45-2.(ローズ)なんだ、可愛いじゃない
あまり近づかないでいたら、レオンお兄ちゃまが誘いにきた。毎日、弟を見に行っているんですって。あたちは興味ないけど……お兄ちゃまと手を繋ぐのは好き。廊下をとてとて進んだ先、弟がいる部屋に入る。入口でじぃじが立っていた。
「二人とも、飴はどうかな? ディルクの分はないから、内緒だぞ」
「うん!」
お兄ちゃまが受け取って、あたちにくれる。
「あぃがと!」
じぃじにぺこりと頭を下げ、お兄ちゃまが食べるのを待ってから私も口に入れる。甘くて美味しい。あたちとお兄ちゃまだけ食べたから、余計に美味しいのかも。小さな飴をころころ転がして、じぃじに手を振った。じぃじはもう弟の顔を見てきたらしいわ。
あたちは、ルゥ姉ちゃまが教えてくれた”ちゅくじょ”になるの。だから気に入らないことも我慢して、大人の振りができるんだから。お兄ちゃまと入った部屋で、お母ちゃまが弟を抱っこしていた。気に入らない。尖った唇を、そっと手で戻した。”ちゅくじょ”らしくしないとね。
お母ちゃまやアニャ姉ちゃまのような素敵な”ちゅくじょ”になりたいわ。
「お母ちゃま、僕がでぃ、見てるから……ろじぃ、抱っこして」
お兄ちゃまの言葉に、お母ちゃまは「まぁ」と目を丸くした。それから微笑んで、マーサに弟を渡す。両手を広げて、あたちを呼んだ。
「おいで、ローズ」
「にぃ、しゃき」
お兄ちゃまが先よ。くすくす笑いながら、お母ちゃまは膝をついた。レオンお兄ちゃまとあたち、両方を抱き寄せる。大きくて温かくて、いつもいい匂いがする。お母ちゃまが大好きよ。次にお兄ちゃまが好き! ぎゅっとしがみついた。お母ちゃまの腕の中で、お兄ちゃまと目が合う。あたちはお兄ちゃまを、お兄ちゃまはあたちを見ていた。
にこっと笑えば、お兄ちゃまも嬉しそう。気分が良くなったから、ちょっとくらい……弟に会ってあげてもいいわ。あたちは”ちゅくじょ”になるんだもの。優しくしないとね。
たっぷり甘えてから、リリーがお母ちゃまのベッドに乗せてくれた。隣にお兄ちゃまも来て、並んでベッドの中を覗く。お母ちゃまのベッドの隣に置かれたベビーベッドは、マーサが下した弟が寝転がっていた。大きな目はお母ちゃまに似たの? 口のところはお父ちゃまに似ているかも。
くしゃくしゃで赤かった顔は、ちゃんと顔になっていた。猫でもなくて、人みたいな感じ。お父ちゃまにもお母ちゃまにも似てて、よく見たら、耳の形はお父ちゃまやお兄ちゃまにそっくり。お兄ちゃまが手を入れて撫でたら、きゃぁと笑った。……笑った、のよね?
興味が出てきて、あたちも手を伸ばした。すっごい小さい手が、握ったり開いたりする。つんつんしたら、あたちの指を掴んだ。小指の爪がちょっと尖ってて、これ、あたちと同じだわ。自分の手を見て、もう一度弟の手を見る。やっぱり同じ。
「ろじぃと、同じ! 可愛いねぇ」
お兄ちゃまがそう言った途端、可愛く思えてきた。そっか、あたちと同じだから可愛いのね。名前は……ディだっけ。
「でぃ、あたち、おねぇ、ちゃま」
あぶぅ……返事をした! なんだ、ちゃんと可愛い。歩けるようになったら、お庭へ連れて行ってあげるわ。綺麗なお花の咲いている場所を教えて、芝のお庭で転がるの。うん、お兄ちゃまがしてくれたみたいに、あたちがディと遊んであげる! 早く大きくなってね。




