580.父親として認められた ***SIDE公爵
こういう時は頼ってくれていい。そう言うまでに、内心の葛藤があった。俺が申し出れば断らないだろうが、彼女はそこまで俺を信じているだろうか。もしかしたら昔のまま、子育ての役に立たない男と思われていたら……。
笑顔で請け合えば、ほっとした様子で頷いてくれた。安心したのは俺のほうだ。嬉しいのも、泣きたい気持ちになったのも。アマーリアは俺を「父親」として認めている。それはレオン達も同じようで、にこにこと膝に座る息子を撫でた。遠慮しているランドルフも一緒だ。
ランドルフは「側近候補で預かってもらっている」と遠慮する。この感情は非常にわかりやすかった。子供の頃、王宮で育った俺も同じだからな。大人にどこまで頼っていいか、全く知らなかった。体調が悪くても我慢し、倒れて大騒ぎになったこともある。
あの頃の俺とランドルフは似ているから、助けの手を差し伸べやすい。そして真逆に育ったレオンは、きっと……まともな両親に育てられた場合の俺だろう。愛情を信じて頼り、素直に甘えられる。でも我慢してしまう部分もあり、時々大人びた顔で諦めようとした。
アマーリアが、ローズよりレオンを優先するのもわかる。レオンは甘え方が下手なのだろう。ローズは全身でぶつかるが、レオンは直前で速度を落とすタイプらしい。
ルイーゼ姫との今後はどう変化するかわからない。婚約まで進む可能性もあるし、ただの幼馴染みや姉弟のような関係で終わるかもしれない。どちらにしても、レオンにとって大切な存在になるはずだ。本人が会いたいと素直に口にするなら、叶えてやるのが親の役割だ。
「レオン、ランドルフ。手を繋いでいこう」
「うん!」
「はい」
二人と手を繋いで立ち上がれば、ベルントがちょうど戻って来るところだった。執務室へ休みの申請を行い、侍女を通じて王太后様へ連絡をする。頷く彼に小さく頷き返し、立ち上がった。
「お願いするわ。ローズを連れて先に戻ります」
さきほどまで走り回っていたのに、もう顔や首が真っ赤だった。ワンピースから覗く足首や手も赤く、熱が出ているようだ。可哀想に思うが、こういう時……本当に父親は役に立たない。いや、他家の父親は看病するのか? 後で部下に聞いてみよう。
多少なり看病の手助けになれば、徹夜も慣れているし。不慣れな俺でもいないよりマシだろう。ローズを抱いたアマーリアと分かれ、温室までの廊下を歩く。アマーリアの教えたスキップという走り方をせず、レオンは何度も後ろを振り返った。
「ろじぃ、いたいの?」
「……そう、だな。温室にある果物を贈るのはどうだ? 王宮の温室でも、屋敷の温室でもいい。レオンが見つけた果物なら、ローズも喜ぶ」
きょとんとした顔のレオンより先に、ランドルフが声を上げた。
「レオン、一緒に探そう!」
「うん」
泥だらけになった場合の着替えは……あったか? まあ、馬車が汚れる程度は構わないが、叱られでもしたら可哀想だ。確認しておこう。




