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エピローグ


 リソースをより多く費やし、強化したスキルを魔王に放った。

 スキルのエフェクトで辺りが光に包まれる。


「ま、魔王は? やっつけられたぁ?」

 

「ちょ、ちょっとステイト! フラグ立てないで!」

 前世を思い出したんじゃなかったの!? 私だって「やったか?」って言うの我慢したのに。


「ごめ~ん。つい言っちゃったぁ」


「『つい』じゃないよ! これで魔王が斃せてなかったら、割とピンチだよ!」


「ピィッ! ピィィ!」


「ほら! フェニーも言ってるじゃない!? ……え?」


「ピィッ!」

 いつの間にか近くにやって来ていた小鳥が得意げに胸を張っている。


《ピンポーン!

 混乱の感情を確認しました。

【エモーションストック】に、現在の感情をストックしますか?

 YES or NO?》


 ▶YES


「フェニー? 小さくなってる?」

 

「初めて出会った頃の大きさだねぇ」


 孔雀の大きさだったのに小鳥サイズになっているフェニーを、ステイトが掌に掬い上げた。


「え?」

 スキルで一度は吸い出した混乱が再び湧き上がってくるのを感じながら、フェニーの遺体が在ったはずの場所に目を向けると、多量の羽が残っているのが見えた。


《ピンポーン!

 混乱の感情を確認しました。

【エモーションストック】に、現在の感情をストックしますか?

 YES or NO?》


 ▶YES


《エラー!

 連続使用に必要な時間を経過していません。

 スキルは実行されませんでした》


「え? なんで? フェニーの体は?」

 羽毛をかき分けてみたが、肉や骨は見つからなかった。


「アンジー、どうしたのぉ? フェニーはここだよぉ。不死鳥だから、復活したんだよぉ。代わりに小さくなっちゃったけど、その前にフェニーが頑張って、いっぱい食べて体を大きくしてあったから、まだ魔法も使えるよ、ね? フェニー」

 威力は小さくなっちゃうけどねぇと付け足すステイトと、相槌を打つフェニー。


 確かに、不死鳥っぽい見た目だと思っていたから、フェニックスに因んだ名を付けたのではある。


「え? 嘘? だって、この世界でだって、不死鳥って伝説の存在でしょ!?」

 しかし、本当に不死鳥だと思うかどうかは、別問題では?


「そうだよぉ。多分、この世界でも、フェニーしか居ないんじゃない?」


「……何でそんな存在が、村の近くに居るの?」


「それは、魔王城の近くだからぁ」


「ピィッ! ピィッ!」


 前回の旅をきっかけに認識しつつはあったが、思った以上に、私達の出身村は特殊である様だった。


「……私が聖都まで連れて行かれたのって、意味、在ったかな?」


「……完全に無駄だよねぇ」


「……ピィ」


 ステイトだけでなく、フェニーまでチベスナ顔になっている。多分、私も同じ顔になっていると思う。


 今代勇者アンジー。出身は、魔王城から最も近い人類拠点(エイド村)。魔王討伐の旅の同行者は、同じくエイド村出身の聖女(♂)(幼馴染)と、魔王城近くの森に居た不死鳥(フェニックス)。装備品は、エイド村の鍛冶師と魔道具士による逸品です。


「……帰ろうか」


「そうだねぇ。魔王も大丈夫みたいだしぃ」


「ピィッ!」



 フェニーの復活も勝利も喜び損ねてしまったが、魔王討伐は無事成功していた。


 魔王の代わりに現れていた大鏡に付いている魔石を外す。魔王の象徴の様にも思えるが、比較的大きいだけで、材質自体は他のモンスターからも得られる事もあるものだ。これまでは教会に預けられ権威付けに利用されてきた。これを城の外に持ち出せば、魔王城は消え失せ、魔物も沈静化する。それだけでも20年位は平穏でいられるはずだ。この世界の魔王は、前世で定期的に起こっていた大地震みたいな感じだと思う。

 

