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書籍11/5発売決定!【本編完結】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第一部

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35.幸せな朝を台無しにする敵

 お祭りがよほど楽しみだったのか、家族全員が早々に休んだ。お陰で、いつもより早い時間に目が覚める。


「おかあしゃま、おまちゅい!」


「お祭り、楽しみね」


 今まで足りなかった言葉を浴びて、少しずつ自分から話すようになってきた。発音がおかしくても、舌足らずでも指摘はしない。まずは話せるようになることから始めるの。いっぱい話せるようになれば、徐々に発音は直ってくるでしょう。


 私と一緒に眠るのが当たり前になったレオンは、ずりずりとお尻で移動してベッドから降りる。まだ高さが怖いのか、縁でうつ伏せになって降りるのよね。侍女のマーサやリリーにも可愛いと評判で、落ちないよう見守るだけにしていた。


 抱っこして下ろしてしまったら、この可愛さが堪能できないでしょ? それに、自主的に行う行為は無理に止めない。無理なら手伝って、と言えるようにならないとね。


 今日も頑張って足の先から下り、とたとた走って鏡の前に座る。低い椅子が用意してあるので、そこで顔を洗うのだ。手を濡らして、顔をちょっと撫でる。リリーが濡れタオルでしっかり拭き取った。


「若様、ご立派ですよ」


 褒められて、嬉しそうに走って戻ってきた。受け止めて抱き上げ、部屋の隅にある絨毯に下ろす。ここで着替えをするのだ。衝立が用意された一角で、両手を挙げて脱がせてもらい、すぐにシャツやズボンを身につけた。


 貴族の若様って、半ズボンが基本みたいね。ベルント達が用意した服は、ほとんどが半ズボンとシャツだった。女性用ブラウスのように、袖や襟が凝っている。さすがにレースは少ないけれど、刺繍は施されていた。


 明らかに高そうな服だけど、抱っこで移動するから問題ないわね。水色のシャツと紺色のズボンを身につけたレオンに合わせ、私も紺色のワンピースにした。水色のリボンをウエストと髪に結ぶ。


「おなち! おなちいろ」


 お揃いだと喜ぶレオンが可愛い。今日は家族も準備があるので、二人だけの朝食だ。食べ始めてすぐ、玄関が騒がしくなった。お父様達ならベルントもこちらへ通すはずだし、誰かお客様かしら?


 まだ食べ終わっていないので、食堂から出られない。いえ、出てもいいのだけど……お行儀が悪いわ。緊急事態なら、誰かが呼びに来るでしょう。もぐもぐと口を動かすレオンは、外の騒動は気にしていなかった。大物になるわね……親バカを発揮しながら、パンを咀嚼する。


 バタン、突然開いた扉に顔を上げる。部屋の一番奥、向かって右側に座っているため、出入り口は遠かった。見知らぬ男性が立っている。初老と表現するのが相応しい、白髪が半分の黒髪、キツイ印象を与える切れ長の目元。旦那様に少し似ているかも。


「どちら様?」


「義父への挨拶がそれかっ! 玄関まで出迎えぬのは何事だ」


 首を傾げた私に、怒鳴り声が返ってきた。びくりと身を震わせたレオンが、ぎゅっとしがみ付く。義父……ああ、この方が旦那様のお父様ね。首に顔を埋めて震えるレオンの黒髪を撫でながら、ゆっくりと立ち上がった。


 私の可愛いレオンを叱りつけ、怯えさせ、言葉を封じた……諸悪の根源! 完全に敵認定させてもらうわ。受けて立ってやろうじゃない。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この前公爵と現公爵の元で働く使用人がどうしてこんなにまともなのか不思議だわ
[一言] 先触れもなく屋敷にやって来て出迎えなしにキレてるのこれ、老害の常識しらず? ただでさえ伝達とか、物資の巡りが遅い世界だから来訪予定を先に連絡して、先触れも出さなければろくな準備なんて出来な…
[一言] レオン以外ダメそうだなあ公爵家
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