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11.パーティーガチャ

 



 翌日、ギルドで芋虫の体液を集めるクエストを受けたイツキたちは、巨大ガチャが置かれた広場の周りの商業区に来ていた。


「レン、買い物があるって言ってたけど、一体何を買うつもりなの?」

「まずはポーションだろ、それと腰に付けるポーチとかその他諸々だ」

「なんだか課金者って出費が嵩むね……」

「そうだな……」


 しばらく買い物をしていると、遠くに人集りができるているが見えた。


「なんだ、あの集まり?」

「うっすら、歌が聞こえる……」


 イツキはその歌に誘われるようにフラフラと人集りに向かっていく。


「おい、イツキ!」


 ハーメルンの笛のように惹きつけられていくイツキの後をレンが追うと、ハッキリと女性の歌声が耳に入ってきた。曲調はアニソンに近く、その歌声は力強くありながら、どうしようもない悲しみと、その悲しみを背負いながら先に進もうとしていると意思が伝わってくる。


「なんだ、この歌は……精神汚染か?」


 レンが普段聞いていた歌と違い、歌に乗せられる感情がダイレクトに伝わる現象に不快感を抱く。


「精神汚染って……この歌を聞いてそんなことを言えるのはレンぐらいだよ」


 非難げにイツキはレンの無粋な言葉に文句を言う。


 二人は人垣を掻き分けて、歌声の中心へと向かう。そこには木でできた簡素な舞台の上で踊りながら歌っているジュリアの姿があった。


「さっそくアイドル活動始めたんだ……というか歌が上手すぎる」

「……踊りも堂がはいってるな。普段から踊りをしていたのか?」


 歌もサビに入り、観客たちの興奮もピークに入る。隣の人の拳が当たったり、足を踏まれたり、と散々な目に逢いながら、あまりこのような空気が得意ではない、イツキとレンは逃げるようにこの場から去った。


「もうちょっと歌を聞いていたかったけど、あの中で聞く勇気はないなぁ」

「……私もないな」


 疲れたように二人は言うと、買い物の続きを始めた。



 必要なものを買い揃えた二人はそろそろ外へ行こうとしていると、後ろから声をかけられた。


「ちょっと待って!」


 二人が振り返ると走ってきて息を切らしているジュリアと、少し遅れて追いついてきたニジホがいた。


「はぁはぁ、ねぇ、さっきあたしの歌聞いてたでしょ。……どうだった? イツキくんも感想聞かせてくれたら嬉しいな……」


 恥ずかしそうに伏し目がちに尋ねてくるジュリアに、イツキは思いのまま答える。


「めちゃくちゃ歌が上手いし、聞いてるだけでなんか感情が揺さぶられた……歌を聞いてこんなの初めてだよ。それに本物のアイドルというか、それ以上に踊りも上手だったし。レンもそう思ったでしょ」


 レンはイツキの言葉に頷く。


「そ、そう……。そこまで言って貰えるとは思わなかった。あ、ありがとう……。ね、ねぇ、抱きしめていい?」


 目が血走っているジュリアの前にレンが立ち塞がりイツキを守る。


「どいて! じゃないとイツキくんを抱きしめられない!」


 乙女の姿をかなぐり捨て猛獣と化したジュリアに、レンは相も変わらず自分の好奇心を優先する。


「あの歌は一体どうなってるんだ? 普通、歌だけで歌詞にも含まれない感情がダイレクトに伝わってくるのはおかしいだろ?」

「……えっと、それは」


 獣はなりを潜めて、言いにくそうに口ごもるジュリア。しかし覚悟を決めたのか話し始めた。


「〝神〟のアクティブスキルに『伝道』ってのがあってね。……それの能力が言葉込めた感情を伝えるって奴なの。せっかく褒めてもらったのに、なんだか不正みたいだよね……」

「……別にそんなことはないと思うが。この世界はどうやらスキル主義らしいからな。先程熱狂していた奴らが、お前がスキルを使っていたと知っても、誰も文句は言わないだろう」


 珍しくレンがイツキ以外の人間をフォローする。


「……そうだったらいいけど」


 それでも不安そうなジュリア。そんなジュリアを見てられないイツキはあることを思いつく。


「俺がファン第一号になるよ! だから元気だして!」

「──うん、元気になった!! そうだよね、これがあたしの能力なんだから仕方がないよね!!」

「げ、元気になったなら良かったよ……」


 イツキは自分がジュリアをこの状態にしたと分かっていたが、それでもこの変わりようを見たら引いてしまうものは、それこそ仕方ないだろう。


 三人の話が一段落したのを見て、ずっと話しかけたそうにモジモジしていたニジホが勇気を出して話しかける。


「そ、その! じ、実はわたしも後ろで演奏していたんですが、気づきましたか?」

「えっ、そうだったの……?」


 歌声にしか意識が行かなかったイツキは、後ろでニジホが演奏していたことに全く気づかなかった。


 どよんとした空気を纏いながら、ニジホしゃがんで俯く。


「やっぱりそうですよね……。わたしなんかが目立つわけないですよね」

「ご、ごめん。……次は絶対に見るから!」


 フォローにもなってないフォローでイツキはニジホを慰める。


「私は気づいていたがな。……中々に上手だったぞ」


 少し恥ずかしがりながら褒めるレンに、イツキはニヤニヤが止まらない。


「あ、あり! ありがとうございます!」


 レンの言葉でどうやらニジホも元気が出たらしく、良かったとイツキは無出を撫で下ろす。


「図々しいって分かってるんだけど、もう一つお願いがあるの。わたしたちとパーティーを組んでくれない? ……まだ二人とも戦ったことがなくて」

「いいよ」


 イツキは自分たちを騙した人攫いを思い出し、二人が自分たちのような目に遭わないようにと思い頷く。レンは何か言いたげだったが、溜息をつくとやれやれと首を縦に振る。


「やっぱりイツキくんは優しいね。ありがとう!」

「よ、よろしくお願いします……」


 こうして四人パーティとなったイツキたちは準備万端だというジュリアとニジホと共に外へと出た。




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