「その魔石はどうするのぉ?」


「王妃陛下に託そうと思ってる。教会の改革に有利になるだろうし」


「そっかぁ。教会、まともになるといいよねぇ」


「多分、王妃陛下に任せておけば大丈夫じゃないかな……」

 あの王妃陛下が教会の改革に手心を加える様子は、一切思い浮かばない。

 


 村に戻ると、早くも約束通り、両陛下から衣装と建材が届いていたので、伸ばし伸ばしになっていた結婚式を急遽、挙げてしまった。急拵えだったが、村民全員で準備をしてくれて祝ってくれたのだ。全員が自営業の小さな村ならではである。

 

 両陛下からの使者として、前回の魔王討伐の旅のメンバーで剣士だった騎士団長が村にやって来ていた。未だ独身だという騎士団長は、まだ母に未練があったらしく、私達が戻る前に母に再度プロポーズをしたらしい。逆鱗に触れた母に最上級攻撃魔法を喰らったという話だ。おかげで村の一部が損壊しており、村の外には更地になっている場所があった。村の魔道具士(トゥーラ)が、私達が出発した後も追加で作ってくれていたエリクサーにより、騎士団長は存命である。コメントは差し控えたい。



 魔王の本体と思われていた大鏡は、割った。思った以上に、あっけなく割れた。


 定期的に復活する魔王の存在が、「前世の地震の様だ」という話をステイトとした時、「防げるなら防いだ方が良い」という結論になった。

 当然だ。前世の私達は、生国だという消極的な理由とは言え、地震を含む災害の多い国に住み続ける事を、自分達で選んでいたけれども、災害が多い事を歓迎していたわけではなかった。

 鏡を割る事で、何か災厄が起こるという懸念もあったが、少なくとも鏡がある事で魔王という災厄が確実に復活するのは防げる。


「僕達に前世の記憶があるのは、この為かもしれないって思うんだよぉ」

 ステイトは言う。

 この世界の人達では魔王の鏡を割る事が出来なかった。だから、別の世界の記憶を持つ私達が選ばれたんじゃないか、と。

 

 今のところ、特に大きな異変は無い。

 魔王はもう復活しないのか、代わりに何かしら災害が増えたりしないのか、十分に注意しておく必要がある。

 新婚旅行がてら王都まで魔石を届けに行って、国王王妃両陛下には、国全体の事は請け負ってもらった。

 私達は、最後の勇者と聖女(?)として、魔王城のその後を、故郷の村で見守り続けようと思う。


 


最後まで読んで下さってありがとうございます。


この話は、私が流行り廃ったアンガーマネジメントを勉強している時に、ふっと浮かんだものです。


私が話を思いつく時は、2パターンあります。

キャラと世界設定にエピソード10個とかのセットが画像で一気に降ってくるパターンと、一文程度の思い付きのパターン。

前者のパターンは大容量であるが為に、作者の力量を大きく超えており、上手くまとめられません。

でも、直ぐ書かないと忘れてしまうし、ちょっとメモにした程度では後から思い出せない、という理由があり、今回どうにかここまで書きました。

この大容量の思い付きパターンを、もっと上手く書ける様に、というのが当面の(永遠の?)目標ですね。


この作品を書くことで、アンガーマネジメントが身に着いた、……だったら良かったんですけどね。

アンジーと違って、そんなに習得できてはいないです。

でも、一応、前よりは怒りっぽくなくなってはいるかな?


自分が「良かれと思っている事」が怒りの原因になる、という発想がいつも頭に入っているのは良い事の様に思います。

「毎食、家族のために温かい料理を何種類も作って、それぞれ別のお皿に盛り、全ての食器を毎回洗う」

日本では称賛される行為かもしれないけれど、エネルギーも水資源も行き渡っていない世界規模で考えると、自己中心的な行動とも言えます。

エコロジーを理由に手抜き、と思っても良いですが、発展途上国の人に「日本人は我儘だ」と言われた時に「何を!?」とはならない様にしたいものだなと思います。


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