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書籍化【本編完結】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第一部

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118.香りは記憶を呼び覚ます

 失言を取り繕おうとした私は、立ち上がった。敷いていたストールが落ちかけ、摘んでくるりと巻く。自分で行った作業で思いついた。


「マルレーネ様、流行を作ってはいかがでしょう」


「流行を、作る?」


 頷いて、ストールを一度解く。それを巻いて左の腰で摘んだ。ストールは大きめなので、ドレープができる。


「このようにスカートの上に綺麗な柄の布を巻くのです。これなら汚しても簡単に洗えますし、ドレスとは別に何種類も用意したらお洒落ですわ」


「……エプロンの代わりね?」


 はっとした顔で、マルレーネ様が確認する。その単語は忘れていただきたい。私の中の名称は、巻きスカートなのよ。エプロンから離れてくださいね。


「巻きスカートとして流行させれば、注目されます。幼い女の子にもつければ、スカートの上に食べ物を溢しても洗えます」


 外出先で汚れても、交換が可能だ。持っていくのも嵩張らない。旅行の際に、着替えの代わりに巻きスカートだけ交換する。そんな使い方も提案してみた。長さや布の大きさを調整すれば、ドレープや雰囲気も変えられるわ。


「素敵だわ、せっかくだから試してみましょう」


 次の夜会でマルレーネ様と一緒に、巻きスカート付きドレスを試すことにした。どうせなら、と他の二つの公爵夫人にもお声がけする予定よ。


「平民にも流行りそうだわ」


 服をたくさん持っている貴族と違い、簡単に着飾る方法は広がると思うの。嬉しそうに語る王妃殿下には申し訳ないのだけれど……エプロンになってしまいますわ。エプロンと縁がないお洒落なご婦人が、色とりどりの生地をふんだんに使うから巻きスカートなんです。


 口にせず、曖昧に微笑んでおいた。愛想笑いというやつね。早速布を手配するマルレーネ様と、あれこれ試していたら日が傾いていた。


 お菓子を食べ終えたルイーゼ王女殿下とレオンは、元気に温室を走り回って泥だらけ。転んだルイーゼ王女殿下を起こそうとして、手を差し伸べたレオンも転んだのだとか。


 マルレーネ様のご厚意でお風呂も借りて、綺麗に洗って乾かす。リリーも合流し、マーサと手早く準備してくれた。いつもと違う石鹸の香りに、レオンは変な顔をしている。


「家に帰ったらいつもの石鹸で洗うから、少しの間だけ我慢してね」


「うん」


 素直に頷いたものの、また腕の匂いを嗅いでいるわ。気に入らないのかしら。金木犀に似た甘くてすっきりした香りなのに。我が家ではラベンダーの石鹸だったから、確かに匂いは違うけれど。


 沈んだ様子のレオンを膝に乗せ、ゆっくりと聞き出した。その間も、侍女達は私の飾り付けに忙しい。公爵夫人に相応しい装いとお化粧が必要だもの。レオンは迷いながら、ぽつぽつと話した。


「ありがとう、言いづらかったでしょう。私はレオンの味方よ」


 ぎゅっと抱きしめた。纏めると義母が、金木犀の香りを好んだらしい。近づくなと叩いた彼女を思い出して泣きたくなる。レオンは途中で何度も謝った。あなたは何も悪くないのよ。悪いのは義母です! 絶対に許さないんだから。

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― 新着の感想 ―
2周目、感想。 アマーリアさんの心の『殴リスト』に義母が追加された。 ちなみに記念すべき一人目は義父である。 旦那様は当初載りかけたが無事回避した模様。
金木犀いい匂いなのに嫌な思い出とセットになっちゃってるなんて…許すまじ老害!
義母のど屑が!香りって良い記憶も悪い記憶も引き出しちゃうんですよね…。でも、これから幸せな思い出で塗り替えて行きましょう!
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