49-1.(ランドルフ)戻る約束と待つ約束
久しぶりに実家に帰る。ケンプフェルト公爵邸が居心地よくて、あまり帰りたいと思わなかった。でも実際に帰ると決まったら、指折り数える俺がいる。レオンには言えないけどな。
「かぇ、たうの?」
「ああ、すぐに戻って来るよ」
「ほんとぉ?」
不安そうに聞き返す。すぐに帰るって言ったほうがよかったかな。言い直そうか迷っていたら、公爵夫人が間に入った。
「レオン、ランドルフを困らせてはダメよ。戻ってくると約束したんだから、レオンは待ってる約束をしなくちゃ」
「やくしょく……! ぼく、できゆ」
舌たらずが直らないレオンは、勢いよく頷いた。駆け寄った公爵夫人に抱き上げてもらい、すごく嬉しそうだ。というか、公爵夫人凄いよな。見た目は細いのに、力が強いんだよ。レオンを抱いて過ごしても落とさないんだぜ?
「らるふ……いったっしゃい」
「……出かけるの、明後日だぞ」
今から行ってらっしゃいと言われても……苦笑いしてレオンに手を振り返す。元気よく手を振るレオンは満足したのか。公爵夫人が下すと走ってきた。俺の腹に抱き着いて、遊ぼうと誘う。今の行ってらっしゃいは、何だったんだか。
「おにぁ!」
お庭に行こうと手を引くから、予定を思い浮かべる。お昼寝も終わってるし、夕食まですることはなかったはず。勉強などの予定を管理するのは、側近の仕事だから。今のうちから慣れておけば、大人になっても困らない。これはローレンツ様に聞いたんだ。
兄君が国王陛下になって、ローレンツ様はいろいろ考えたらしい。先日のお茶会で聞いた。騎士になる未来はやめて、国王陛下の側近になるとか。兄弟が側近なら意思の疎通が楽だよな。俺もそう思ったから兄上の補佐をするつもりだった。でもさ、婚約者がヴェンデルガルト嬢だぜ?
すごく勉強ができるし、他国の言葉もぺらぺら話す才女らしい。俺がいなくても補佐役は足りてる。だったらレオン様を支えたいと思った。可愛くて、無邪気で真っすぐ。絶対に誰かに騙されそうな気がするから、俺が目を光らせてやらないと。
母上に相談したときも「素敵な夢だと思うわ」と応援してくれた。そうだ、母上に何か土産を持っていこう!
「レオン、明日はお菓子を焼こう。母上への土産にしたいから、手伝ってくれよ」
「みや、げ? うん! やる!!」
庭の芝生に座ったレオンは、ごろんと寝転んでしまう。ああ、こりゃ芝がついて大変だ。そう思うのに、楽しそうで咎める気が起きない。ちょっとだけ……言い訳しながら俺も寝転んだ。意外とチクチクするし、そんないいもんじゃない。でも見上げた空は綺麗だった。
「レオン、ランドルフ……あらあら寝転がったの?」
公爵夫人が呼びに来るってのも変だけど、隣に座っちゃうのもおかしい。まあ、ケンプフェルト公爵邸では当たり前の光景で、それが心地よいのも事実で。俺もこの家にしっかり染まってるんだなと思った。




