表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍11/5発売決定!【本編完結】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/653

36.女主人として命じるわ

「フランク、ベルント!」


 家令と執事を呼ぶと、先に駆け付けたのはフランクだった。


「お呼びでしょうか、奥様」


「ええ、そこに居る無礼な殿方を外へ出して頂戴。仮にもケンプフェルトの先代公爵を名乗る方が、こんなに無礼なはずがないわ」


 きっぱりと言い放った。女主人としての命令でもある。顔を上げたフランクは、満足げに口元を歪めた。あなた、私を試したわね? 今回は許してあげるから、さっさと連れ出して。視線でもう一度命じる。


「承知いたしました。ヨーナス様、客間でお待ちください」


 公爵家の使用人を統括する立場として、まずは静かに言葉で促す。だが騒いで動かない前公爵に、彼は容赦しなかった。


「連れ出して一番離れた客間へ。勝手に抜け出さないよう、監視もつけるように」


 淡々と騎士に命じる。屋敷の護衛であり、規律を維持する騎士は私に丁寧な一礼をした。両側の腕を組むように捕え、嫌がる義父を引っ張っていく。姿と声が見えなくなるまで、レオンは顔を上げなかった。


 ぎゅっと首に回した腕は必死で、可愛いお顔は見えない。義父の姿が消えるまで、私はレオンの後頭部を手で覆っていた。離さないと行動で示し、優しく黒髪を撫でる。一度は立ち上がったけれど、椅子に座り直した。


「大変失礼いたしました」


「本当よ、フランク。ここは食堂で、私とレオンは食事中だったの。あんな無礼者を通すのは、今回限りにして頂戴ね。二度目は許さないわ」


 叱ったのに、フランクは嬉しそうだ。女主人らしく振る舞えたかしら。


「今後は二度と通しません。深くお詫びいたします」


「ベルントは?」


「無礼な客人の荷物運びの指揮を任せました」


 なるほど。私の味方になりつつあった執事を遠ざけ、女主人としての覚悟を確認した。そして合格したのでしょう。フランクはずっと、私に女主人のあるべき姿を説いていたもの。


「そう。レオンを傷つけるなら、私は一切の容赦はしない。覚えておいてね」


 無言で頭を下げる家令フランクが頭を上げる頃、私はレオンの頬にキスをしていた。ちゅっと音を立てて降らせ、すぐに離れる。いくつも降らせたことで、擽ったいとレオンが笑い出した。


 子供、それも幼いうちはこうして笑うのが大事よ。声を立てて笑い、周囲の大人を味方につけるのは子供の特権だもの。


「もう怖くないかしら?」


「っ、うん」


「お母様が守るから、怖かったら隠れていいわ」


「いい、の?」


 男なら女を守りなさい、って誰かに言われたのかも。私だってレオンが成人していたら、同じように言うでしょうね。でも……。


「ええ、いいのよ。大人になったら、誰かを守れるようになるわ。それまでは守られるのがレオンの役目よ」


 貴族の子弟教育として、間違っていても構わない。我が子を守るのは親の使命です。微笑んだ私に、レオンはほわりと笑った。心から安心した顔で、私の頬に小さなキスを返してくれたの。


 あまりに天使すぎて、羽が生えたんじゃないかと心配しちゃったわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ある意味この親にしてこの子ありな親子なんだな、先代と旦那(;・∀・) 方や恐怖政治で思い通りにしようとするタイプ、方や放置プレイしかしないタイプの親子(;・∀・)
[一言] そう言う事だとは思ってましたが、試すような主人を軽んじるような行為をするような奴とは仲良くなりたくないですね。公爵夫人としては屋敷内でありえない事をしてる様子ばかりなので不安材料は確認してお…
[良い点] やっと物語が動き出して良かったです。 子育てエピソードが長すぎて辟易していたので…。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