ルート⑧ 12月のクリスマスパーティー
三話目
俺の名前は陸人。天道陸人。高校二年生でごくごく普通の人間。
季節は冬。十二月下旬、冬の寒気が襲い雪の降る地域もあるこの頃。
「陸人も早くこいよー!」
こいつは天海空。俺の唯一と言ってもいいほど仲のいい友人だ。高校に入ってから知り合ったが中学の頃にアメリカから引っ越してきたらしい。いわゆる帰国子女。両親は日本人らしいのでダブルとかではない。ただ、アメリカで仕事をするほど凄い人たちだそうだ。
今日はクリスマスイヴである。毎年の恒例なのだが、天海家でクリスマスパーティーをすることになっている。呼ばれているメンバーは俺、天神、天ノ川先輩。天ノ川先輩呼ぶってどういうことなのかわかってるのかな。あの人めっちゃ大食いだからとんでもない量と予算が必要だ。もしかしたら、すごい人達だからそんなの感じないくらいお金もらっているのかもしれないけど。
時刻は十八時半。場所はまだ自分の家だが、玄関でそろそろ出る準備をしている。ニュースの天気予報によると夜の気温は四度。かなり寒い。日本列島北部の雪が降りやすい地域では既に降っているんじゃないかと思う。
「よし、出るか」
俺は家を出てすぐ隣にある空の家へ向かった。徒歩十秒である。
ピンポンとなる呼び鈴。待っている間にも冷たい風が頬を撫でる。
「陸にぃ、待ってたよ」
この子は空の妹の星ちゃん。
「もうみんな来てるよ」
どうやら一番最後だったらしい。それは申し訳ないな。
俺は星ちゃんに案内され、天海家のリビングへとお邪魔した。
「陸人、ようやくきたか」
「天道くん、こんばんは」
「陸人くん、待ってたよ」
空、天神、天ノ川先輩の順に声をかけられた。
おっすみたいな感じを出しながら会釈をしこたつに座った。
天海家には家族団らんと食事を囲むためのテーブルとテレビ前にあるこたつがある。今回のパーティー会場はこたつの方。みんなでこたつでぬくぬくしながら楽しむのが今回の目的だと以前空が言っていた。
こたつの席順はこうだ。
ドアに近いところからリビングの中央へ一周。俺、星ちゃん、空、天神、天ノ川先輩である。
パーティーと言ったら豪華なご飯ということでまずはご飯タイムである。
出てきたのはたくさんのKCのオリジンチキンとインパクトがデカいPローストチキンだった。それ以外にも栄養面での小鉢がいくつか。白米も追加で来た。天ノ川先輩のやつだけマンガ盛りなんだけど。オリジンチキンの方は15本以上あるな。余れば全部天ノ川先輩が食うだろうから多い分には困らない。
星ちゃんが席を立った。
「今日は天海家のクリスマスパーティーに参加いただきまして誠にありがとうございます」
「星ちゃん、なんか固くない?」
天神がみんなの思っていることを代弁してくれた。
「っほん。では!今年も楽しみましょうー。かんぱーい!」
「「かんぱーい」」
みんな未成年なのでもちろんジュースで乾杯をし、パーティーが始まった。このメンバーでの開催は昨年に引き続き二回目だ。それまではアメリカにいた。そこでよくパーティーをしたことでイベントがあるごとに開催するようになったと空が言っていた。
一時間半後、大皿に乗っていたすべての料理がなくなった。実は途中でフライドポテトが到着し、大皿に盛っていたのだがそれもきれいさっぱりなくなっていた。多分、天ノ川先輩一人だけでここにあったうちの半分くらい食べてる。さすが食欲魔人。今のは絶対言っちゃダメだけどいつかポロっと出ちゃいそう。
本来ならここでケーキと行きたいところだが、先輩以外みんなわりと膨れていた。はずだった。出てきたケーキを見た瞬間、星ちゃんと天神が復活していた。あれですか?甘いものは別腹ってやつですか?そうですか。俺は無理です。
ケーキはホールでサイズは6号。これはおじさんとおばさんも食べるため。白いホイップで飾られイチゴがドーンと8つ乗っていた。ど真ん中にはホワイトチョコで作られたプレートが。そこにはMerry Christmas!!とチョコレートで書かれていた。
早速真ん中のプレートを誰が食べるのかで取り合いになっていた。争っていたのは女子三人。空がじゃんけんしろと言ったおかげでじゃんけんで決めることになった。勝ったのは天ノ川先輩。パー、パー、チョキの一人勝ちだった。
取り分けられたケーキもすぐになくなり、今度こそ次の催しへと移った。そうプレゼント交換だ。ただ単に渡しても面白くないから誰からのプレゼントかわからないようにやりたいと星ちゃんが言ったのが一週間ほど前。みんな持参したプレゼントを机の上に出した。ルールは混ぜて自分以外のプレゼントを取っていくだけ。もし最後の人が自分のものだった場合はやり直し。取る順番は特になし。一斉に取る。シンプルなルールだ。
言い出しっぺの星ちゃんがプレゼントを混ぜる。プレゼントの大きさや形は様々。
「いっせーので!っで行くよー」
混ぜ終わった星ちゃんが言う。
みんなは真剣な表情で頷く。
「いっせーのーで!」
バッと一斉に手を出す。同じ物を手にしたやつもいた。空と天神だ。俺は無事違う物を手に取ることができた。二人はじゃんけんすることになった。天神が負けた。さっきと同じパーを出していた。仕方なく残ったプレゼントを手に持つ天神。
「じゃあ、また一いっせーのーでっで開けるよ」
「いっせーのーで!」
俺がプレゼントを開けた瞬間、何かが飛び出してきた。同時に俺は飛び跳ねて膝をこたつの天板に思いっきりぶつけた。激痛だ。のたうち回っているとゲラゲラと大笑いする声が聞こえた。痛ってーと思いながらそいつの声の方に身体を起こした。天ノ川先輩だった。軽く殺意が込み上げた。まだ、天ノ川先輩は笑ってる。
言わずもがなこのプレゼントの送り主は天ノ川先輩である。絵にかいたようなびっくり箱と俺のリアクションだったと彼女は言う。まだ痛い。
みんなは各々のプレゼントを喜んでいた。痛い目にあったのは俺だけ。しかも嬉しくない。なんならもう役目終えて邪魔者。ゴミだな。
プレゼント交換の結果は、天ノ川先輩→俺、俺→星ちゃん、星ちゃん→天神、天神→空、空→天ノ川先輩となった。俺は無難なものを、空は女の子へのプレゼント前提で選んでいたようだ。俺に当たってたら爆笑してたんだよなきっと。ってか、確定ではずれが二つ入ってたのやばくない?ひどくない?俺の扱い。
プレゼント交換の後はトランプゲームをして一夜を明かした。
クリスマスなんとか間に合いました。
今年の更新はこれで終わりです。
ありがとうございました。
よいお年を。