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ルート日常  作者: まれ
13/15

ルート① 一月の始まりと父の遺品

あけましておめでとうございます。


 俺の名前は陸人。天道陸人。高校2年生でごくごく普通の人間。季節は寒い冬。なので紺色のブレザーに2年前に事故で亡くなった両親の主に父の形見のマフラーを首に巻いて登校している。なんかごめんってか?こんな話するのこの2年で慣れたから別に大丈夫だ。って誰に話してんだ俺。時刻は8時半。教室には9時までに入ればいい。ここからだと教室まで15分もかからない。間違いなく間に合うだろう。そんなことを考えT字路を左に曲がろうとすると、こんな狭い道で凄いスピードを出したトラックが突っ込んできた。俺は突然のことで驚き尻もちをついてしまった。痛いな、全くなんでこんな時間にトラックなんかが……いきなり、首根っこを引っ張られマフラーで首がしまった。そして為す術もなく意識が遠のいた。

電話が鳴った。友人からだった。時刻は9時半前。約1時間もこの場所で意識を失っていたらしい。

「陸人、授業始まっちゃってるよー?」

「空か。ってか授業中だろ!どーやってかけてんのさ」

 彼は天海空。俺の唯一と言ってもいいほど仲のいい友人だ。高校に入ってから知り合ったが中学の頃にアメリカから引っ越してきたらしい。いわゆる帰国子女。両親は日本人らしいのでハーフとかではない。ただ、アメリカで仕事をするほど凄い人たちだそうだ。

「で、陸人。学校にも僕にも連絡なしで学校に来ないってどこで何してるの?」

「ああ、それなんだが、登校中にいろいろあってな。詳しくは着いてから話すよ。先生には今から向かうって言っておいてくれ」

「ああちょっと。りk」

 俺は一方的に電話を切った。今から行くとなると1時限目がちょうど終わる頃に教室に着くな。

そして、時刻は9時48分。教室に着いた俺はまだ授業は終わってなかったが教室に入った。

「先生!遅れてすいません!」

「おお、来たか、天道。席に着け」

「はい」

 俺はようやく席に着いた。がここで授業が終わった。

「で、何があった訳?マフラー巻いてないしいつもみたいに」

「あれ?本当だ。あの時盗まれた?」

「マフラー盗まれたってそんなことあるのか?とりあえず、陸人何があったの?」

 俺は空に今朝起きたことを話した。

「えぇ……つまり、君は登校中にトラックが突っ込んできて驚いたところを襲われたと。そしてその時にマフラーを盗まれたと」

「おそらくな」

「君って人は全く。そのマフラー何かあるの?」

「嫌全く普通のマフラーだけど?父親の形見ってぐらい」

「陸人のお父さんどこで買ったんだろな、それ」

「さあ?大切にしてた物だし、母さんに貰ったマフラーだったんじゃないか?」

「まあいいんだけどさ、陸人のマフラーってこんなんだったよね?」

 そういうと空は俺にスマホを出してきた。

「ん?あっ……」

 確かにそこには俺が持ってたやつと同じ柄のマフラーがオークションに出されていた。そして目の前で取引が終わりソールドアウトになってしまった。

「やっぱり陸人のでびっくりしちゃった?あっ、取引終わっちゃったのか。ごめんごめん」

 そう言いつつケラケラ笑う空。いや、こっちは笑い事じゃないんだけど……。

「じゃあ、取り返しに行く?」

 は?意味がわからなかった。取り返すも何も盗んだ犯人はわからないし、出品もされ売り飛ばされてる。それに、取引も終わった。もう無理でしょ。

「陸人、知ってた?僕達のクラスメイトにハッキングが得意な子がいるの」

「いや、知らねーよ。初耳だ」

「そうだよねー。僕が居ないとぼっちだもんね君」

 コイツ。本当のことだから、言い返す言葉がない。が何でも言って言い訳じゃないからな

「ねぇねぇ、花山くん。依頼があるんだけど」

 花山。コイツがハッカー?俺のイメージだとハッカーってみんな眼鏡かけてるイメージがあるんだけど花山は眼鏡をかけてなかった。その代わり前髪が長めだった。その代わりってなんだ?まあいいや。

