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ルート日常  作者: まれ
2/15

ルート② 5月のキャンプと恋 (後編)

後編です

前編をまだ読んでない人は前編を読んでください

「陸にぃ遅い!」

「悪かった。思ったより長い間散歩に出かけてたみたいだ」

「ともあれ、陸人と大成が帰ってきたし食べようか」

「食べよ!食べよ!」

(あかり)ちゃんは待てない様子だった。

一方、三川姫はというと、氷川は犬山をチラ見したのが俺には見えた。当人は気づいてないみたいだったが。千田川は空にカレーを注いで貰ってテンションが上がっていた。真川はずるい、私にも早く入れてと嫉妬じみた気配を出していた。三者三様の行動をしていた。

「いただきます!」

みんなで声を合わせ言った。

ちなみにこれは星ちゃんのリクエストだ。

「美味しい」

誰かがそう言った。

俺も同じ感想を抱いた。ちゃんと作れている。

俺たちが作った方(主に三川姫が作ったもの)はいわゆる普通の余計なことを何一つしていない標準的なカレーだった。そう市販ルーを溶かしたような味。

一方、天海家のカレーは少しさっぱりとした味付けで沢山食べることができるカレーだった。

そして数十分後、なくなった。食べ切ったのだ。

あの量を。

お腹いっぱいで少しあくびをした、直後だった。

「じゃあ、そろそろ始めますか!」

空が言った。

「私!持ってきたよ!」

「私も!」

真川が元気良く言った。続いて千田川も声を上げた。

「もちろん俺も持ってきたぜ」

犬山も言った。

「わ、私も持って来ました。花火」

控えめな声で氷川も言った。

「みんな持って来たの?いっぱいあるわね。うちも持ってきたし」

おばさんもお徳用のいっぱい入っている花火を掲げて言った。

あれ?良く見るとみんな持ってきている。

実質花火を持ってきてないのは俺だけだった。

チラッと見えた。空が爆笑していた。

「おい、空どういうことだ?」

笑いながら空は答えた。

「陸人だけ花火のことを教えられず、一人だけ持ってきていないことに焦るドッキリ〜」

「長い!」

すかさず犬山がツッコんだ。

「どう?陸人、焦った?」

「一言で言おう。は?」

もうこの一言でしかない。意味がわからないと。

「ごめん空、俺さっき散歩のときに花火すること言っちゃった」

そういえばそんなこと言ってた気もする。

「まあ、いいやそれは。想定内というか」

空はそんなことを言った。

「気を取り直して、花火しましょっか」

「そうですね。さっさとしましょう」

「やるー!」

みんなでテンションを上げながら先程言った川に行った。

「ここね」

千田川が放ったその一言で犬山の顔が若干強ばった。 緊張してるらしい。

「パァーとやろうぜ!」

俺はそんな犬山の緊張を解すために声を上げた。

ここから先はみるみるうちに時間が過ぎた。色が変わる放出型の手花火だったり、蛇玉という黒い物体がただひたすら出てくる地味な置花火、ちっちゃな打ち上げ花火、儚い線香花火。

そして、告白。それは一人の男または女が他の男または女に対して自分の気持ちを伝えることである。非常に難しく勇気のいる行動である。

犬山の告白が始まろうとしていた。

「ちょっといいかな?氷川さん」

「は、はい。い、いいですけど」

いよいよ犬山の告白が始まることを犬山のこの言葉で悟った俺はこっそり二人に付いて行くことにした。興味があるからというのと犬山の頑張りを少しでも見届けたいと思ったからだ。あれ?犬山とそんなに仲良くなったつもりないんだけどな。そんなことを考えていると犬山が再び言葉を紡いだ。

