女?二人旅
「登録しました。
こちらが、ステイトさんの冒険者ギルドカードになります」
ステイトと一緒に王都の隣町の冒険者ギルドに来ている。
王都で会った冒険者から、この町は王都方面から入る分には審査が緩い、と聞いていたのだ。
地方からの入りに人手を割いているので、王都の厳しい審査を通った者に時間はかけないという事らしい。納得出来る。
おかげで、私の冒険者カードと通行料だけで、ステイトも無事に町に入る事が出来た。
門限の関係で王都には結局1泊したけど、司祭から早く離れたかったからね。
王都の冒険者ギルドは、実入りが良い仕事があまり無い割に受付が混む、という話も冒険者から聞けたのだ。
「ありがとうございます。
それから、この依頼を受けたいんですが」
この町のギルドの受付は空いていたので、記入済みだった用紙でステイトの登録も直ぐだったし、私達の冒険仲間登録にもほとんど時間がかからずに済んだ。
強いて言えば、パーティー名にいくつも候補を出さなきゃいけなくて手間取った位だ。
なかなか受け付けられなくて、変な名で登録してしまった。
ともかく、これからはパーティーとして冒険者の依頼を受けながら、村まで帰ろうと思う。
「こちらですか?
アンジーさんだけなら問題無いと思いますが、ステイトさんには少々危険ですね。
お二人で受けますか?」
「はい。お願いします。
達成の報告と手続きは、何処の受付でもいいんですよね?」
「報告までに日数が経ちすぎると、依頼失敗となる場合がありますので、そこだけ注意して頂ければ大丈夫ですよ」
依頼を受けたギルドに限らず、手近な支部の受付で達成の事務手続きが可能らしい。尤も、別の支部での手続きには手数料を取られる。
寄り道にはなるので行きには出来なかったが、戻らずに済むなら、依頼をこなしながら帰る事も可能だ。
今回の依頼を受けた事で、隣村を経由する事無く大回りで帰るルートになるが、野営の装備もあるし、大丈夫だろう。
「ねっ、ねぇ、アンジー」
ギルドの建物を後にしようとしたら、私の斜め後ろ位にぺったりとへばりついていたステイトから声をかけられる。
「どうしたの?
依頼の事なら、ステイトは大丈夫だよ」
ひ弱に見えても、ステイトもあの村で育ったのだ。
「そっ、そうじゃなくてぇ。
ぼ、僕、いつまでこの格好してなきゃいけないのぉ?」
幼馴染が、自身の履いているスカートの裾を少しでも伸ばそうとしているのか、下に引っ張りながら聞いてくる。引っ張ったって碌な事にならないと思う。
ステイトは、未だにミニスカート姿のままだ。
尤も、王都で購入した服は冒険に向かないので、生地が丈夫な服を直してミニスカートに仕立てている。
足元は革製のロングブーツ、上半身は僅かに胸が膨らんだ胸当て、革手袋やその他、要所にちゃんと防具は付けているが、太ももの絶対領域は死守してある。
こうする事で、ステイトは完全に女の子に見える。
不本意だが司祭達は、私達の事を「男二人」と認識しているはずだ。
あのクズは、攫って行ったその日に、ステイトの服を引っ剥がしたらしい。
男だと分かった事で、何もされてなくて良かったと思う。
今の私達は、ドレスアーマー姿の女剣士の私と、革装備の弓士の女の子という組み合わせに見えるはずだ。
私の防具も、村から着ていた物の方が性能が良いが、仕方ない。
探されているのが「男2人」なので、実際は「女2人」という状態にしたのだ。
「村に帰りつくまで、だよ」
「そんなぁ」
項垂れているステイトにはちょっと可哀想だが、穏便かつ安全に村まで逃げるために、必要な犠牲である。
結果的に、やけに人目を引いているが、それはしょうがない。
美少女過ぎるステイトがいけない。
トラブル回避のために、町中ではローブを羽織ってもらっているが、焼け石に水の様な気もする。
実際、町中で痴漢に遭いまくりで、対処する私も【アンガーストック】に事欠かない。
一方の私は、相変わらず女の人に声をかけられている。なんでやねん。
「依頼も受けたし、出発しよう」
門を出る。
「ピィー!」
騒動の間、巻き込まれると可哀想なので、自由行動にしてもらっていた愛鳥が飛んで来た。
この辺りは村からすると雑魚モンスターしかいないので、フェニーなら懐に入れておくよりも外の方が安全かと思ったのだ。ついでにダイエットにもならないかな、とは本人?には言わない。
「フェニー、久しぶりぃ。元気だったぁ?」
ステイトがフェニーと戯れている。
……ブロマイドとかにして売ったら、良い金になりそうな絵面だ。
「フェニー、しばらく見ないうちに大きくなったねぇ」
