10.集う五人
長身の女性。ukaへと手を振りつつ近づいていく俺と陽向。
「あら、hina。お久しぶり。まあ、遅刻するとあるお方にグチグチ言われてしまいますからね。ねえ?ao」
にっこりとこちらに攻撃的な笑みを向けるuka。ちらりと見える少し長い犬歯。顔の良さがその八重歯をチャームポイントとして可愛らしく見せている。いや、なにこの美人ー!
俺はその聞き慣れた感じの挑発に反射的にノッてしまう。
「そりゃそうだろ。あんときは約一時間またされたんだからな。アニメだいたい二本分の時間損したわ」
「あら観て待っていればよかったのに」
「うるせー。お前が遅れなければ良かっただけのはなしだっつーの」
ギラリと睨み合う俺とuka。勿論これは喧嘩ではなく、じゃれあい。
あいだに陽向が入り「はい、二人共どうどう」と離す。
「「馬!?」」
「あはははっ!」
俺とukaの反応に笑い出す陽向。
ふふん、と笑ったuka。彼女はピッ、と赤いドラムスティックをこちらに向けた。
「ネトゲへのイン率がさがっていたので心配していたけれど。元気そうですわね、引き籠もり」
「お前もな、高飛車お嬢様」
「あ、そだそだ。自己紹介したら?まだ二人来てないでしょ」
「それもそうですわね。では、お先に。わたくしの名前は赤羽 花蓮ですの。よろよろ(よろしく)ですわ」
帽子を取りぺこりとお辞儀する。なんだろう。所作のひとつひとつが綺麗というか、流麗な感じがする。
もしかして、これってキャラ作りとかじゃなくてホントにいいトコのお嬢様なのか?
そんな事を考えつつ、俺も名前を名乗る。
「えっと、俺は青山結人。よろ」
「青山、結人。結ぶ、人......いい名前ですわね」
にこりと笑う。なんか陽向よりも目尻があがっていて、どことなく猫っぽい。猫目。八重歯といい獣のイメージが強いな。品のある猫。
「あ、ありがとう」
「あっは!結人照れてる〜」
ちゃかしてくる陽向。
「う、うるせえ!そら恥ずかしいに決まって――」
そう言いかけた時、ukaの顔が俺の顔に接近した。
「ひゃっ、な、なに!?」
「あ、いえ。可愛らしいお顔だなあと思いまして......というか、あなたどこかで見たような」
「え、え?」
じーっと至近距離で観察してくるuka。耐えられなくなったその時、「あー!ukaさんがaoさんとキスしてるー!」と遠くから声が聞こえた。
「なっ!?ご、誤解ですわ!!」
バッと離れたuka。声の主は「あははは」と屈託のない笑みで笑う。
そうその可愛らしい声はrayさんだった。
「お久しぶりですukaさん、hinaさん。それと、aoさん!」
とととと、と彼女は俺のもとへ走り寄ってくる。そしてふんふんと何かを確認するように俺の顔をじろじろみていた。
「ちゃんとお化粧できてるようですね。日焼け止めもしっかり......えらいです」
背伸びして俺の頭を撫でるrayさん。なにこれ。
嬉しいような恥ずかしいような。
「?、何言ってますの?年頃の娘ですものお化粧くらいしますわよね?」
「いやほら、結人はわりかし最近女の子になったからさ」
「女の子に......あ、そーでしたわ!そいつは失礼。確か急性TS症候群だとか。ホントにあるんですのね」
「あるよ〜。あたしが証人だよ。男の子の時の結人も知ってるし......ほらこれ、中学生の結人」
陽向が携帯をいじっているなと思ってたが画像ファイルから俺の写真を探してたのか。
四人寄り合ってその写真を眺める。
「あらあらまあまあ、こちらも可愛らしいお顔ですわねー」
「ほんとにですねえ。ふふっ」
「でしょでしょー!でも面影あるでしょ結人」
「「ありますね(わね)」」
「あのー、恥ずかしいのでそろそろ消していただきたいのですが陽向さん」
「あはは、ごめんね。でも皆に知ってもらいたくってさ。男の子の時の結人も」
......その言葉は、なんとなく嬉しかった。
ブブブ、と携帯が震える。
(ん?誰だ)
『やー、ホントに可愛らしいねao(ノ´∀`*)』
メッセージが来ていた。差出人はkuroko。ネトゲのフレンド。バンドメンバーの残りの一人で、ベース担当。
面と向かっての直接的な会話が苦手らしく、そのために事前にLONEを交換しておいた。
(アイコンがシマエナガのぬいぐるみ......可愛いな)
ん?てか、なんでここに居ないのに写真が......?
周囲を見渡そうと顔を開けた時、違和感に気がついた。その違和感とは、隣の子。
黒髪の女の子がいつの間にか隣に居た。
(......え、え?気配無かったんだが......)
俺が気がついたことに彼女も気がついたのか、こちらを見つめてくる。
(黒い服装......これは、地雷系ってやつか?)
黒いネクタイと同じく黒のパーカーにスカート。短いスカートからすらり伸びる白い脚、黒い底の厚いブーツ。髪型は黒髪のツインテールで毛先がくるくると軽く巻かれている。
背には楽器の.......おそらくはベースが入っているケースを背負い、見るからにバンドマンだ。いやガールか。
ジト目でこちらをじーっと見てくる。しかし表情から感情は読めない。
「えっと、kuroko?」
携帯が再び震える。
『そだよー!私がkurokoでリアルネームは黒桐 雫。よろしくね、ao。(*´艸`*)』
「あ、よろしく。青山結人です」
そう俺が返すと、フッと微笑んでくれた。感情表現は薄いけど、笑った顔が可愛い。
この子も美人だなぁ......つーか耳ピアスいっぱいしてるなあ。すげえ。
なにウチのバンド。可愛い子で固めすぎじゃね?
なんてハーレムバンドだよ。
「おひさですわねkuroko」
「お久しぶりです。kurokoさん」
「久しぶり!kurokoちゃん!」
『皆、おひさー!٩(๑òωó๑)۶』
携帯に打ち込んだ文字を皆に見せるkurokoさん。ホントに喋らない子なんだな。
てか喋れないんだよな、たしか。
理由は良く知らないけど。でも、人と喋れなくなるくらいの何かがあったってことだよな。
あまり触れてはいけない気がするけど......ちょっと気になる。
「よし、これで皆そろったねー!自己紹介も終わったし、ライブハウスへゴー!」
『「「「おー!」」」٩(๑`^´๑)۶』
黒い扉を押し開ける陽向。
――ここから、始まるのか......。
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