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帰還の道中


「【怒涛の攻撃】! はぁあああ!」


「「グウゥゥゥ……」」

 核を割られたゴーレム達が、土に還っていくが、まだ大物が残っている。


「はぁ、はぁ、ステイト、補助(【ステータス操作】)切れた」


「……ちょっと待ってぇ、連続では使えないみたい」


「ガガガガガ……」


「はあ!」

 キン!


 下がって態勢を立て直すためにも、もう一度切りかかったが、硬質な音がするだけで、削れてもいない。

 あまり無茶をすると、剣の方が刃こぼれしそうだ。


「ピィィーーー!」

 フェニーが火魔法で足止めをしてくれたので、一息入れる。


「はぁ、はぁ、普通、クレイゴーレムの次はストーンゴーレムじゃないのかよ……」


 炭鉱の町の近くまで、戻って来ている。

 これまで町の近くに出没していたのは、ゴーレムと略称される、土製のクレイゴーレムなのだが、今、私達が相対しているのはアイアンゴーレムだ。


 ストーンゴーレムまでは予想していたのだが、10体のクレイゴーレムを率いて現れたのは、アイアンゴーレムだった。


 頭部に核が露出しているクレイゴーレムは、核さえ割れば楽勝なので、先程、全て斃した。

 しかし、アイアンゴーレムは核の露出面積が狭い上に、核自体の強度もそれなりだ。

 宝石みたいな物で、傷つけずに採取できればかなり高額ではある。


 ただ、私の剣もステイトの弓も、かなり相性が悪い。

 フェニーの火魔法は多少効くようだが、止めまでは厳しそうである。


「はぁ、やっぱり、何とか頭の核を割らないと」


 今回は採取のために取っておいたとかではない。

 アイアンゴーレムがデカくて届かないのだ。

 クレイゴーレムでも、大柄な男性のさらに一回り上とかだったが、今、目の前にいるヤツは、その倍近い。


 ステイトが何度か当ててるが、硬くて矢では歯が立たない様だ。

 狙いは正確なので、ストーンゴーレムだったら、斃せてたかもしれない。


「ごめんねぇ、アンジー、補助かけるタイミング違ったかもぉ」

 ステイトは、ゴーレムの群れが出て来た時点で、私の攻撃力を強化してくれた。


「いや、ステイトは悪くないよ。

 戦いの最初のタイミングでかけるのは合ってる。

 次は、敏捷性を上げてくれる?」


「分かったぁ」


「ピィイ!」

 ステイトの返事の直後、甲高い鳴き声を悔しげに響かせ、フェニーが戻って来た。

 

 少し溶けたアイアンゴーレムが、じりじりとした動きで、こちらへの前進を再開している。


「……【ステータス操作】!」


 絶妙のタイミング!


「はぁあああ!」

 少し下がった場から、一気に走り寄る。


「ガガッ」

 モンスターが腕を大きく地面まで振り下ろす。


 避けた事で、助走でつけたスピードが少し殺されたが、地面を蹴りだす足に力を込めて再加速。

 持ち上がりつつあるゴーレムの腕を伝って駆け上る。


「【憤怒の一撃】! 終わりだ!」

 核に向かって、渾身の力を込めて剣を振るう。


「ガアァァァ……」

 核に大きなヒビの入ったアイアンゴーレムが、ゆっくりと動きを止めた。



「はぁ」

 ただの鉄の塊と化したモンスターの体から降りて、一息つく。


「ピィ」

 フェニーが肩に戻って来た。


「アンジー、大丈夫ぅ?

 回復する?」


「大丈夫、一撃も入ってないから」

 こう言うと楽勝だったみたいな感じがするが、多分1つでも攻撃を喰らっていたら、負けてたんじゃないかな。



「おーい! 大丈夫かー!?」


 冒険者が何人か、町の方から走って来た。

 ゴーレムの群れに遭遇した時点で、家族連れらしい人達が一緒に居た。私達がゴーレムを引き受けて、町に向かってもらったのだが、無事に辿り着いたのだろうか。


「大丈夫か!? って、もう終わってんのか」


「あ、アレックスさんじゃないですか。

 お久しぶりです」


「あん?

