表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍11/5発売決定!【本編完結】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
番外編 猫のいる日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

637/653

32-2.(マルレーネ)初めてなのに懐かしい

 猫は平民が飼う動物で、愛玩用ではない。ネズミ捕りをさせるための実用重視、と聞いていた。お茶を飲む私の足元に擦り寄る何かに気づき、スカートの裾をあげる。にゃーん、と細く愛らしい声で鳴いた白猫が、すりりと足に顔を擦り付けた。


「あっ、申し訳ございません。苦手ではありませんか?」


「大丈夫よ、嫌なら連れてくるように言わないわ……触っても、平気かしら?」


 アマーリア夫人へ尋ねると、彼女は微笑んで立ち上がった。さっと屈んで、私の足元にいる白猫を捕まえる。


「シロですわ、赤ちゃんを抱くようにして……お上手です」


 ルイーゼを抱いたのが、最後の記憶。それでも体は覚えているものね。左腕を枕に、右手を被せて猫を支える。仰向けになった猫は小さな手を振った。結った髪から垂れたリボンに、ひょいっと手が伸びる。猫の場合は前足と呼ぶのかも。


 温かくて、くったりと張り付く重さ。赤ちゃんだったあの子達を抱いた時みたい。頼りなくて、温かいのに怖くて。でも愛おしい気持ちが湧き出る。猫って赤ちゃんみたいだわ。


「あっ!」


 脇の隙間から、ぬるりと子猫が出ていく。仰け反った形から、そのまま器用に落ちていった。慌てて押さえようとしたけれど、猫が落ちるほうが早くて。子猫なのにケガをしたのでは? 心配になって椅子の下を確認すれば、けろりとしていた。前足を舐めて、顔を拭くような仕草を繰り返す。


「ふふっ、猫は液体と表現するくらい柔らかいのですよ」


 液体? 水やお湯と同じ……あの抜け出る感じは、水みたいだった。押さえようとしても無理で、零れてしまう感じがそっくり。不思議な表現だけれど、納得してしまった。


「確かに柔らかかったわ」


「懐くと膝に乗って、喉を鳴らしますし……」


 説明する間に、白い子猫は走り去った。少しすると、別の子猫と追いかけっこしながら戻って来る。三色が混じらずに並んでいる柄は、三毛と呼ぶらしいわ。猫から子育てに話題が移り、また猫へ視線が引き寄せられた。


「不思議な魅力ね」


「ドレスに毛がつきますし、家具や壁で爪を研ぐこともあります。動物なので臭いも気になる方がおられるでしょう。でも……私は好きです。レオンも猫が大好きで」


 話す間に、黒っぽい縞のような柄の子猫が向かってくる。後ろから追うのはルイーゼとレオンだ。動物は詳しくないけれど、追い回すと怒らせるのでは? 噛みつかれたらどうするの。注意する前に、ルイーゼが派手に転んだ。駆けつけようと腰を浮かす。


 大泣きする我が子に、駆け寄ったレオンが手を貸した。見守ることにして座り直す私は、子猫三匹がルイーゼに近づく様子に目を見開く。ルイーゼの手をぺろりと舐めたのは、ザビーネという縞模様の猫。にっこり笑ったルイーゼが、猫を抱き上げた。


 あの子は加減を知らないから……ぎゅっと強く抱くかも。その懸念は、優しく撫でる娘の姿に消された。笑顔でゆっくりと背中を撫でるルイーゼは、転んだ痛みを忘れた様子。猫の飼い方と入手方法を教えてもらいましょう。無理なら、アマーリア夫人はそう言ってくれるはずだもの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こういうの読むと飼いたくなるのよねぇ。実家にいた犬はペット枠より家畜枠だったしなあ。愛玩を全くもとめてなくて、家にいれるなんてとんでもない!だった。ブラシとかかけたことあったかなあ?外のニワトリ小屋の…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