様のフォークには、何も刺さっていない。


「ヘンリック様?」


「あ、ああ。その……フォークで食べさせていたら嫌だと騒いで、肉を手で……」


 掴んで口に入れた? 見ていなかったのが惜しいわ。ふふっと笑いが漏れた。悪いことなのに、叱るより笑ってしまう。ヘンリック様のフォークもそうだけれど、ローズは自分でもスプーンを握っているのよ? 左手のスプーンをそのままに、右手で掴んで食べる……写真に残したいくらいよ。


 この世界に写真や動画撮影の技術がないのは、残念だわ。ガラスボタンの技術から判断して、あと百年はかかりそう。それも動かずに三十分ほど待つタイプだから、一瞬を捉えるのは無理。


 食べ終えたローズは満足げに、汚れた手を……っ!


「誰か、手を拭いて!」


 ヘンリック様は無理だと思ったから、侍女か侍従に頼むつもりで叫んだ。あの子、手を服で拭こうとしているわ。手にしたフォークをテーブルに投げ出したヘンリック様は、さっとローズの手首を押さえた。嫌だと仰け反って騒ぐローズの指を、駆けつけた侍女が拭う。


 立ち上がりかけた中途半端な姿勢の私は、ほっとして腰を下ろした。目を見開いたレオンは、ローズをじっと見ている。


「ローズはご機嫌斜めみたいね」


「……まっちぐ、したら、いいのに」


 真っすぐ? 可愛いレオンの発言に、そうねと同意しながら食事を終えた。

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