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21.(ユーリア)ちょっとした宝探しね

 贈り物は思いのほか評判が良かった。一人一人に選ぶのも楽しい。でも、お気に入りや綺麗なものを集めたプレゼント箱が、誰の手に渡るか見ているのも胸が高鳴る。一周したため、また子供達が選び始めた。


「僕はこれ」


「あたしは……こっちかな」


 先に選んだローザリンデ嬢に続いて、レオン様とルイーゼ姫が明るい色の箱を手に取った。二人ともすぐに開け始める。ローザリンデ嬢はリボンを引っ張って満足し、箱はアマーリア様が開いた。


「まあ、素敵。ローズ、これはドライフラワーよ」


 箱いっぱいに薔薇を中心にした花が詰め込まれている。造花ではなく乾燥させたドライフラワーにしたのは、ハーブも混ぜたからよ。ラベンダーが漂い、皆で箱を覗いては香りを楽しんでいる。


「ローズ、ありがとうは?」


「あんと!」


 ぺこりとするローザリンデ嬢の口調が、兄レオン様とそっくり。ふふっと笑い「どういたしまして」と返した。こてりと首を傾げる仕草も同じね。やっぱり兄妹は似るんだわ。


「僕の! お母様、見て!!」


 ローザリンデ嬢に構うアマーリア様に、レオン様が訴える。微笑んで箱を覗いたアマーリア様は「まあ」と驚いた。その黄色い箱は確か……。


「これ、なぁに?」


 驚いたせいか、昔の幼い口調でレオン様が首を傾けた。やっぱりローザリンデ嬢と同じだわ。共通点に嬉しくて笑みが零れた。うちの子達も共通点があるかもしれないから、少し距離を置いて眺めてみましょう。明日から楽しみだわ。


「宝石、みたいね」


 断定しないアマーリア様に声を掛ける。


「瑪瑙ですわ。先日手に入れたのですが、本当に綺麗なのでおすそ分けのつもりでしたの」


 他国から大きな箱いっぱいで届いた。他にも瑪瑙の入った箱があったはず。レオン様は青と緑が混じった瑪瑙を、嬉しそうに持ち上げた。手の上で転がして、幸せそうに笑う。大人が親指と人差し指で輪を作った程度の大きさがあるから、ブローチに向いているでしょうね。


「綺麗だねぇ、お母様、ロジィ」


「あたしにも見せて!」


 隣から覗いたルイーゼ姫は、目を輝かせた。それから自分の選んだ箱に手を入れ、赤い塊を取り出す。


「あたしも! レオンと同じ、石なのよ」


 石という共通点で喜んでいるけれど、本当に同じ石だわ。赤瑪瑙は親指の爪程度の大きさだった。こちらは首飾りや指輪向きだわ。色が混じって縞になった青緑と、真っ赤な単色の石。どちらも選びに選んだ逸品よ。


「このように高価な贈り物、いいのかしら」


 心配そうに尋ねるアマーリア様へ、私は大きく手を広げて告げた。


「あら、これは順番で次はアマーリア様が贈り物を作るのよ? お互い様ですわ」


「そうね。遠慮せず頂きますわ」


 ほっとした顔のアマーリア様の隣で、王太后陛下がルイーゼ姫にお願いを始めた。


「私のこれと交換してくれる? ルイーゼ」


「やっ!」


 あらあら。陛下には私から別にお贈りしたほうがよさそうね。

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