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ルート日常  作者: まれ
9/15

ルート⑥十月のハロウィンと友達の幼馴染

二日遅れのハロウィン

俺の名前は陸人。天道陸人。高校二年生でごくごく普通の人間。

季節は秋で十月末。気温も下がりひんやりする時間が増え、秋を感じるこの頃。

「陸人もこっちこいよー!」

こいつは天海空。俺の唯一と言ってもいいほど仲のいい友人だ。高校に入ってから知り合ったが中学の頃にアメリカから引っ越してきたらしい。いわゆる帰国子女。両親は日本人らしいのでダブルとかではない。ただ、アメリカで仕事をするほど凄い人たちだそうだ。

 呼ばれていくとドラキュラがいた。

 そう今日はハロウィンだ。

 日本語で発音するとハロウィンだけど綴り的にはハロウィーンだよな。

 たしか、ケルト人の秋の収穫のお祝いと悪霊退散を目的にしたものだったよな。

 でも今はなんでか仮装大会みたいなことになってる。

 教室で仮装しているのはドラキュラもとい空だけではなかった。

「みんなおはよ!トリックオアトリート!」

 クラスの人気物、天神あまがみここあ。彼女の仮装は小悪魔みたいだ。

 よく似合っているとは思う。性格も少しそういうところがあるのは本人には内緒だ。

「で、陸人どれにする?」

 そう言って俺に複数の衣装を見せてきた。

 一つ目はこれまたよくあるゾンビ。

 二つ目は包帯。これはもはやコスプレなのだろうか。

 そして三つ目。アリス。ん?待てよ。なんでこれが候補にある。

「なんでアリスがあるんだよ」

 俺は直球に空に訊いた。

「え?かわいいと思ったからに決まってるだろ?なあ、ここあ」

「うん!似合うと思うよ?私よりかわいいとは思わないけど」

「冗談だよな?いや、もうこいつらに何を言っても意味はないか」

 そうもうここまでくれば俺が何かしら空の持ってきた衣装を着なくてはならない。

「正直どれも着たくない」

 俺は本音をそのまま言った。

「そっかー。ダメかー」

 予想外の反応を示した空に俺は驚いた。驚いていると新しいのが懐から出てきた。

 オレンジのかぼちゃに目と口が開けてある。そうかの有名なジャックオーランタンだ。

 これに関しては衣装というか被り物だな。頭にかぶっていればよさそう。

 この学校のすごいところは仮装したまま授業を受けていいというものだ。

 この場合被り物は視界が狭くなったり後ろの人に黒板を見せないというなんとも害しか生まないので今日一日反感を買いそうなのが懸念される。

 この学校のすごいところはもう一つある。

 それは教師陣も仮装して授業をすること。

 俺らは去年一度体験しているから今年は驚かないが去年はさすがに驚いた。

 これだけノリのいい先生たちなのでトリックオアトリートというとなんとお菓子をくれる。

 まあさすがに先生の自腹なだけにもらえる人数も限定されているわけだが。

 限定数は先生によって違うのも当然。先生の人気度が押し寄せる人数にも影響する。

 そう。人気がないのにたくさんのお菓子を用意すると、全然渡せなくて恥ずかしくなるという事故が起きる。

 工夫のしている先生は人気に関わらず担当クラスの人全員に渡すというパターンもある。

人気のない先生は配ることができていいのだが、人気のある先生がそれをやると担当じゃなかったクラスの生徒がずるい、いいなーという声が大きくなり収集がつかなくなることも過去にあったんだとか。

 人気のある先生は大変そうだ。人気のある先生は若い(つまり歳が近い)ことや授業が面白く優しい先生が多い。

 この学校の場合、こんな行事を先生もやってるのだから怖い先生なんてあまりいない。なんなら年寄りの先生ですら楽しんで毎年参加している。

 ガラガラ。

 教室のドアが開く音が聞こえた。

 担任が来たのだろう。

 

『うおーーーー』

 俺が見るより先に他の男子生徒が雄たけびを上げていた。

 うちのクラスの担任は一番人気の女性教師・伊丹美穂。

 最年少の女性教師で自称二十四歳。教科は英語で身長は百六十センチほど。

 彼女の今年の仮装は黒い大きなとんがり帽子をかぶった魔女。服装はブラウスの上に黒のローブを羽織った簡単な仮装みたいだ。というか去年と変わってないような。

「ホームルーム始めるよー!」

 それから連絡事項とハロウィンに関する注意事項を言ってホームルームは終わった。




 授業はほとんど何もなく終わった。先生たちがいろんな仮装をして授業を淡々とやっているだけなのだから当然と言われれば当然。毎回盛り上がるのはどんな仮装をしてお菓子を配る先生ならお菓子で生徒がはしゃいで授業が始まるまでに時間がかかる。むしろ時間を稼いでいた気がする。

