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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第三章

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289.思いつきは首を絞める

 王太后様も参加するお茶会を開く。話を聞くなり、わっと使用人が動いた。翌日には招待状が発送される。というのも、付き合いがあり問題なさそうな貴族家は、事前に把握しているらしい。


 家令の仕事は、本当に幅広いのね。この公爵家の細かな采配もして、他の使用人の働きもチェックして……いつ寝ているのかしら。念の為に、ヘンリック様に伝えておいた。フランクにも休みは必要だもの。彼が倒れたら、数日で混乱しちゃうわ。


「奥様、お呼びした貴族家はほぼ出席の回答です」


「え、早い……」


 招待状を出した翌日の昼には、ほとんどの返答が揃っていた。やはり王太后様が出席するとなれば、簡単に欠席もできないわよね。マルレーネ様効果がすごい。感心しながら、参加する家のリストを受け取る。錚々たる家名を二度見した。


 公爵家はわかるけれど、侯爵家もほぼ参加だ。加えて有名な家がずらりと……一番爵位が低いのは男爵家だが、この家は元は商家で平民だった。納税額が大き過ぎて、功績に対して爵位を渡したと聞いている。伯爵家なのに、ほぼ納税がなかった実家とは雲泥の差ね。


 フランクが選び抜いた家名に頷き、配置表を差し出すベルントに微笑む。もうここまで準備できたなんて。家同士の力関係や親族の繋がりは、彼らの方が詳しいから任せることにした。女主人のやることは、彼らの決めた内容に目を通して把握するくらいね。


 有能な使用人が揃っているから、私は楽ができるわ。そう思ったのも束の間、侍女長のイルゼが大量の食器を部屋に持ち込んだ。食堂の長いテーブルへずらりとお茶のカップや皿が並ぶ。


「こちらが今回使用する食器の候補になります。希望があれば、指示をください」


「……多過ぎて選べないわ」


 ずらりと色別にグラデーションになっている。この家でこの食器を使うのは、公爵一家だけ。つまり三人なのよ。お茶会用とはいえ、用意されているのが恐ろしかった。もしかしたら、一生埃をかぶって……それはないわね。この家の使用人が、食器の埃を許すはずがない。


 飾られて終わるはずだった食器達を眺め、私はぽんと手を叩いて提案した。


「テーブルによって、食器の色を変えたらどうかしら。招待客の好きな色は不明でも、テーブルによってクロスや食器を変えたら楽しいでしょう?」


 隣は赤で、自分達は青。そんな違いも楽しめるといいのでは? 簡単な思いつきで口にしたが、イルゼは考え込んでから頷いた。


「趣向の一つとして、取り入れてみます。珍しい事例なので、何か理由をつけていただければ幸いです」


 まさかの宿題付きだった。通常はやらないことだから、一歩間違うとマナー違反になるのかも。もしくは全員分の茶器が揃わなかったと嘲笑されちゃうとか。


 きちんと考えないと、ケンプフェルト公爵家の名に泥を塗ってしまう。私は食器を揃える選択をせず、色を違える理由を探し始めた。少しして、レオンが色鮮やかな絵を描いた様子にヒントを得る。


「絵画よ! 絵をコンセプトにして、それぞれのテーブルを色分けするの」


 思いつきって、その時は素晴らしいけれど……行動に起こすのが一苦労なのよ。数時間でそれを思い知ることになった。

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― 新着の感想 ―
> 「絵画よ! 絵をコンセプトにして、それぞれのテーブルを色分けするの」 うん。続きを見なくても、この答えは多分やっちゃいけない選択肢だろうなって分かりますね。マナーとか風習とかじゃなくて、センスや…
色別なら小人は猫作者さんを蛍光色のレインボーカラーに染めます。猫作者さんを網に入れて、テーブルの中央の天井に吊るしてお茶会の日に猫作者さんをスポットライトで照らすのです。レインボーカラーに光る猫作者さ…
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