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書籍11/5発売決定!【本編完結】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第一部

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49.家族の範囲はどこまで?

 結婚式後もすぐに王宮へ向かったし、滅多に屋敷に戻らない。だから平和な生活が送れると安心していたのに……。


 玄関ホールでレオンを抱いて待つ。何が起きているかわからないレオンは、周囲を見回して人が多いことに目を丸くした。


「おまちゅい?」


 ふふっと笑い、勘違いを正す。


「違うわ、レオンのお父様が帰ってきたの」


「ふーん」


 興味はなさそうね。まあ、向こうが興味を示さなかったんだし、今までのツケだわ。旦那様が無視されるのはいいけれど、レオンが叱られないように教えないと困るわ。


「お父様はこのお屋敷のお金やご飯のお金を出してくれる人よ。仲良しでなくても、お礼は言いましょうね」


 以前も私を真似ていたから、手本を示せば大丈夫よね。紫の大きな目をぱちくりと瞬き、レオンは素直に頷いた。


「おかえりなさいませ、旦那様」


 扉が開いて、家令フランクが代表で声をかける。使用人達が一様に腰を折った。私は妻なので、深く頭を下げる必要はない。レオンを抱いているから、危ないし。


「旦那様、お仕事お疲れ様でした」


 同じ言葉を復唱するのも芸がないので、表現を変えてみる。お帰りなさいと歓迎する意図はない。疲れたでしょうと労うだけ。微笑んでの会釈に、レオンは首だけぺこりと下げた。


 言葉が長いから? ぎゅっと私の首に手を回す仕草からして、怖いのね。以前にそんなことを言っていたわ。旦那様のお邪魔でしょうから、早めに立ち去りましょう。


 夕食は部屋で取ろうかしら。ベルントかフランクに尋ねて、旦那様が自室で食べるなら食堂を使おうと考えた。踵を返して数歩で、後ろから声がかかる。


「夕食は家族で摂ろう」


「家族、ですか?」


 どこまで含んでの意味か。私を除いてレオンだけの可能性もある。


「ああ」


 短い返事だけで、旦那様は階段を登る。踊り場で止まり、不思議そうに振り返った。小首を傾げれば、何も言わずにそのまま二階へ消える。


「フランク」


「はい、奥様」


「家族で食事と言ったわよね?」


「はい」


 沈黙が落ちる。フランクも初めての事態に混乱しているのか、いつも打てば響く対応がなかった。無言で見つめ合う。


 旦那様がいなくなって気楽になったのか、レオンは私の耳たぶを弄り始めた。指先で摘んだり引っ張ったり、その刺激で我に返る。


「家族って、どこまでかしら」


「……申し訳ございません、わかりかねます」


 旦那様の家族……書類上なら妻の私、息子のレオンまで。違う意味がある? でも礼儀作法の勉強中の双子は呼べない。エルヴィンも緊張するだろうし、お父様だけ呼ぶのも変よね。


「三人で用意しましょう」


 全員集めてしまって、後で文句を言われるよりマシだった。ケンプフェルト公爵家の家名を持つ者という意味なら、お父様達は巻き込まないで済む。


 料理長への伝言を頼み、私は絨毯が敷かれた居間へ向かった。靴を脱がせたレオンが、元気に走る。隅に置いた積み木の箱を引き寄せ、中身を取り出し始めた。手招きされて隣で積み木を弄る。もう角取りと色塗りが終わったのね。あとでフランクにお礼を言わなくちゃ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 公爵は自分の両親から得られなかった家族の愛や親の愛が欲しいんじゃないかなぁ。主人公的には非常に迷惑だろうけど、妻としてではなく母としてレオン同様母性を享受して大きな子供として甘えたいのかも。…
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