601.悪いのは俺だろうな ***SIDEヘンリック
あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!!_( _*´ ꒳ `*)_
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玄関で馬から飛び降り、慌てて手綱を掴む侍従が口を開くより早く。玄関扉を自ら開いた。固まるフランクに「アマーリアは?」と尋ねるも、驚きすぎて動けない様子。仕方ないので放置して奥へ進んだ。
通常は居住区域を二階に置くのが、貴族の屋敷だ。しかしこの屋敷では部屋が余るほど広いことも手伝い、アマーリアの意見で一階に私的スペースが並ぶ。子供達が階段を上り下りすることは危険であり、安全面を優先した結果だ。
夫婦の寝室も一階にあり、その扉に手をかけて開いた。やや乱暴だったが、上質な建具は文句も言わずに堪える。
「旦那様!」
侍女長イルゼの声に頷くも、視線はベッドの上に固定された。投げ出された腕はいつもより白く見えるし、倒れて横にしたせいか編んでいない金髪が散らかっている。駆け寄って膝をつき、アマーリアの顔色を確認する。やや赤い。発熱だろうか。
「ヘン、リック……様?」
「ああ。大丈夫か、アマーリアが倒れたと聞いて……」
急いで駆けつけたと続ける予定だったが、イルゼが噴き出した。後ろの侍女達も複雑そうな顔をしているから、笑うのを耐えているようだ。なぜ?
「あの……腰が抜けて、その……立てなかったのです。騒ぎが大きくて、申し訳ありません」
困ったような顔で告げるアマーリアをじっくり見て、周囲の緊迫感のない様子を確かめ、安堵の息が抜けた。体中の力を道連れにしたようで、崩れるように絨毯に座り込む。
「旦那様、椅子をどうぞ」
イルゼに勧められ、このままではアマーリアの顔が見えないと起き上がる。椅子に浅く腰かけた俺の膝に、小さな手が触れた。
「おと、たま? おひじゃ」
膝に乗りたいと叩くローズを抱き上げ、膝に座らせる。よく見れば、ベッドの向こう側にレオンとランドルフもいた。全然視界に入らなかったぞ。踏んだり蹴ったりしなくてよかった。うっかりぶつかったら、あの勢いではケガをさせたかもしれん。
膝の上のローズはもぞもぞと落ち着きなく、いきなり腹を蹴飛ばした。
「ぐっ……」
「おかぁ、しゃま!」
悲しいが、俺の膝が目当てではなかったようだ。アマーリアのいるベッドへ乗るのに、ちょうどいい足場だったのだろう。父親の愛情はなかなか届かないものらしい。普段から一緒にいるうえ、母親は子供にとって特別な存在だと聞いている。仕方ないが、少しばかり辛い。
「お父様、お母様は……へぇきです」
「そうだな、ありがとう。レオン」
励ますように掛けられた息子の声にお礼を言い、事情をよく聞いた。倒れた時の話と、車椅子で移動したことも。やはりあれか、昨夜張り切りすぎたのが原因だ。申し訳ないと頭を下げるのは、アマーリアではなく俺のほうだ。
だが、謝罪を口にする前に「子供達の前なので」と止められてしまった。今夜中に謝れるだろうか。レオンもローズも……たぶんランドルフも、アマーリアのそばを離れない気がした。




