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【書籍化】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第二章

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275.痺れが抜けて涙が溢れ

 痺れた足で姿勢を立て直そうとするオイゲン様は、起きあがろうとした状態で固まった。大きく見開いた目が、ほわりと和らぐ。レオンはにこにこと笑顔を振りまきながら、また手を動かした。


「俺……その……」


 謝罪の言葉を探すオイゲン様の様子に、レオンは勘違いをしたみたい。何度も頭を撫でた。まるで猫のように、オイゲン様の瞼が落ちる。ごろごろと喉を鳴らす音が聞こえそうよ。


「へぇき?」


 もう痛いのは消えたかと問うレオンの声に、目を閉じたオイゲン様は慌てて身じろいだ。途端に足の痺れに襲われ、ぺたんと伏せる。まだ痛いらしいとレオンは頭を撫で始めた。


 これって、何かしらね。子猫が猛獣を手懐けるような光景だわ。どうしましょう、止めたほうがいいのか。ある程度好きにさせるべき? 隣のヘンリック様を見上げたら、何かを訴える目をされた。青い瞳が輝いている。


 迷ったけれど、私も手を伸ばした。ヘンリック様の黒髪に触れ、左右に動かす。黒髪が近づいて、彼が肩に寄りかかった。重くないよう気遣いながらも、距離を詰めたいのね。撫でていると、レオンが叫んだ。


「あっ! ぼくも、ぼくもぉ!」


 撫でてほしいと全力で走ってくる。オイゲン様は放置されてしまい、きょとんとしていた。その足をユリアンが掴む。


「まだ、痺れて……」


「こういうのは揉むと早く治るんだぜ? ほらっ、経験者のありがたい洗礼だ!」


 それって洗礼というより、嫌がらせじゃないかしら。勢いよく走ったレオンは、手前で急停止した。ぺたんとお尻を落として座り、私の膝に頭を乗せる。子供の体って柔らかいのね。


 ユリアンに足を揉まれ、一気に痺れが抜けたオイゲン様は身を起こして姿勢を正す。しかし、またもや動きを止めて固まった。おそらく私の姿だと思うわ。公爵夫人が絨毯に座り、その脇から夫である公爵が頭を撫でさせている。膝枕状態のレオンが、僕も撫でてと手を髪へ誘導する状況は、彼の人生で初めての光景だと思うわ。


 このケンプフェルト公爵家の長い歴史でも、こんな姿の公爵夫人は記録にないはずよ。ユリアーナは後ろでくすくすと笑い出し、エルヴィンは手を伸ばしかけて引っ込める。お父様に至っては、我関せずでベルントと何か話していた。


「ティール侯爵令息、離れでの滞在になりますが……不自由があったらユリアンに伝えてくださいね」


 ひとまず、固まった彼を解さないといけない。穏やかに切り出した。肩の夫と膝の義息子が重いが、表情に出さない。


「あ、お礼とご挨拶が遅れ、申し訳ございません。ティール侯爵家次男オイゲンです。ご迷惑をおかけした上、お招きいただき……ありがとう、ご、ざぃ、まじゅ……」


 途中から泣き崩れ、鼻を啜りながらの挨拶となった。オイゲン様は張り詰めていた糸が切れたようで、涙が止まらない。この部屋でそれを笑う人は誰もいないのよ。だから安心して泣いていいわ。


 さりげなくハンカチを貸すエルヴィンの横で、ユリアーナはやけに大人びた顔をしていた。

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― 新着の感想 ―
ヘンリックさんとレオン君に猫耳と猫尻尾が!w可愛いw! レオン君は、天使で幼子で猫ちゃんで紳士で!ヘンリックさんは、大型犬でお兄さんで父親で夫で猫ちゃんw二人とも属性が多すぎですw
オイゲン君は体調戻したら今までの反動で急成長するかなあ
家族うちのユリアンの呼び方は「ユン」 オイゲンくんと仲良しになるとどう呼ぶのかしら 「オン」?   そのくらい打ち解ける事が出来れば良いのだけれど!  まさかの 「オイ」? (汗)
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