「ごめんね。片付けしてたのに」

「い、いえ。き、気にしないでください。他のみんなでも十分にできることだと思うので」

「……」

二人の間に暫し沈黙が流れた。

「あ、あのさ。どうだった今日」

「きょ、今日ですか?そうですね、実は初めてなんです。友達とキャンプしたの」

「そ、そうなんだ……」

「も、もちろん犬山くんも友達の一人ですよ?」

「!?」

今の氷川の一言に犬山は衝撃を受けたようだった。もしかしたら今のは告白される前に先に友達と言って遠回しに断ったのではないか。

今のセリフは誰がどう見ても恋を良く知らない俺でさえ聞いて思った。

犬山は衝撃を受け、内心傷づいているとあっという間に予定地である池に着いた。

さっきの事があったのに犬山は言えるのだろうか。俺は気になった。もし、というかほぼ確定しているが、ここで氷川に振られるという事実がわかっていても犬山は氷川に告白をこの場所でするのだろうか。そしてもし、告白する事が出来たら周りの人は犬山を褒めるべきだろう。『良く頑張った』と。

「お、俺も氷川のこと気が合っていい友達って思ってる」

「ありがと」

「でも!」

もしかしなくてもこれは行くのでは?期待と応援の思いが強くなる。

「それ以上に氷川のことが好きだ!」

「!?」

みるみる氷川の顔が赤くなった。びっくりしているだろう。迷惑と思っているかもしれない。

暫しの間沈黙が続いた。

氷川は何を悩むことがあるというのだろう。付き合いたくないならきっぱり断ればいいものを。

「わ、私なんかでいいの?」

「え?」

予想外の返答に俺と犬山は同じような反応をとった。

まさかOKだというのか。あの言動をしておいて。断るアレだったろ、完全に。

「OKなのか?」

聞いた。どうやら、犬山も聞き間違いだと思ったらしい。

「う、うん。私なんかでいいなら」

「なんかじゃない!一番好きなのは、ゆ、ゆきなんだから……」

二人とも耳まで真っ赤になった。そりゃそうな状況だが相当恥ずかしかったみたいだ。

「ありがと!うれしい!よ、よろしくね大成くん」

「お、おう」

うまくいったみたいだしそろそろ戻るか。

あ、そうだ言っておかなくちゃな。

おめでとうと『よく頑張った』と。

俺がみんなのところに戻ってきて数分後二人が戻ってきた。

その間何があったのか何をしていたのか俺の知るところではない。

二人が手を繋いで帰ってきたことに千田川が気づいた。驚き小声を発した。

「まじ?」

二人にも聞こえていたらしく、苦笑いした。

そしてすぐに千田川と真川は氷川を取り込み問い詰めた。

引き離された犬山は照れながらこっちにきた。

「おめでとう」

開口一番にそう告げた。

続いて空もお祝いの言葉を述べた。

「というか途中まで見てたんだろ?天道」

「そうなの?陸人、僕にも言ってよ」

「そうだけど、空も来たら男がおじさんしかいなくなる。それは流石にまずいだろ」

「確かに」

「俺、寝るわ」

「もう!?早くない?」

時間間隔はなかったがスマホの時計を見ると二十三時だった。確かにいつもよりは早かった。

「眠いもんは眠い」

いつもよりも早く起きて、さらにいろんなことをしたしな。

この日、犬山と氷川は付き合い始めた。

千田川と真川はちょいちょい空にアピールをしていたが全て跳ね返していた。今は付き合うつもりはないと。

ぼっちの俺に春は来なかったみたいだ。というか季節は晩春なのですでに通り過ぎたのかもしれないな。

「陸にぃ、どうしたの?」

星ちゃんが目の前になぜかいた。

「眠いから先に寝る」

「そうじゃなくて」

「?」

どういうことだろう。これ以外に答えるものがない。

「いいなぁ恋。って思ってたんじゃないの?」

エスパーか!星ちゃんが今すごく怖く見える。眠気が吹き飛ぶ程に。

「図星かな?」

「……」

無言になってしまった。言葉が出ない。

「図星みたいだね。好きだよ?陸にぃのこと」


最後までお読み頂きありがとうございます

気になった方はこれからも読んで頂けると嬉しいです

コメントやアドバイスがあれば是非お願いします

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