表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/26

プロローグ


 世界は、穏やかさを失っていた。


 空は何処まで行っても不気味な紫の雲に覆われ、地には至る所に魔物が溢れている。

 国の北西端には、見る者に恐怖を与える様な城が顕現している。


 魔王が復活したのだった。



 今、私の目の前には、巨大な水晶玉が鎮座している。


「さ、手を翳して下され」

 老いた神官に促され、水晶に手を伸ばした。


 辺りを白い光が煌々と照らし出す。


「おお……」

「やはり!」

「神託は正しかった」


 広間が騒めき、教皇が手を上げた事で、再び静寂に戻る。


「汝、アンジーを勇者と認定し、魔王討伐の任を与える」



 時を遡る事、半年。


 教会のエロ司祭に攫われた幼馴染(ステイト)を無事に連れ戻し、母の謎のコネで全ての問題を解決した後、私とステイトは結婚の準備をしていた。


 本来なら、もっとゆっくりと進める準備だが、魔王が復活し、周囲の魔物が活性化してきていたため、急いでいた。

 なにせ、私達の村は辺境中の辺境。近くをうろつく魔物も、他の地域と違って一段階上位種だ。トラブルが増え慌ただしくなってくる事が予想されているなら、多少急いでも平和なうちに済ませた方がいい。


 いよいよ明日が結婚式、という日。

 教会から使者がやって来た。

 魔王を倒す勇者の神託が下ったと言うのだ。


「せめて1日待って欲しい」「結婚式を済ませたい」

 要望は聞き入れられなかった。



 そうして、国の南東端にある聖都の、この教会で、私は勇者の任命を受けた。


「これからは、どうするのですか?」


 教皇から言葉を貰う任命式では、「拝命します」としか答えられない事になっていたため、控室に戻ってから疑問を口にする。


「魔王討伐に向けて旅立ってもらいます」

 教皇ではないが、教会の実務を担う、そこそこのお偉いさんが答える。


「それは分かっています。

 態々ここまで来させられた意味をお聞きしたいのですが」


「神託に従って勇者を任命するためですよ」


「……何か、ここまで来なくては得られない準備などは無いのですか?」


「支度金はこちらです」

 お偉いさんの横に控えていた人から渡された袋には、銅の剣も買えない様な金額しか入っていない。


「勇者専用の装備品があったり、教会から派遣される同行者が居たりはしないのですか?」


「それは、代々の勇者様ご本人が何とかする事ですなあ」


《ピンポーン!

 強い怒りを確認しました。

【エモーションストック】に、現在の怒りをストックしますか?

 YES or NO?》


 ▶NO


『エモーションマネジメント』スキルで消費しますか?

 YES or NO?》


 ▶YES


《【怒りの咆哮】を発動します》


「ふざけんなーっ!

 私は、魔王城から馬車で3日の村に住んでんだぞ!

 なのに、なんで、3ヶ月近くかかる場所に呼び出されてまで、魔王討伐の任命を受けなきゃいけないんだ!

 私を呼び出しに来た使者がそのまま任命すればいいだろー!」



 今代勇者アンジー、魔王討伐の旅程の97%は、ただの帰郷です。




読んで下さってありがとうございます。


ブクマやポイント、いいね、誤字報告をして下さる方、ありがとうございます。

感想返信は、ネタバレ防止のために完結までしないつもりです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