46.(エルヴィン)頼りがいのある大人に
姉上に頼りたくない。話したら、義兄上も助けてくれるだろうけれど……。頑張ってきたのに、僕はここまでなのか? 困った顔をした父上は、姉上に話したみたいだった。
「バレないと思ったの? 馬鹿ね、子供なんだから大人を頼りなさい」
駆け付けた姉上はそう言って、困った子ねと笑った。僕は頼っていいのかな。迷惑なんじゃないか。いつも顔色を窺ってしまう。姉上はすごく苦労してきた。ケンプフェルト公爵家に嫁いだのも、僕達のためだろう? それなのに……義兄上を変えてしまったんだから凄い。
母上の代わりに僕達を育てた姉上は、今度はレオン様を育てている。考えてみたら、僕の知る姉上はいつも子育てをしていた。ローズも生まれて、忙しいはず。
「聞いているの? エルヴィン。今回の件はケンプフェルト公爵家が介入します。いいわね? 未来のシュミット伯爵様」
ふふっと笑い、姉上は僕から面倒な案件を取り上げた。大事にされているし、愛されているのは知っている。だけど……情けないな。僕にはまだ姉上を守る力が足りなかった。
姉上の発案で始まったガラスボタンは、シュミット伯爵領でも生産が始まった。そこで起きた騒動が、他領からの介入だった。製造方法を盗もうとしたり、脅して事業を奪おうとしたり、仕入れ材料を運ぶ荷馬車を妨害したり。
「公爵家相手にはやらない愚行だが、若い伯爵なら黙ると思われた。やり返してやれ」
義兄上はそう言って、協力してくれた。父上も出来る限りの協力を申し出る。書類の作成を手伝い、国に訴え出る形で決着させた。これはすごく大きな経験になったんだ。
「よく頑張ったな」
書類の作り方を丁寧に説明してくれた。でも直接手を出したり、公爵家の権力を使ったりしない。あくまでも僕が自力で結果を手にできるよう、義兄上はサポートに回ったんだ。姉上に至っては、社交界の華であるバルシュミューデ公爵夫人達が動こうとするのを、止めたらしい。
僕が自分の力で成し遂げるまで、見守ってほしいと伝えて。きっと手を出したら一瞬だったのに、成長するチャンスを貰った。
「エル、いじめ、らいたの?」
大人の言葉を聞き齧って使うレオン様が、こてりと首を傾げる。これは意味を知らずに使ってるな。そう判断して「違うよ、意見が食い違っただけだ」と説明した。食い違うが、食べ物を間違ったと認識したようで、思いがけない返事が返って来る。
「ぼく、かえちて、もらう!」
返してくれるよう話してくるね。そんな甥が可愛くて、ぎゅっと抱きしめた。嬉しそうにしがみつくレオン様は、きっと立派な公爵閣下になるだろう。そのとき、僕は経験者として支えたい。レオン様が困ったら頼ってくれるよう、立派な叔父になろう。
「頑張るから、僕を頼ってほしい。レオン様」
「……? うん」
今はわからなくていいけど、本当に頼ってくれよ? その頃にはもっと頼りがいのある男になってるから、絶対だぞ!?




