44-2.(フィーネ)私なりの決意と幸せ
王太子殿下と婚約して結婚し、王太子妃になる。それから先代陛下の退位があって、王妃になるのが一般的なルートだった。私の場合は、少しばかり途中が抜けている。婚約するカールハインツ様が、王太子殿下ではなく国王陛下なの。
婚約した時点で、王太子妃殿下になる未来は消えた。代わりに、いきなり王妃殿下の道が待っている。怖いと思うのは当然だわ。だって、重責を担う覚悟が足りないと思うから。
母君である王太后陛下にお会いするのも怖かった。優しく美しい人と聞いているし、遠目に拝見したことはある。でも、国王になったご子息が「この女性と結婚します」と連れてくるのよ? 男女逆だけれど、うちのお父様だったら、剣を抜いて追い回すわ。
不安で青ざめた私を見るなり、王太后陛下は着座を勧めた。顔色が気になったと後から教えてもらったけれど、その隣にはカールハインツ様の祖母に当たるフェアリーガー前侯爵夫人まで。本当によく倒れなかったわ。
「ごめんなさいね」
謝罪から始まったため、泣きたくなった。やっぱり私で力不足だったのね。俯きそうになったところで、王太后陛下は頭を下げた。
「あの子……カールがどうしてもあなたと結婚したいと譲らなくて。無理を言ったのではない? 気負わないのは無理でしょうけれど、深刻に考えなくていいの」
どちらの意味? 結婚を認めてくださるのか、ダメなのか。お断りして去りなさいと告げられたら、どうしよう。混乱している私に、王太后陛下は微笑んだ。
「まだ若いんですもの。足りない部分があって当たり前。すべて私が補佐するわ。カールの恋を叶えてくださる?」
「……は、はい」
「得意なこと、好きなことを教えて頂戴。もちろん、絶対にやりたくない仕事や苦手な食べ物も、ね。家族になるのを、本当に楽しみにしているの」
両手のひらを合わせるようにして、嬉しそうに語る王太后陛下の姿に肩の力が抜けた。今度は、安心しすぎて倒れそう。お二人のことを名前で呼ぶ許可を頂き、もちろん私もフィーネと呼んでいただくことになった。
嫁姑の関係を心配しないでいいと、マルレーネ陛下は笑う。
「王太后なんて、外交担当大臣なの。立派な名称がついたけれど、私は私よ。フィーネもフィーネのまま。何も変える必要はないわ。足りなければ加えるだけ」
差し引く必要はないのだと、その言葉は胸に響いた。今の私のまま、必要なことだけ増やしていく。マルレーネ陛下やベッティーナ夫人が支えてくれるのなら、頑張れるかもしれない。
「安心して、まだ数十年は世に憚るつもり。外国語を覚えるのは最後でいいわ。私の仕事がなくなってしまうもの」
からからと明るく笑うマルレーネ陛下に、ベッティーナ夫人が「なんとも落ち着きのない子ね」と溜め息を吐く。叱るような言葉なのに、声も表情も柔らかくて。家族のちょっとした会話に加えて頂いた感じがした。
「私、頑張ります。カールハインツ様と幸せになります!」
「それでいいの。王妃なんて、王の妻以上の意味はないの。経験者が言うのだから、間違いないわ」
迷ったけれど、カールハインツ様の手をとった私は正しかった。絶対に幸せが待っていると思うから、これからも頑張ろう。お祖母様、お義母様と呼びたいと心から思えた方々と、カールハインツ様の隣で私は生きていくの。