 今日のメインは放課後に予定されている生徒会主催のハロウィンパーティーだ。全校生徒だけでなく教師陣も参加する。これも毎年開催されているこの学校の伝統の一つだといえる。場所は体育館。みんなが一斉に向かったことで混雑しなかなか入れなかった。二十分ほどしてようやく入ることができた。


「お待たせしました!これから生徒会主催ハロウィンパーティーの開会を宣言します!」

 開会宣言と同時に音楽が流れ一気にパーティー感出た。生徒会の人がMCを担当し、進められていく。何を進めていくのかそれはもちろん出し物だ。毎年有志で募集し、生徒会に企画を認められた人が出てこれる。募集テーマはハロウィンのため仮装して漫才やライブをするところが多い。舞台の下にいる一般人には見ているだけで飽きないようドリンクを生徒会とその手伝いが配っている。配っている彼、彼女らは執事やメイドといった仮装というかコスプレに近いもので統一されていた。ドリンクは一見シャンパンに見えた。だが未成年が集まる場所そんなことはない。

「どうしたの?飲まないのソレ」

 小悪魔の仮装をした天神が訊いてきた。

「いや、この被り物デカすぎてどうやって飲もうか考えてたんだ」

 咄嗟に嘘ではないが今考えてたこととは違うものでごまかした。

「それならストロー持ってきてあげようか?」

「いや、自分で取りに行くよ」

 


無事にストローを得ることができた俺は天神の元に戻り一口飲んでみた。

 味はジンジャーエールだった。どうやらジンジャーエールの炭酸割だったようだ。見た目はシャンパンにそっくり。

「さっきね。いろんな飲み物があったんだ。例えば赤ワインに見えるくらい濃いぶどうジュースとかあと本物のカクテルとか。あーもちろんノンアルコールのやつ」

「なあさっきから空どこいった?」

 そう空がさっきからいない。入ってくるときまでは三人一緒にいたのだが今は天神と二人きりになってしまっている。

「空なら大丈夫でしょ。私といるの嫌?」

「いや、嫌じゃないけど…」

 周りの視線が痛い。天神はクラス一の人気者だ。そんな人と俺が二人でいればそういう視線がくるのもわかるが正直やめてほしい。だって俺から近づいてきてるわけじゃないから。向こうからくる。

「空と幼馴染だろ?心配じゃないのかなって」

「いいのよあんなやつほっておけば腐れ縁だし」

 彼女は空と幼馴染でアメリカ行きを理由に疎遠になったが高校で再開したらしい。高校が同じになったのは完全に偶然なんだとか。

「天道くんにお菓子ってあげたっけ?」

 突然そんなことを訊いてきた天神に困惑する。

「ああもらったよ朝のホームルーム前のときに」

「そ、そうだよね」

 なんか顔が少し赤いような。

「私、あげたけどあなたからもらってない…だから」

 あれ?あげたようなあげてないような。

「い、いたずらするわ!」

 そう言ってさらに顔を赤くした。

「わかったわかったこれあげるからいたずらしないでくれ」

「ありがとうこれはもらっておくわ。でも、する」

「え?」

 話が違う。通常ハロウィンはお菓子がほしいでもくれないならいたずらする。という話だったはず。なのになぜ、今この瞬間適応されないのか。理由はこれしかないだろう。

 『もういたずらする気満々だったから止められない』。

「好き」

 は?いや、これがいたずらなのか。

「冗談なんだよね。これがいたずらの内容なんだよな天神」

 顔を真っ赤に染めた彼女はさらに言う。

「冗談じゃ、ないよ?本気だよ」

 俺は困惑していた。え?は?それってどういう……。

「なんてね!」

 そう言って彼女は倒れこんでしまった。なんとか抱え込んだ俺は空を電話して呼んだ。

 すると空がすぐにきた。

「いたいた。で、ここあは?」

「ああ、たぶん寝てる」

「じゃあ一旦端っこに運ぶか。じゃあ、陸人よろしく」

「え?空は何しに」

「俺はここあの荷物持ってくるから」

「わかったよ」

 体育館の端っこに天神を連れてっている途中、伊丹先生がいた。ずいぶん慌てているようだった。

「伊丹先生どうしたんですか?慌てて」

「それが、こっそり持ってきたお酒がなくなって…」

 それは大変だ。誰かが間違えて飲んでしまうかもしれない。

 俺は天神を抱えたまま伊丹先生に訊いた。

「どんなお酒がなくなったんですか?」

「梅酒」

 あれ?さっき梅ジュースだって聞いたような記憶があって天神を見た。

「先生、心当たりがあります」

 先生に天神が梅ジュースと思って飲んだかもしれないことを話した。

「やらかしたわ。完全に。これは説教ものだわ」

 空が天神の荷物を持ってきたことで天神は途中退場になった。

 そしてまたしても俺が抱えるというか今度はおんぶして天神の家まで送ることになった。

 俺は家を知らないから空は道案内役兼荷物持ちとして一緒に来てもらった。


ありがとうございます

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