ルート③ 6月の球技大会とライバル (前編)
2つ目の話ですが、時系列関係ないので安心してお読みください
俺の名前は陸人。天道陸人。高校二年生でごくごく普通の人間。
季節は梅雨で六月中旬。雨や曇りの多い期間であり、初夏の暑さに加え湿気のじめじめとした環境と五月病と相まってクラスの空気が重たい時期だ。
名前の刺繍の入った体操服に身を包むが一時間目から体育というわけではない。今日の行事で必要なのである。球技大会だ。しかしあいにく天気は土砂降りの雨だった。
「陸人、早く体育館いこうよ」
こいつは天海空。俺の唯一と言ってもいいほど仲のいい友人だ。高校に入ってから知り合ったが中学の頃にアメリカから引っ越してきたらしい。いわゆる帰国子女。両親は日本人らしいのでダブルとかではない。ただ、アメリカで仕事をするほど凄い人たちだそうだ。
「あぁ、そうだな。それにしてもなんでバスケなんだか」
「去年もやったじゃん、陸人忘れたの?それに毎年先生が説明してるし」」
「いややったのは覚えてるけど……」
「はあ……」
空はそんな俺に呆れたようで溜息を吐いた。
空曰く、うちの学校の伝統として毎年六月中旬頃に球技大会が行われる。内容は男女ともにバスケットボール。各学年男女別にトーナメント制で行われ、優勝クラスをそれぞれ決める。俺たちの学年は四クラスなので、二回勝てば優勝することができるとのこと。
「なあ空。今年の優勝候補はどこだ?」
毎年クラスが変わるため気になるところであり、毎年 各グループ内で話題になる。
「そうだね~。今年は四組がダントツで強いと思う。うちもそこそこ強いんだけど、なんせ四組にはバスケ部員が六人いるんだよ」
なんだよそれ。固まりすぎだろ。
ちなみに俺らは二組でバスケ部が四人いる。そのうち一人が空。
「それだけじゃなくてね」
「?」
「バスケ部最強タッグの双子が両方四組にいる」
「は?チートだろもう」
「ルール上バスケ部は一チームに二人までしか入れられない。でも……」
「二人で十分……」
「そう。これがすっごく厄介なんだ」
俺たちのクラスが優勝することが急に絶望的になったことを感じた。
「よう空」
そこに現れた二人がいた。顔立ちの非常に似た二人が。
「亮也、俊也」
「今年は俺たちが優勝をいただくぜ」
実は昨年の優勝クラスは俺たちの所属していた一年三組だ。どうやら彼らはリベンジを果たす宣言をしに来たみたいだった。一方的に宣言を終えた彼らはすぐその場を去った。
「陸人、彼らがさっき話していた双子だよ。声をかけてきたのが林堂亮也で宣言してきたのが林堂俊也」
噂をすればなんとかってやつか。
「トゥントゥントゥーン♪五分後の九時三十分から第一試合を始めます。対象のクラスはコート横で準備してくださいトゥントゥントゥーン♪」
第一試合は俺ら二組と三組だった。
三組はバスケ部員が二人いる。油断は出来ないが実力からして負けることはないというのが空の見解だ。俺は第四クォーターにしか出ないのでしばらく観戦することにした。メンバーは俺、空、バスケ部の一人内山、木本、林田。
最初のクォーターはジャンプボールから始まる。次から負けているチームからのボールとなる。ただし、同点の場合は再度ジャンプボールとなる。
ジャンプボールを制したのは、相手チームだった。背の高い人がいた。しかしそこから試合は泥試合となった。
その結果、最初の十分は四対四の同点となった。続く第二クォーターは十対六で二組がリードする展開となった。本来のバスケであればここで休憩を挟むが選手は原則一試合一回の出場権を持つため休憩を挟むことなく行われた。第三クォーターではこちらに二人バスケ部を置いていたため二十対六とバスケ部のいない三組との差が開いた。
ここから第四クォーターがようやく始まる。
「ようやくだな空」
「そうだね。この点数差があれば楽に勝つことができるよ。もちろん油断大敵だけど」
「そうだな。ボール持ったら空か内山にパス回せばいいんだよな?」
「基本的にはね。もし空いてなかったら他の二人に回すこと」
「了解。やるか」
ホイッスルが鳴り、タイマーの時間がゼロへ向かい減り始めた。
二組が現在勝っているので三組ボールつまり相手ボールからスタートした。
相手一人こっちの方に自信満々に突っ込んできた。それを見た木本が阻止しようとすると華麗によけられてしまった。そのせいというべきか相手の有利数を使った連携プレーにより簡単に二点取られてしまった。
「ドンマイドンマイ。気にするな。今のは仕方ない」
そう後ろから内山の声が聞こえた。続いて空が言った。
「そうだね。でも大丈夫だよ。ぜんっぜん問題ないと思う」
このチームはバスケ部である二人に引っ張られて何とか立て直した。
そこから取って取られてを繰り返した結果、二十八対十八で二組は三組に勝利することができた。
そして五分後には一組と優勝候補である四組の試合が始まり、苦戦することなく四組が勝った。
「やっぱり四組は強いね」
「そうだな。第一、第二クォーターで一人ずつ、第三、第四クォーターで二人バスケ部員を入れてるのが強すぎる」
「それで毎クォーター圧勝してたからね」
ここで十分間休憩があって、そのあと最下位決定戦を行い、最後に決勝戦を行うらしいのでしばらく時間ができた。
と言っても、観戦をしていれば一瞬で決勝戦の時間となった。
最下位決定戦の結果、男子は三位が一組、四位が三組。女子は三位が三組、四位が二組だった。
うちのクラスはどうやら運動が苦手な子が多かったらしい。何人か頑張っていたみたいだが、いずれも勝てなかった。どの試合も点数が張り合っていた。つまり女子はどこもほぼ互角だった。といえるだろう。
そして本日のメイン決勝戦が始まる合図のホイッスルが鳴った。
ギャラリーも多く基本的には同じクラスである二組の女子、三組の男女。そこにさらに試合に出ていない四組の一部の女子。
まずジャンプボールを制したのは二組の生徒だった。
最後までお読み頂きありがとうございます
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