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書籍化【本編完結】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第二部

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178.公爵夫人らしくは遠い

 寝台馬車へ乗り込み、三人で王宮へ向かった。寝転がって移動したら、ドレスがシワになるわ。ヘンリック様にそう伝えたら、控え室を用意されているらしい。そこで着替えてから、王妃マルレーネ様と王太子になられたカールハインツ殿下にお会いする。


 説明を受けて、ロングワンピースを着用した。着替えと侍女を乗せた馬車が続く。


「控え室が借りられるのね」


「公爵家は準王族だからな。三つの公爵家がそれぞれ部屋を所有している」


 話を聞く私の腹に、レオンがぺたりと張り付いている。最近抱っこが減ったから、触れていたいのね。普通の骨折ならもう骨がつく頃だった。剥離骨折は癖になるから、とお医者様が慎重になっている。車椅子もあと一ヶ月は利用してほしいと言われていた。


「レオン、ごめんなさいね。抱っこしてあげられなくて」


「ううん、いーの」


 頬を擦り寄せ、目を閉じている。愛情不足なのかしら。横になった状態で抱き寄せ、短い手が背に回るのを感じる。ヘンリック様も一緒に寝転んだ。彼やレオンも、王宮で着替える予定だった。


「マルレーネ様にお会いするのも久しぶりね。お変わりないかしら」


「譲位の手続きでご苦労なさったはずだ。労わって差し上げてくれ」


 陛下に関しては敬わないのに、王妃殿下には丁寧なのね。まあ、あの手紙から判断しても尊敬に値しない。当然の対応なのかも。


「もちろんですわ。他の公爵家も参加ですか?」


「いや、俺達だけだ」


 当たり前のように会話しながら、ふと気づいた。いつの間にか、ヘンリック様と普通に話している。以前は口も利かなかったし、私の存在なんて無視されたのに。契約結婚であっても、こうして尊重されると嬉しいわ。


 王妃殿下も陛下や王女殿下のことで悩んでいたし、相談に乗る時間を取れたらいいのだけれど。レオンと過ごす時間を減らしたくないのよね。黒髪を撫でながら、紫の瞳を細めるレオンに微笑みかけた。至福の時間だわ。このまま馬車が止まらなければいいのに。


 私の願いが叶うはずはなく、王宮の敷地内に入った。色とりどりの花が咲き乱れ、丁寧に整えられた木々が揺れる。レオンは目を輝かせた。起き上がって窓に手をかけ、庭園を見回している。


「あれ、おっきぃ」


 何が気になったのか、私が身を乗り出したらヘンリック様が支えてくれた。並んでレオンの横から外を眺める。嬉しそうにレオンが教える先に、温室があった。ガラスが光を弾いて、きらきら眩しい。


「温室か。庭に作るか」


「え?」


「やたっ!」


 聞き返す私の脳裏に浮かぶのは、膨大な製作費用。一方、無邪気に喜ぶレオンと満足げなヘンリック様。育ちの差? いえ、私に無駄な常識が多いんだわ。温室は個人が所有するものじゃないと思う。


 いつか公爵夫人らしい金銭感覚が身につくといいけれど。ずっと変化しない気もして、私は苦笑いして後ろに倒れ込んだ。隣にレオンが転がり、ヘンリック様も交じる。馬車の外からノックの音が聞こえるまで、三人並んで両手を繋ぐ。


 あと少しだけ、このままで。

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― 新着の感想 ―
仲良し家族、尊い…。 温室、何を育てるんでしょう?お花とか?果実とか?野菜とかw マルレーネさんと久々の再会!楽しみです!
 現実世界の英国貴族は、レモンやオレンジ、キュウリなどを栽培する温室を所有していたので、この世界でもヘンリック様に倣って流行するのではないかと思います。バナナやパイナップル、コーヒーも自家栽培出来ます…
温室作るなら是非小人温室、あらゆる小人族が栽培した小人植物が生息しています。うっかり、小人茸を取るとびっくりした小人茸が叫びます。その叫びを聞いたら一日中涙が止まらなくなり、悲しくなってマリッジブルー…
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