581.功労者は自覚がないのよ ***SIDE 王太后
非常に残念な知らせが入り、肩を落とす。ぽんと手を置くお母様は、仕方ないわよと眼差しで語る。分かっているので頷いたけれど、会いたかったわ。
王太后の地位は、長男カールハインツの治世を支えるのに必要よ。外交で成果を出した私が後ろで睨みを利かせるから、他国の使者も大人しく息子を敬う。国内の采配を担当したケンプフェルト公爵が尊重するから、国内貴族もカールハインツを王として認めた。
血筋だけなら、他の公爵家も引き継いでいる。それでも王位継承争いが起きなかったのは、アマーリアの存在が大きかったと思うの。ケンプフェルト公爵は面倒だからと一歩引いて眺めるだけでしょう。でもバルシュミューデ公爵家には、カールハインツと年齢が近い息子がいた。
出来がいいと評判のローラントが名乗りを上げれば、ややこしいことになったわ。もちろん、王家には二人の王子がいるのだから、簡単に座を明け渡したりしないけれど。国内貴族を味方につけようとしたら、公爵夫人ユーリアの社交界での勢力は馬鹿に出来なかった。
何も言わず、二つの公爵家は王家の譲位を見守った。その理由が、アマーリアに軽蔑されたくないから……だなんて。誰が想像できるかしら? 私だって、社交界での影響力を誇る二人の公爵夫人と話すまで知らなかった。
この国が安定しているのは、ケンプフェルト公爵夫人アマーリアのお陰よ。彼女が治世の要である夫を支え、他の夫人を懐柔した。本人に自覚がないのが、信じられないくらい。
私にとって大切な友人であるアマーリア夫人は、継子レオンを可愛がった。実の子が生まれたら変わるのでは? そう心配したけれど、まったく変わらない愛情を注ぐ。いえ、もしかしたら実の娘ローザリンデより大切にしているかも。
なかなか王宮を出られないから、今日のお茶会を本当に楽しみにしていたのよ。がっかりするくらい許してほしいわ。
「お茶会の変更がありました。ケンプフェルト公爵付き添いで、小公爵様、バルシュミューデ公爵令息がご一緒なさるそうです」
「……まあ!」
母の言葉に、目を見開いた。あの仕事人間だった公爵が、息子達を連れてお茶会に? アマーリア夫人が同行しないのに……。
「ベッティーナ夫人、それは……本当なの?」
「はい、公爵家の執事が自ら口にいたしました」
先ほど席を外していたときね? 驚いたけれど、アマーリア夫人が自分では口にしない話を聞けるかもしれないわ。ヘンリック殿も、アマーリアが大好きだから。どうやって、何を聞き出そうかしらね。楽しみになってきたわ。
「ルイーゼ、お茶会に行きましょうね」
「はい!」
だいぶ滑舌が良くなった娘の髪を撫で、温室のお茶会の最終確認をした。問題なさそうだから、向かいましょうか。母と娘、今日は息子二人は忙しくて同席しない。ドレスの裾を捌いて立ち上がり、笑顔のルイーゼと手を繋いだ。