 ……もしかして、あんた、アンジーか?

 いや、違うよな。

 俺の知ってるアンジーは、男だ。

 あんたは、女だ」


「……アンジーです。

 前は男の格好をしていたんですよ……」


 数ヶ月振りの再会は、微妙な空気になった。 



「町の者を助けてくれて、感謝している。

 良ければ、片付けを手伝おう。

 アイアンゴーレムの体は、うちに買取に出してもらえるとありがたい」


 炭鉱の町の冒険者ギルド長を名乗る壮年の男性が、気まずそうに咳払いをしながら、話しかけてきた。

 

「助かります」


 アイアンゴーレムは、名前の通り鉄で出来ているので、残った体も素材として有用だ。

 手持ちのマジックバッグに入れられるとは思うが、これだけの大きさを入れられる魔道具を個人持ちしているがバレるのは、あまり良くない。

 町まで運ぶのを手伝ってもらえるなら、その方が無難だ。


「では預り証を出すので、アイアンゴーレムはギルドのマジックバッグに入れていいか?

 買取の審査は後日に行うが、核が割れている確認だけはしてもらいたい」


「分かりました。いいよね?」


「ピィ!」

「いいよぉ」


 後半はステイトに言ったはずなのに、フェニーの返事の方が早くて笑ってしまう。


「そっちが、前に言ってた幼馴染か?

 俺はアレックスだ。

 町に居るフローラと一緒に、アンジーに助けてもらった者だ」


「ステイトですぅ。よろしくお願いしますぅ」

「ピィ!」


「こっちこそ、よろしくな。

 鳥のお前さんの事は覚えてるよ」

 フェニーの返事に、アレックスさんも苦笑している。


 その後、散らばったクレイゴーレムの核を拾い集めて、町へ行く。


「いや、助かった。

 最近、モンスターが活発になっててな。

 ストーンゴーレムまでは、結構出る様になってたんだ。

 しかし、アイアンゴーレムは、聞いた事が無かった。

 素材は助かるが、これからどうするか考えると、頭が痛いな。

 何だって、突然、アイアンゴーレムが……」


 礼の言葉から始まったギルド長の愚痴は、町に着くまで続いた。



「お疲れ様です」

 門番が、主にギルド長に声をかける。


「自分は何もしとらんよ。

 町人を助けてくれた旅の冒険者が、全部片付けてくれたからな」


「そうだったんですね。

 ありがとうございます」

 素直そうな若い門番は、ギルド長の言葉を受けて、私達に頭を下げた。


「いえいえ、皆さんが無事だったなら良かったです」


「そう言ってくれるとありがたいが、こっちも仕事なんでな。

 悪いが身分証と入場料を頼む」

 もう一人の壮年の門番に、入場の審査をしてもらう。


「では、自分は戻る。

 買取査定もあるから、明日、ギルドの建物まで来てもらえるか?」

 ギルド長が、町中の方を指さしながら言う。


「分かりました。では、明日の朝に伺います」


「フローラが会いたがると思う。

 酒場に行かないか?」


 アレックスさんの誘いに乗る事にした。

 

 酒場では、ステイトがフローラさんに引きずり出されて、歌わされたり、ステイトのもらったお捻りの方が圧倒的に多くて、拗ねてしまったフローラさんをアレックスさんが宥める事になったり、ちょっと目を離した隙に、フェニーが酒場の火鉢から石炭を取って食べているところを、他の客に見つかってしまって騒ぎになったり、色々あった。



***


「なんという事でしょう。

 神の使命を、何と思っているのでしょう。

 全く情報が集まらないとは。

 ……こうなったら、奥の手を使うしかありませんね」



読んで下さってありがとうございます。


明日で、一区切りです。

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