614.冬の終わりに夏の相談を
どこへどのくらいの期間か。その辺の詳細をお伺いして、楽しくお茶を飲んで雑談に興じる。途中でローズが大泣きして飛び込んだので、そこでお開きとした。お絵描きして遊んでいると思ったのに、マーサを振り切って走ってきたの。
途中で転んだみたい。擦りむいたのは鼻の先と手のひら。ちゃんと手をついて転んだけれど、鼻もぶつけたのね。鼻が低くない証拠よ、と笑って薬を塗った。その後はご機嫌で遊んでいたわ。ローズが赤子の頃に使ったベビーベッドは、レオンのおさがりなの。今はおさがり二度目として、ディが使っている。
ディはようやく頭に毛がちょろりと生えて……癖毛なのかしら? トルネード状の尖がった髪型に笑ってしまったわ。金髪系だけれど、私達と同じくすんだ色になりそう。
ヘンリック様が戻ってから、お父様とエルヴィンも交えてお泊りの相談をした。フランクが同席し、高位貴族としての一般常識を語る。その内容も含めて検討した結果、ユリアンに予定を尋ねる方向で固まった。
お父様がついていくのは、なんとなく……オイゲンを信用していないように見えるでしょう? 一応まだ伯爵なのだし。実際の領地経営を手伝うエルヴィンも、長期の休みは難しいと首を横に振った。オスヴィンさんが管理人として派遣されているけれど、手伝いとはいえ責任ある立場だものね。
消去法でユリアンが浮上した。彼に手紙を書いて、返事を待つことになる。ティール侯爵家に、その旨を伝える手紙はお父様が書くことにした。夏の休暇はまだ何か月も先で、すぐ決めなくても間に合うわ。
ようやく春の兆しが見える季節だから、返事も急ぎではない。
「避暑か……」
ヘンリック様が呟く声に期待が滲む。申し訳ないけれど、無理よ?
「ディが二歳くらいになるまで、難しいわね」
先手を打って、希望を消しておく。行きたいと言い出してから中止させるのは、がっかりさせてしまう。事前に無理よと伝えるのが大事ね。それでも肩を落としたヘンリック様の様子に、つい助け舟を出してしまった。
「休みを取って、温室に泊まるのはどうかしら?」
「温室に……」
お父様も興味深そうにしているので、前世のキャンプの知識を披露した。温室の中で火を燃やすと煙が大変だから、屋外で焼き肉をするの。野営みたいな感じね。寝るのは温室内、以前使ったベッドソファーを大きくしてもいいし、テントを張っても楽しそう。
「楽しそうだな」
お父様が乗り気なので、お誘いしてみた。もちろんエルヴィンも一緒よ。レオンやランドルフには、もう少し具体的になったら話しましょうね。冬でもすぐやる、と言いだしそうなんだもの。




