表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍化【本編完結】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

144/682

144.間違いを正す決意 ***SIDE公爵

 項垂れている場合ではない。失った信用や関係も、誠実な謝罪と行動の積み重ねで取り戻せばいい。俺が人並みの感情を得たように、新しく築いても間に合うはずだ。


「あの二人には謝る。お前……ベルントも悪かった。相談があるんだが、聞いてくれるか」


 自然と口から謝罪が出て、ベルントは柔らかな表情で頷いた。そこで気づく。フランクは父ヨーナスより年上だった。息子とまで言わないが、ベルントはフランクより一回り若い。経験を重ねた分だけ優しく、彼らは俺のやり直しを待っていた。


 もしかしたら、変わらないかもしれない主人を……黙って見守っていたのだ。その愛情の深さと献身に胸が詰まった。大声で泣き喚きたい気持ちを堪え、アマーリアとの契約内容を口にする。


 区切りながら、言葉を誤魔化さずに伝えた。彼女の人格も権利も無視し、金で買ったようなものだ。批判されることを覚悟した。


「ずっと秘めておられたのですか。お辛かったでしょう」


 思わぬ発言に泣きそうになり、唇を噛んだ。被害者はアマーリアだ。俺が泣くのは間違っている。


「旦那様は間違っていました。それを自覚なさったなら、次はどうすればよいか……ご存知のはずです」


「アマーリアに詫びて、契約の変更を願い出ようと思う」


「良いお考えですが、愛情もお伝えした方がよろしいかと」


「だが」


 契約で人生を縛り、未来を金で買った男だ。そんな夫から契約を変更して愛し合おうと言われて、彼女は迷惑なのではないか。困らせるくらいなら、このままでも……。暗い方へ引っ張られた考えを、ベルントが叱る。


 何を決意し、相談したのか! 変化を求めるからではないのか。そう問われ、拳を強く握った。


「奥様は真っ直ぐなお方です。旦那様が間違ったなら、叱ってくださいます」


「そう、だな。叱られてやり直せばいい」


 正直、まだ怖い。拒まれる恐怖を抱えながら、それでも進むと決めたのは自分自身だ。覚悟を決めるべきなのだろう。


 アマーリアに嫌われていないのだから、もっと好かれるように努力する。レオンとの交流も楽しい。伯爵家の皆と過ごす家族の時間は、初めて尽くしで心踊った。わからないことを、誰も嘲笑しない。


 絨毯が敷かれたあの部屋で、俺は人として成長したのだ。引き返す気はなかった。一度でも味わったら、蜜の味は忘れられない。求めて焦がれて、手を伸ばし続ける。


「ですが旦那様、もう一つ片付ける案件がおありなのでは?」


「わかっている」


 このままでは、国王陛下が国を傾ける。王女を溺愛するだけなら構わないが、役目を放棄するなら話は別だった。王妃殿下の手紙を思い出す。いざとなれば……いや、まだ早いか。回り始めた思考は、幾つもの問答を繰り返して煮詰まっていく。


「旦那様、奥様や若君がお待ちなのではありませんか」


 ベルントの言葉で、集中力と思考がぷつんと途絶えた。慌てて部屋を出ようと立ち上がり、いつもと違う別邸の椅子に脛をぶつける。痛みに顔を歪め足を引き摺りながら、大急ぎで家族の元へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 ( *˙ω˙*)و グッ!やればできるこ!
ヘンリックさん、いよいよですか!頑張って!アマーリアさんなら分かってくれます! 馬鹿に対しての、いざとなれば?って…『陛下は急な病に倒れられて、そのまま、儚くなりました。』『クーデター!』『陛下は急な…
周りに見守られていたヘンリック坊ちゃん☆
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