【短編】ルート⑨ 二月のバレンタインデーと空
ギリギリ二月終わる前の投稿。
今回は空が主人公です。
僕の名前は空。天海《あまみ》空。高校二年生で天道陸人の唯一の友人だ。
両親は日本人だが、アメリカで仕事をするほど凄い人たちで小学校低学年から中学生の途中までアメリカで過ごした。いわゆる帰国子女ってやつだ。
季節は真冬。二月中旬、極寒の寒気が襲い雪が降り積もったり、眠くなるほど暖かい日もあるこの頃。
今日はバレンタインデー。日本では女の子から男へチョコをプレゼントしたり、友チョコと言って友達にプレゼントするそんな日だ。昨日うちで妹の星が渡すんだと言ってチョコを手作りしていた。渡す相手はおそらく陸人だろう。陸人本人は非常に鈍く星の好意に全く気付いていない。まあ、そんな陸人のことは置いておいて。
毎年のことなんだけど、うれしいことにチョコをもらう。それもかなりの数。そのため対策というか大きめの紙袋を持ってきている。作ってもらって勇気を出して渡してくれているのはすごく難しいことだってわかっているが食べきれそうにもないときがある。それはいくつか星にあげたり、陸人にあげたりしている。
ほら、最初のポイント。校門だ。そこには教室では渡せないくらいの関係であまり深くない後輩とかがいる。今年は三人の一年生の女の子と校外の女の子二人、計五人が校門で待ち伏せしていた。
「天海先輩!これ受け取ってください!」
そして、五個チョコをもらった。この程度なら全然いいんだがこれで終わることはない。
ほらまた。今度は下駄箱。上履きの上とラックで仕切られたその上の段のところに一つチョコが置かれている。差出人の名前はない。お礼はいらず、届けばいいという考えの人達なんだろう。誰からかわからないというのは少し怖い部分がある。だが、ここにずっとあるのも邪魔だ。もらっておこう。これで、チョコは七つになった。まだ、教室に辿りついてないのにこの量は流石に周りの男子生徒の視線が痛い。いつ襲われるかわかったもんじゃない。ちなみに襲われたことは一度もない。一つくれと土下座されたことはあるが。
さて、ようやく二年二組の教室に着いた。ここからが本番だ。
まず、教室に入ってすぐに三つ。席に着いて机の中を見ると三つ。朝のホームルームが終わり、授業の準備のため自分のロッカーを開けると九つ。帰ってきて、また机の中を見ると一つ。昼休みになると廊下で女子生徒に会うたびに一つずつ。教室に戻ってくると一つ渡され、机の中を見ると呼び出しの手紙が十通以上。当然、すべて回収しに行った。午後の授業が終わり、部活に向かう途中でまた五つ貰った。部活中にも四つ貰った。終わったあとに二つ貰い、校門のところで六つ貰った。貰ったチョコの数は五十八個となった。今年は昨年よりも十個ほど多い結果になった。冒頭に話した通り、こんな数のチョコは食べきれない。受け取らないとなれば、それはもしかしたら捨てられてしまうかもしれない。そう思って全部受け取ることにした。いくらチョコレート会社が売り上げを伸ばすために作ったイベントだとしてもそうなってしまってはチョコレートを作っている人達は素直に喜べなくなる。
そんな気がするのだ。
毎年、僕はこんな感じでバレンタインデーを過ごすことになる。
学校の帰り道では大量のチョコを持って行ってた大きめの紙袋に入れ、両手で抱えながら帰ることになる。家に着くと、妹が出てきた。そして、いつもこう言われるんだ。
「お兄ちゃん。その量は流石にキモイ」
最後までお読みいただきありがとうございます。
他の作品もよろしくおねがいします。
次回で一年になるので最終回の予定です。
またどこかのタイミングで続くかもしれませんが。