「あ、天海くん何かな?」

「えっとねー、このサイトのこの商品の買い手と売り手情報、商品の位置を割り出して欲しい。報酬は弾むよ」

「わ、わかった。でも2時限目の後に来てほしい。時間が欲しい」

「ありがとう!花山くん。だってさ陸人、良かったね」

 そんなんで引き受けて良かったのか花山。

 2時限目の授業が終わり、俺と空は花山の席へ向かった。

「花山くんどうだった?」

「あ、天海くんと天道くん。バッチリわかったよ」

「さっすがー花山くん。頼れるー」

「ただね、ちょっと問題があってね」

「なになに?」

「それが売り手も買い手ももちろん商品も海外にあるみたい」

「売り手は韓国ソウル、買い手はイギリスのロンドン。商品は今飛行機でロンドンへ向かってる」

 今の時刻は10時51分。今から行くと現地時間で15時半頃にロンドンに着くことになる。

 確かに厳しい。

「行こ!陸人!今すぐ」

「えっちょっと!空!航空券どうするの?お金どうするの?」

「僕が出すよ!」

 無茶苦茶だもう。なるようになれ。

 俺たちは3時限目が始まる前に学校を出て空港をに着き、11時過ぎに飛行機に乗り込みロンドンへ向かった。

 そして13時間半のフライトを終え、現在地ロンドン。日本時間は日を跨ぎ0時半過ぎ。現地時間は15時半過ぎ。若干の時差ボケをしつつも買い手の住所へさっさと向かった。

 買い手の名前はベンジャミン・コンフィールド。ロンドンで警察官をやっているらしい。

 俺と空はタクシーを呼び、住所のメモを運転手に渡すことで16時前に買い手の家に着いた。

「ここみたいだね」

「でかいな」

「そらそうでしょ。警察官のお偉いさんらしいし」

「お偉いさんなのは初耳だ。で、ここからどうするの?」

「連絡しておいたから鳴らせばいいと思う。僕がやろうか?」

「いい、自分でやる」

 しばし沈黙してると、門が開いた。

「入れってこと?」

「そうなんじゃないかな」

「I’ve been waiting(やあ、待ってたよ)」

 急に声をかけられたが俺は英語が全く出来ない。空に翻訳をお願いするしかないな。

「空、翻訳頼む」

「まあそのつもりで一緒に来たんだけどね。お金はついで」

 お金払うことがついでって意味がわからん。コイツ金銭感覚バグってるでしょ。

「Thank you for welcome us(私たちをわざわざお迎え頂きありがとうございます)」

 空は英語でそう男に返した。つまりこの男がベンジャミン・コンフィールドなのか。

「Come in(入って)」

「Thank you」

 空がそう返したので俺も返すことにした。

「Thank you」

 にっこり微笑まれた。

 そして俺たちは応接室に通された。

 そこには、俺の盗まれたマフラーがあった。

 空が事の経緯を男に英語で話した。

 ここから先は空に翻訳してもらった内容を聞こう。

「つまりこのマフラーは彼の物だと」

「そうです。今朝彼が盗まれたマフラーです。なので返して頂きたい。もちろんタダでとは言いません。言い値で買いましょう」

「オークションで払った金額より高くなるぞ?」

「構いません」

「そうか。しかし残念だな」

「何がです?」

「これは20年ほど前に盗まれたこの国の国宝のマフラーだ。他所の国の人間に売るわけにはいかない」

「なんだって!」

「私の先祖はかつての王家ハノーヴァー家に仕えていた。当時の君主ヴィア・ハノーヴァーから愛と信頼を込めて頂いた代物だ」

 俺と空はその事実に驚いた。まさか、イギリス王家の物だったとは。

「じゃあ、どうして父さんの元にあった?」

「盗まれた物を買ったか直接盗んだのだろう」

「そんな!父さんは盗みなんて」

「とりあえず、窃盗犯の可能性がある。お前たちを拘束させてもらう」

「陸人逃げろ!捕まるぞ!」

 空はそう叫んだ。しかし、もう遅かった。警備員が2人を完全に囲んでいた。

 そして、呆気なく俺と空は捕まった。時刻は16時15分だった。わずか15分ほどでこうなることは誰が予想したことか。盗まれたマフラーを取り返しに行くそんな軽い気持ちでいたはずなのに。日本から遠く離れたこのロンドンで初めて前科が付くとは。しかも冤罪。

 その後、俺たちはロンドンの刑務所の牢屋にぶち込まれた。納得はいかなかった。が、向こうは聞く耳を一切持つことはなかった。その間も空は抗議をしてくれてた。お金での解決も試したみたいだったが上手くはいかなかった。

「父さん、どうしてこんなことなったんだ?教えてよ……」

 俺の呟きは虚しく散った。


ナンバリングでわかるかもしれないんですけど、実はこれ一番最初に出そうと思って書いた話で一年前に書いたやつ無修正なんですよね。

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