ステイトに言われたフェニーは、得意げに胸をそらした。
そう言われれば、そうだな。
もう懐には入らないかも。どうしたもんかな。
「依頼の場所って、この辺りなのぉ?」
ステイトがきょろきょろしている。
一見すると、長閑な草原の風景だ。
少し離れた所に、疎らな木立がある。
「多分そう。
フェニー、お願いできる?」
「ピィ!」
短く鳴いたフェニーが、炎を纏った体で木立の方へ飛んでいく。
特にどれかに突進するでもなく、木々の間を飛び回っているだけなのだが、
「キイィィーー!」
一本の木が、黒板を引っ搔いたみたいな、耳障りな悲鳴を上げて、枝を振り回し始めた。
「あ、あれだねぇ?」
ステイトが、飾りのついた矢を暴れ始めた木に向かって放つ。目印のためだ。
今回の依頼は、「村の近くの木がドリアード化してしまった様なので、どの木か調査して分かるようにして欲しい」だ。
「まだドリアードに成り立てで、移動は出来ないみたいだな。斃してしまおう」
斃せば、討伐報酬も出る。
いずれにしても、ドリアード化してしまったら、誰かが斃すしか対処法も無いのだし、私達がやってしまおう。
「じゃあ、僕、援護するねぇ」
「お願い」
ドリアードが上空を飛ぶフェニーに気を取られている間に、駆け寄る。
「【憤怒の一撃】!」
一番厄介そうな枝が振り下ろされたので避けて、間髪入れずにスキルで強化された渾身の一撃を叩きこむ。
「キィイッ!」
無事切り落とせたが、まだ油断禁物。
「からの【怒涛の攻撃】!」
出し惜しみ無しだ。
「はぁあああ!」
細めの枝を次々と打ち払う。
向こうの手数が多くて、こちらも流石に無傷とはいかないが、動けなくなるような傷ではない。
「キイィィーー!」
ステイトも矢を連射して、私を狙う枝を邪魔してくれている。
「もう一丁【憤怒の一撃】で、トドメ!」
木の幹に出来た顔の様な陰影の、口部分の洞に剣を突き刺す。
「キイィィー……」
ドリアードは、完全に動きを止めた。
モンスターとしての生は失われたと思う。
「【HP操作】!
アンジー、大丈夫ぅ?」
ステイトが、スキルで回復してくれた。
「回復と援護、ありがとう」
ステイトの弓技も、あれだけ正確な連射とか、かなり凄いと思う。
「えへへ。役に立って良かったぁ。
……このモンスターって、討伐証明ってどうするのぉ?
「討伐証明部位は、確か……」
止めを刺した洞に、手を突っ込む。
しばらく、ガサゴソする。
「あった」
ピンポン玉位の大きさ。木製に見えるが艶やかで、キャッツアイ状態の宝石の様な印象もある。
ドリアードの核だ。
討伐後でないと存在しないと言われる。
取らずに放置すると、核が他の樹木に移り、別のドリアードとして復活してしまうとも言われる。
最初のドリアードが、何故ドリアード化するかは分かっていない。
ただ、魔王が復活していたり、その時期が近づいてきたりすると、モンスターの活動が活発になってくるとともに、ドリアード化する樹木も増えると言われている。
「炭鉱の町のゴーレムと言い、魔王の復活が近いのかもね」
アレックスさん達を思い出す。
「ええ、嫌だなぁ。
僕らの村って、魔王城が近いらしいけどぉ、いつもどうしてるのかなぁ?」
そう言えばそうだな。
ステイトの言葉を聞くまで、考えた事も無かった。
でも、改めて考えてみても、あの辺境の村の人達が、慌ててる様子や困っているところが思い浮かばない。
「フェニーはどう思う?」
「ピィ?」
小首を傾げる小鳥、というには少し大きくなった愛鳥。
考えてみれば、この子も魔王城の近くに生息してたんだよな。
「まぁ、今は先ず、村まで無事に帰る事を考えよう」
「そうだねぇ」
教会の件で、ステイトとは話をしている。
今回の件は、司祭の単独の判断と横暴のため、一度は村に帰る。
その後、教会から正式にステイトに話があった場合は、その時に考える。
ちょっと判断保留、という感じもあるが、仕方ないと思っている。
なので、早く村に帰りたい気持ち半分、このまま旅を続けたい気持ち半分という感じだ。
***
「おっかしいなぁ」
「どうしたんだ?」
「あ、ギルドマスター。今日、2人組のパーティー登録をしたんですけど、何故かパーティー名に使えない単語が入った名前でしか登録できなかったんですよ」
「『○○と○○』?
ダメなのが2つも入ってるじゃないか」
「他に普通の候補をいくつも出してもらってたんですけど、何故か受け付け出来なくて、やけくそみたいに出してもらったそれで、やっと通ったんですよ」
「……案外、本物なのかもな」
「ええ!?」
読んで下さってありがとうございます。




